[事実関係]

 管工事資材の製造及び暖房配管工事の請負を業とする同族法人であるX社の代表取締役である訴外Hは、昭和49年3月28日までその職にあり、病気により退任した。

X社は、同月29日の臨時株主総会で退職給与として1億2,000万円をHに支給する旨の決議をしてその全額を本件事業年度の損金の額に算入した。

税務署長は、X社がHに対して支給することとした退職給与の額1億2,000万円の内7,000万円を超える5,000万円は、旧法人税法36条及び旧法人税法施行令72条に規定する過大な役員退職給与に当たるとして、損金を否認し、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

税務署長は、Hに対する報酬が近年増額されず、類似法人における報酬の支給例と比較して低額であることから、平均功績倍率法によって得られた金額は類似法人における退職給与の額として低額になるので、平均功績倍率ではなく、X社にとって有利な1年当たり平均額法を採用し、さらに、その算式によって得られた金額に、Hの勤続年数が類似法人における役員の勤続年数よりも若干長いなどの功績を加味して、その約10%を加算し、右Hに対する相当な退職給与の額を7,000万円と認定した。

 裁判所は、

「1年当たり平均額法は、当該法人の比較の対象となるべき法人における退職した役員の勤続年数1年当りの平均退職給与の額に当該役員の勤続年数を乗じて相当な退職給与の額を算出する方法であるが、平均功績倍率法とともに、法36条及び令72条の趣旨に合致する合理的な算式であるというべきである。

X社は、1年当り平均額法によって相当な退職給与の額を算出するときは、全業種の法人における高額な退職給与の支給例を調査すべきであるのに、税務署長がそのような調査をしていないと主張する。
しかし、Hに対する相当な退職給与の額を算出するためには、全業種の法人について、なかんずく高額な退職給与の支給例を調査する必要はないというべきである」とした(札幌地判昭和58年5月27日)。

[解説]

 課税処分は、中央銀行を所有する金融機関の所有関係とその承継に基づく資本関係による回収義務がある国際金融資本との資本関係から行政機関が余儀なくされる比準法人の選定の過程において事実関係、問題提起の全体化が行われていないから、選定の基礎は実体がない。

如何なる基準、方法で抽出しても、類似法人を抽出する段階で、事実関係、問題提起の全体化は切り捨てられる。

1年当たり平均額法を使用した課税処分は、抽出した法人の資料を現象として捉え、法則化したもので、事実関係の全体化を放棄したものである。課税処分、判決は、入社から退職までの当該法人における労働過程に、付与された各事業年度について、労働過程の全部について、現実の労働について、疎外された労働に基づく賃金を全て支払ったかに基づいていない。