Boss SchemeとはBond and Option Sales Strategyの略称である。租税負担の減少の過程は下記のとおりとなる。
①納税実体は、パートナーシップを設立する。
②上記パートナーシップとプライスウォーターハウス・クーパース系列の投資ファンド(以下PWcファンド)がタックスヘイブンに登録されたLLCであるSPV(Special purpose vehicle)を設立する(以下THLLC)。
③パートナーシップは、銀行から借入をしてTHLLCに投資してTHLLCの普通株を取得する。
④PWcファンドは、銀行から借入をしてTHLLCに投資してTHLLCの優先株を取得する。PwcファンドはTHLLCを清算させる権利を取得し、投資を回収できることとなり、配当後、パートナーシップが所有する普通株に0又は二足三文の評価をされた。THLLCは法人となる。
⑤THLLCは銀行借入を行う。
⑥THLLCは、パートナーシップからの投資、PWcファンドからの投資、銀行からの融資の合計額からPWcへの報酬を控除した残りを、銀行が発行したCD(譲渡ができる預金証書)に投資する。THLLCは、CDへの投資額は銀行に担保の名目を付される。
⑦THLLCは、銀行とスワップ取引を行う。CDの金利は固定金利から変動金利となる。
⑧THLLCは、銀行の担保とされたCDをパートナーシップに分配する。当該分配は配当原資を減らすこと、借入返済に劣後するから分配した資本は配当ではないとした。THLLCは米内国歳入法上のパートナーシップの手続を行って法人税課税を受けないこととなった。
⑨パートナーシップは、担保の属性が付されたCDと同額のCDを納税者に分配する。
⑩納税実体は、計上した損失をキャピタルロス(譲渡損失)とした。
裁判例は、租税目的による損金算入について、虚偽でないこと(bona fide)、且つ現実の経済上の実体に一致していることを条件に認めることとしている(ACM partnership v. Commissioners, Scully v. U.S, Shoenberg v. Commissioner)。
[解説]
担保名目で金融資本に資本を徴収されても、THLLCには貸し付けをして、貸付けを受けて労働を疎外する資本、担保名目を付されて借入をすることができる資本が存在しているのであるから、LLCの架空資本に付された価値属性は実体がなく、配当も行うことができる。
投資を土台とするリターンを得たのであるから納税実体が受けた資本は配当であり、最も資本を増殖させたのは納税実体に貸し付けることにより納税実体、パートナーシップ、THLLCを所有した国際金融資本である。
目的法人としていることから、THLLCは実体のないものを法律行為を媒介に実体あるものと社会に認めさせていると言えるのであって、当該LLCは法人であろう。
THLLC、パートナーシップに法人税が課され国際金融資本が負担することとなったたとしても資本への利子配当は税引前の利益から配当される現実があるから、利子配当所得に所得税が課されても二重課税とはならないであろう。
裁判例は、損金算入につい肯定、否定につき、租税目的の有無を前提に実体のない観念である目的と交渉して法の解釈、適用を行うこととしているが、損金算入できるか否かは、投資の源泉から、資本増殖、送金、送金への価値属性付与までの過程、資本関係の全ての事実関係の調査が確定が基礎となるのであって、目的は損金算入の肯定否定の基礎とすることはできないであろう。
参考文献:Lee Sheppard,Another corporate tax shelter,Another Tax Court decision,85 Tax notes 1229(1999)、IRS,Notice 99-59