[事実関係]

 原告法人Xは、寝具、衣類等の販売を業とする株式会社であり、Xのした法人税確定申告につき、税務署長は、損金算入した会議費の内、婦人団体等の役員等を温泉地へ1泊旅行に招待した費用4,451万5,100円及び販売促進費の内婦人団体等の役員等に贈呈した肌掛ふとん等の費用1,708万5,912円等を交際費等に当たるとして、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行った。

 裁判所は、

「X社が本件1泊旅行に招待した婦人団体等の役員は、婦人団体がX社と取引を行う場合に、その会員に対する展示会への招待、販売の斡旋、月賦代金の集金等のX社の営業活動の一部を担当するとともに、自らも会員としてX社の商品を購買する得意先でもあるから、法63条5項のX社の『事業に関係のある者』と認められる。

なお、参加者のうち新規にX社との取引を開始しようとする者も事業に関係のある者に該当することはいうまでもない。

本件1泊旅行において、X社の業務のために行われたとみうるものは、わずかに日程第1日のM工場見学(1時間半程度)と第2日目午前中に行われたX社取扱商品の販売・集金方法、商品の説明(1時間半程度)とがあるにすぎないし、右見学についても、本件旅行参加者が全員参加していたのではないこと、X社が本件旅行参加社(全て女性)の関心を忖度して日程を入れたものであることと等の前記認定事実に照らすと、実質的なX社の業務研修ということはできない。

また、第2日目のX社役員の参加者に対する説明も、その所要時間、内容(スライド等を利用するだけの簡単なもの)等からみて、別段250ないし450名を温泉地の旅館に集めて行わねばならないならぬほどのものではなく、また、参加者の中には数回参加し、既にX社との取引関係に入っている者もおり、このような者には右説明する必要のないこと等の事実に照らすと、右の程度では、本件1泊旅行がX社主張のような業務研修のための旅行であったとは到底認められず、多額の費用を本件1泊旅行に支出した主たる目的は、婦人団体等の役員を接待して、X社との親睦を深め、その歓心を買うことによって取引関係の円滑を図ることにあり、延いては旅行に参加した役員を通じてその婦人団体等の構成員をX社の取引先に獲得し、販路の拡大を図ることにあったものと認めるのが相当である。

したがって、本件1泊旅行は、交際費等に該当するものと解すべきである」とした(東京地判昭和53年1月26日)。

[解説]

 当該経済実体において、資本は旅行や物品を生産手段にして所有法人及び他の経済実体の労働者に貸与し、労働を疎外し、疎外した労働を旅行や物品に転嫁するという過程がある。旅行を生産手段にして貸与して労働を疎外し疎外した労働を転嫁せざるを得ないものであれば交際費ではないとの問題提起が成立しうる。

物品や旅行の供与を受けた経済実体は、受けた財、役務を生産手段にして貸与し労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁できないのであれば、物品及び旅行と引き換えに支払った現金商品は交際費ということになるであろう。

現実には労働者は生活を土台にした経済に基づいて旅行に参加するしないを決めることはできないが、紙幣発行権、準備金制度を取得する過程に関する実体関係の存在、資本関係から、当該経済実体は、旅行は生産関係上、労働者全員が参加せざるを得なかったものではないとして交際費等の名目で、現金留保を余儀なくされた。忖度、目的、意図は実体のない観念であり、事実関係の基礎とはならない。

性別は資本が規定し、かくあるべきという、かくあるであろうという属性は備わっていない。取引を開始しようとしているかどうかは実体のない観念である。国際金融資本との資本関係から、財、労役を引き渡して現金商品を取得、留保せざるを得ない経済実体が事業関係者に含まれることになる。