[事実関係]
清涼飲料水の製造業者であるパナマ法人たる原告バヤリースオレンジジャパンエスエイの法人税確定申告につき、税務署長は、原告が計上した営業補償金につき、寄附金と認定し更正処分及び過少申告加算税の賦課決定を行った。
裁判所は、
「解除の覚書における原告のウヰルキンスン社に対する従来の製造委託関係の解消に伴う補償が8億円であるところ、補償金が右のように巨額になったのは、これを委託関係の終了によるウヰルキンスン社の事業の縮小ないし閉鎖に伴う従業員の退職金に当てることを予定したためであることが認められ、原告とウヰルキンスン社の密接な関係、ウヰルキンスン社に対する製造の委託は、専ら朝日麦酒と原告の利益を考慮したものであって、ウヰルキンスン社の利益を保証する趣旨のものではなく、いわば解除の覚書に基づく事後処理として予定されていたにすぎないものと認めるのが相当である。
本件支払後である昭和56年12月8日に開催された原告の取締役会においては、原告が3社の覚書に基づいて、朝日麦酒から受領する営業補償金2億6,600万円をウヰルキンスン社のバヤリース製品の生産削減に対する補償として同社に支払う権限をプライスに授与する旨の決議がされたことが認められる。
しかしながら、朝日麦酒が、原告及びウヰルキンスン社との間で3社の覚書を取り交わして商標権等譲渡契約に基づく原告法人との間のバヤリース製品の製造委託関係を打ち切り、新たにウヰルキンスン社に製造を委託することとしたのは、現実にバヤリース製品の製造を行うことにより、支払委託料コストの引下げ等の目的に出たものであって、そのため、契約で定められた製造受託期間が短縮される結果となる原告に対しては、短縮期間の営業補償金として朝日麦酒が2億6,600億円を支払うこととされ、その旨が3社の覚書に明記されたが、
直接の製造受託者となるウヰルキンスン社に対する関係ついては、3者の覚書において、朝日麦酒は、商標権等譲渡契約における原告法人に対する製造委託期間と同じく昭和58年3月31日までを限度としてウヰルキンスン社にバヤリース製品の製造を委託することとされている反面、ウヰルキンスン社に対する製造委託の基本事項に締結された右二者間の基本契約においては、同契約の有効期間を昭和58年3月31日までとした上で、朝日麦酒の発注を東京工場については、昭和56年12月製造分まで、宝塚工場については昭和57年12月製造分までとしているが、
これは、朝日麦酒のバヤリース製品の製造設備の状況、ウヰルキンスン社の営業規模の縮小傾向等を踏まえて、朝日麦酒とウヰルキンスンとが協議した結果、現実に即した製造委託期間として定められたものであることが認められ、右各事実に徴すれば、少なくとも原告法人が関与して作成された3社の覚書の段階においては、ウヰルキンスン社の立場は、原告法人を介しての製造受託関係にあったものが、朝日麦酒からの直接受託関係に変更されたのみであって、その受託期間については変更がないものというべきであり、原告法人がウヰルキンスン社に対して製造委託期間の短縮に伴う営業補償をすべき立場にはないものと言わざるを得ない。
原告がウヰルキンスン社に対して法律上本件支払をしなければならない義務はないというべきところ、本件支払に係る金員は将来返還が予定されたものでないことが認められ、本件支払は、原告法人がウヰルキンスン社との従来からの密接な関係を考慮してウヰルキンスン社の従業員の退職金の原資とするためにウヰルキンスン社に対して贈与したものと認めることができる。したがって、本件支払は法人税法上寄附金に該当するというべき」であるとした(東京地判平成元年7月26日)。
[解説]
退職金に充てる予定や返還の予定や委託の趣旨やコスト引下げの目的は実体のない観念である。現実の経済関係の調査、全体化が事実確定の土台となる。製造設備の状況は、生産手段の貸与と労働の疎外の現実である。
営業規模の縮小は、傾向ではなく、資本関係、現金留保義務から、生産手段の貸与、労働の疎外の現実が変更を余儀なくされたのである。傾向と捉え、現象面だけを見ると、土台となる現実の経済関係を全体化できない。
朝日麦酒の資本家は、住友グループを媒介に、国際金融資本ロスチャイルドとの資本関係から課せられた現金留保義務、利子配当の支払義務から、ロスチャイルド所有のバヤリースが所有する架空資本たる商標権に現金を投下して、現実にバヤリースとウヰルキンスンを所有することを余儀なくされ、、ウヰルキンスンの退職金名目の現金を贈与して、所有法人の産業を生存させて、生産手段を貸与して労働を疎外して、疎外した労働を資本に転嫁せざるを得ない。利子配当の支払は労働力商品に転嫁される。
生産関係からみれば、退職給与は、資本関係から経済実体あるものと社会に認めさせることを余儀なくされたウィルキンスンの損金となり、退職金の支払義務は、ウヰルキンスンを所有する朝日麦酒を所有する国際金融資本にある。
紙幣発行権を有する国際金融資本から投融資を受けることができる経済関係にあることから、朝日麦酒が贈与した現金は損金とはならない。現バヤリースにはウヰルキンスンの退職金の支払義務はない。
金は主人を持たず、退職金の原資のためという目的は実体がないから、国際金融資本は、退職金を支払うことなく、他に投融資することができるから朝日やバヤリースの損金とはならない。バヤリースジャパンが資本関係から支出を余儀なくさせられた当該事例の現金は、税引前の現金留保から支払われ、労働力商品と現金商品の交換、価値属性の付与、実体化は税引後に行われるから、バヤリースジャパンが支出させられた現金は、国際金融資本ロスチャイルドへの配当であり、配当に所得課税を行っても二重課税とはならない。