[事実関係]

 特定非営利活動である原告Xは,000円、市からの受託事業と介護保険事業に加えて、「ふれあいサービス事業」を行っていた。当該事業は、入会金1,000円、年会費3,000円の支払をした友愛会員が、家事、介護、通院外出介助等のサービスを利用できるものであった。

Xの運営細則には、本件事業によって友愛会員である利用者に提供される援助サービスの種類が例示列挙されていた。その中には、炊事、洗濯などの家事、介助、介護などの一定の種類の仕事の完成をしなければならないものだけではなく、話相手、相談、助言など一定の仕事の完成をしないものの、相手方の有形、無形の行為を必要とする事務処理が含まれていた。

また、これに対する対価については、運営細則において、援助サービスを利用する会員は、Xが発行する1点当たり100円相当のふれ合い切符を予め購入し、援助サービスの提供を受けた場合には、原則として、1時間当たり8点(800円相当。但し、車椅子による通院外出介助については、外出先が市内の場合には16点)、超過時間については30分当たり4点(400円相当)のふれあい切符を援助サービスに提供した会員に交付し、更に、通院外出介助の場合を除き、協力会員の交通費として、2点(200円)相当のふれあい切符を交付することと定められていた。

 裁判所は、

「本件サービス提供の主体について、運営細目の定めどおりに、サービス利用申込は、会員から原告の事務局に対して行われ、サービス提供に協力する会員を選定し、日時を調整し、訪問予定の作成発行をし、サービス提供、会員金銭的負担決済も原告が会員に販売するふれあい切符を通じて行われる等、本件事業におけるサービス提供に伴う手続は全て、Xが主体となって行われることが認められる。

本件事業は、Xが会員に対し、サービス利用券であるふれあい切符を販売することによって、Xの運営細則で定めるサービスを受ける権利を付与し、その依頼により、サービス提供に協力する会員を履行補助者として、サービスの提供を行い、その対価として、サービス提供の時間に応じたふれあい切符の点数の支払を受け、1時間当たり1点(200円相当)の点数を利益として取得するものであると認められるから、一定の役務を提供して対価の支払を受けるものであって、法人税法施行令5条1項10号にいう請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)に該当するというべきである。」とした(千葉地判平成16年4月2日)。

 控訴審は、

「この運営細則に従って実際の運用がなされていることが認められるから、本件事業を法人税法施行令5条1項10号にいう受ける請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)に該当するとした原審の判断は、原判決摘示の証拠に照らし是認することができる。確かに、証拠によれば、Xの主張するとおり、援助サービスに当たり、その提供に協力する会員は、ボランティア活動として、利用する会員に対し、単に、家事等の外形的なサービスを行う目的だけでなく、人間愛に基づく精神的な連帯感や安心感を求めていることがうかがわれ、そのような意図の下でなされるXの会員の援助サービスは極めて貴重なものであると考えられる。

しかしながら、この精神的交流は援助サービスのいわば究極の目的とされているものと理解すべきであって、外形的形態である家事等のサービスを行わなくてもよいとする趣旨ではない。要するに会員の希望する家事等のサービスが提供されることを通しての最終目的を達成し、サービス利用者側及びサービス提供側の会員相互間に精神的交流がなされることを意図しているとみるべきである。

そうすると、サービスを利用する会員とこれの提供に協力する会員との間でなされる援助サービスを通じて、会員同士の精神的交流が生み出されるこよを考慮しても、家事等の外形的サービスの重要性を無視することはできず、会員の主観的意図はともかく、客観的事業形態を見ると、そのサービスを法人税施行令5条1項10号所定の事務処理の委託を受ける業を含む請負業とするのが相当である。

原判決が、説示するとおり、援助サービスを利用する会員の負担額が謝礼ないし寄付というのであれば、最終的には、その利用会員が謝礼ないし寄付を行うかどうか、行うとすればどのような内容にするかを自己の自由意思で決定すべきであるところ、Xの運営規則では予め負担額が予定され、これをふれあい切符で決済する旨定められており、援助サービスの利用会員の自由意思に委ねられているとは解せられない。

Xの運営規則によれば、援助サービスの利用の申出方法、その手順等、その提供を会員がする場合の手続等援助サービスの内容、援助サービスを利用した場合の負担額、決済方法、援助サービスを提供した協力会員に対する支払額、これに代わる時間預託制度、援助援助サービスの提供に対する苦情処理等について、Xが主体となっていることが認められるから、本件事業の援助サービス提供の主体をXとし、援助サービスの提供に協力する会員をXの履行補助者として利用会員に援助サービスを提供しているとした原判決の判断は、原判決摘示の証拠に照らし是認することができる。

確かに、サービス提供に協力する会員は、Xとの間の雇用契約等の法律関係に基づく支持を受けるものではなく、あくまで自主的判断でXからの要請に応じているというべきであり、会員の任意の協力なしでは本件事業が成り立たないことは事実である。

しかし、原判決が説示するとおり、そのような会員の協力の取り付け、援助サービスの需給関係を調整管理して運営する事務をXが行うことにより本件事業が遂行されていること、本件事業における援助サービス運営方法等に加えて、援助サービスの負担額がXの運営細則で定められ、援助サービスの利用会員とこれの提供した会員との間で、利用会員の負担額を合意で変更することは予定されていないこと、援助サービスの提供に対する苦情があるときには、利用会員及び協力会員が直接苦情を述べないでXに連絡することになっている。

援助サービスの主体はこれを提供する協力会員である旨のXの主張は採用できない」とした(東京高判平成16年11月17日)。

[解説]

 司法は、実体のない観念である原告法人の活動の目的、意図、趣旨と交渉して、現実の現金留保の過程に基づいて判示を行っていない。外観や現象面から請負か否かが決定されるのではなく、支払いの土台となった経済関係、経済過程から規定しないと現実の経済関係、経済過程から乖離する。

原告法人の資本の側において使用人の労働を疎外済みであり、会員は、経済関係に基づいて現金商品との交換を余儀なくされており、用具を貸与され、生産関係から、疎外された労働をしており、会員に自由意思はない。 資本との関係から、原告にも自由意思はない。需要は実体のない観念であって、現実には、会員は、資本との関係からサービスの購入を余儀なくされている。Xは、請負により現金を留保する過程があることから法人税の課税が行われる。