中途解約をしないことを条件に不動産の一定期間賃料を無料にするフリーレント取引の税務上の取扱いについては、賃料総額をフリーレントの期間を含めた賃貸借期間で按分して益金算入する処理の他に、会計上、フリーレントの期間に対応する賃料相当額ついては収益計上しない処理も課税する側は容認するという。

これについて私見を述べさせてもらうと、先ず、建物が資本の増殖を産むのではない。建物の貸出と現金が交換されて価値属性が付与されて収益が確定するのではない。建物を貸している経済実体の現実の資本が、当該建物を借りている経済実体に、その労働者に建物を貸し付けて疎外労働をさせることによって資本増殖させて、資本増殖分から配当させているのである。家賃の支払は利潤の分配である。

賃借している経済実体に資本を貸し付けて疎外労働をさせている段階で、賃貸している側の収益が確定していると見ることができる。経済過程において時間という価値属性が付与されて月末の属性が付与された段階でそこまでの疎外労働を土台にした収益が賃貸をしている経済実体の側に計上される。

月々の債務の額は、疎外労働を土台とした地代家賃の総額を月数按分した額であって、「無償賃貸借から、低廉貸与の場合は無償貸借部分から収益が産まれ、そこから現金の贈与がされた」のではない。

フリーレント期間は家賃の支払いが免除された、低廉家賃による有償貸借の場合には値引きされたと解することは現実の経済関係から乖離しているものと思われるのである。市場価額が、労働の疎外を土台とした利潤の分配義務であったと解することでできる。

家賃の市場価額と現実に収受した現金に付与された価値の差額は、賃貸した経済実体の資本と賃借した経済実体の資本、労働力の間に資本関係があれば、現実に疎外労働を土台とした収益を得るのは賃貸した側の資本であるから、経済上は、寄附金ではなく配当ということに相当することになるものと思われるのである。

同族法人の役員が建物を賃借している場合には、役員であることをもって無償貸与を受けているのではなく、当該法人に投融資をしていることをもって無償貸与を受けているのであるから、役員報酬ではなく配当ということになると思われる。