所有する不動産の一部分を親族に無償貸付けをした場合には、その親族が居住する部分に対応する固定資産税や減価償却の金額は必要経費とはならない。
それでは、親族に有償貸付である低額貸付をした場合はどうか。
これについて、「固定資産税額にも満たない賃貸料で、通常であればそのような賃料での契約は到底有り得ない。これは、いとこが債務超過状態及びその親族関係からすればその生活扶助的な要因があったと推認され、たとえ賃料の受領があったとしても無償で使用させていたと同様とみることができる。よって対価を得ることを目的としない使用貸借に基づくものであり、不動産の貸付による所得とは認められず、本件物件の減価償却費及び固定資産税は不動産所得の必要経費に算入できない」とする裁決がある(平成21年4月21日裁決)。
親族であってもその者を別個独立した経済実体と解すれば、無償部分から収益が実現するのではなく、借りている側の労働が疎外されて、家賃の市場価額が月々の賃貸債務金額であるとして、貸している側に同額の収益が計上されることになるが、現行の税実務は、国際金融資本との資本関係を土台に、親族を一つの経済実体とみてその存続を義務付け、当該経済実体内部の取引として、貸付の目的ではなく、賃料の受け取りをしないことをせざるを得なかったことを捉え、貸し手が受け取っていない現金に価値属性を付与することなく、経費を否認するという方法を採用している。