振り込め詐欺によって金員を騙し取られたことによって受けた損失が雑損控除ができるか否かについて提起された審査請求について、国税不服審判所は、振込が請求人の意思に基づいてなされたことを理由に、所得税法72条第1項に規定する災害、盗難、横領による損失のいずれにも当たらないとして審査請求を棄却した事例がある(2011年5月23日裁決)。
災害は自然現象ではなく、必ず土台となる資本関係、経済関係が存在することは、3.11の原爆投下を見れば理解できるであろう。
盗難は、被害者と経済関係のない経済実体がその経済関係を土台として、被害者の預金残高に基づいて被害者の財物を略奪したことである。偶発ではない。
司法は、横領の概念の説明として
「金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情がない限り、その占有者と一致すべきであると解すべきであり、また、金銭を現実に支配して占有する者はいかなる理由によって取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かにかかわりなく、価値の帰属者すなわち金銭の所有者とみるべきである。請求人が振り込んだ合計820万円分の金銭は、費消されることを前提としたものであるから、当該金銭に対する所有権は、原則どおり、本件各振込を終えた時点で、当該金銭に対する占有と共にいわゆる振り込め詐欺の犯人側へ移転したと認められ、当該犯人は、そもそも、請求人(他人)の物の占有者ではない」とする。
実体のある金や銅と異なり、紙きれは実体がない。
しかし、実体のあるものであろうが、架空の存在であろうが、全ての物には価値は備わっていない。紙きれの存在に基づいて、資本関係、経済関係が形成されるのであるから、金銭は主人を持たない。
紙切れは所有権登記をすることによって実体あるものとして社会に認めさせることをしていない。
よって、金銭について所有権云々という問題を持ち出すことは現実の経済上の損失の事実関係とは全く関係のないことである。全ての経済取引は、価値のないものに実体のない価値を付与することによって行なわれる。全ての経済取引は詐欺である。
振り込め詐欺による損失も、経済関係のフィクションを土台に金銭の振込を余儀なくされ、フィクションされた経済関係は実体がなかった、そして振り込んだ金銭にオンライン上で価値属性が付与されたということである。
損失計上が妨げられる理由がどこに存するのか。所得税法72条1項は飽くまで例示にすぎないと解さなければならないであろう。意思は実体のない観念である。
姿形のないものをどうやって立証することができるというのか。
実体のない観念である意思の有無によって、雑損控除ができるできないが確定するという行政や司法があってはならないのである。
公務員や裁判官は、現実には国際金融資本が投融資する民間銀行の使用人である。国際金融資本によって、公務員や裁判官は、後付の方便を用意して唯心論を用いて人民を納得させる技術を叩き込まれる。税理士には、判決文を読んでいて、実体のない、宗教がかった文言があったら、それをスルーして欲しくないのだ。
振り込め詐欺による損失は財産の減少という経済損失には違いないのであるから、納税者は、更正の請求、質問検査を受けるという手続を踏むことなく、当初申告において納税者は計上することである。