[事実関係]

 不動産賃貸業及び損害保険代理業を営む同族法人が、平成16年12月1日から17年11月30日の事業年度(以下、本件事業年度という)の法人税につき、本件事業年度中に原告法人を死亡退職した原告法人の元代表取締役に支給した退職給与6,032万円を損金の額に算入して確定申告をしたところ、飯田税務署長は、本件退職給与の内、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

 判決は、

「原告の所在地は、長野県であるところ、関東信越国税局管内の各県は、いずれも関東又は甲信越地域に属しており、一般にこれらが一つの経済単位として経済事情その他において一定の共通性を有するものと認められていることに照らせば、被告が本件類似法人の抽出対象法人を関東信越国税局管内としたことにも合理性が認められるというべきである。

1人当たりの県民所得は、法人所得のみならず、個人所得をも併せた県民所得を人口で除して平均化したものであるから、1人当たりの県民所得において各県の間に明らかな類似性が見られないとしても、法人がその退職役員に支給する役員退職給与の適正額を算出するに当たり、一定数のサンプルを抽出する対象地域として相互に近隣地域にある関東信越国税局管内の地域を対象とすることは不合理であるとはいえない。

原告の本件売上事業年度の売上金額は5,142万2,113円であり、そのうし地代家賃収入が4,754万5,474円であり、損保手数料収入が387万6,639円であることが認められるところ、このように原告の売上金額の92.4%を地代家賃収入が占めていることに照らせば、原告の主たる事業は、不動産賃貸業であるというべきである。

したがって、被告が「日本標準産業分類・小分類・691不動産賃貸業(貸家業、貸間業を除く。)及び692貸家業、貸間業」を基幹の事業としていることを基準としたことは合理的であるというべきである。

原告は、本件役員退職給与適正額の算定方法について、納税者の利益を考慮すべきであるとすることや平均額を超えた場合を直ちにこれを「不相当に高額」であるとすることは明らかに不合理であることからすれば、最高功績倍率こそが有力な参考基準となるというべきであり、本件TKCデータから、

①「日本産業分類・大分類・K-不動産業、物品賃貸業」及び「同・J-金融業、保険業」を基幹の事業としていること、

②退職金支給決議が平成17年12月31日以前であること、

③退職理由が死亡である代表取締役・会長に対して退職給与の支給決議があること、

④退職給与の支払があった調査対象事業年度の売上金が2,000万円以上1億300万円以下であること

を基準として抽出された本件TKCデータ同業類似法人の最高功績倍率である3.0倍を基礎である旨主張する。

しかし、平均功績倍率法が法36条及び施行令72条の趣旨に最も合致する合理的な方法であるというべき根拠の一つは、抽出された同業類似法人の功績倍率の平均値である平均功績倍率を用いることにより、同業類似法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象され、より平準化された数値が得られることにあるところ、仮に、功績倍率の最高値である最高功績倍率を用いることとした場合には、その抽出された同業類似法人の中に不相当に過大な退職給与を支給した法人があった場合に明らかに不合理な結論を招くこととなる。

また、本件TKCデータ同業類似法人についてみても、そもそも本件TKCデータは、税理士及び公認会計士からなる任意団体であるTKC全国会が各会員に実施したアンケートの回答結果から構成されており、その対象法人はTKC全国会の会員が関与しているものに限られている上、原告が用いた抽出基準は、その抽出対象地域について何ら限定することなく全国としており、また、基幹の事業についても、「日本標準産業分類・大分類・K-不動産業、物品賃貸業」及び「同・J-金融業、保険業」とするものであって、そもそも原告の基幹事業であるとは認められない「金融業、保険業」が基幹の事業であることを条件としている上、中分類ないし小分類の存在を考慮しておらず、被告が用いた抽出基準に比べ、その対象地域及び業種の類似性の点において劣るものと言わざるを得ない。

以上によれば、本件役員退職給与適正額の算定に当たっては、本件TKCデータ同業者類似法人の最高功績倍率である3.0倍を基礎とすべきであるとの原告の主張は採用できない」とした(東京地判平成25年3月22日、TAINZ Z888-1778)。

[解説]

 税務署は、オフショアの経済実体の決算資料を有していないが、税務署を使用する国際金融資本は、申告書の提出、調査を通じて全ての法人の、また、更に資本関係を土台にオフショアの経済実体をも所有する。原告はTKCのデータを使用して税務署長に抗弁を行ったが、TKCは、その資本を用いて、国際金融資本に投融資された全法人、経済実体を所有するだけの資本がなく、TKCのデータは全ての法人、経済実体を収集することができず、収集の過程で得られなかった事実関係を切り捨てることを余儀なくされ、よって、全ての事実関係を摘出することはできず、問題提起の全体化ができない。

複数の経済実体、全ての経済実体の資料を組み合わせても完全な資料とはならない。TKCの創始者である飯塚毅は、国際金融資本との資本関係、生産関係に基づき、反共を大義に掲げて民主商工会を弾圧することに応じることを余儀なくされ、また、労働者に資本の現金留保に応じて賞与の受給を待たせ、受給した労働者から5分から7分の利率で借入れたことにして現実には現金の出納は行わず、労働者との間に経済関係を構築することにより、労働者に退職をさせずに労働力の提供の継続に応じさせ、未払賞与計上により留保した金銭を投融資に回し、資本経済を促進させる土台となり、民間金融機関への投融資により紙幣発行権、準備金制度を所有できるという実体関係に基づき、紙幣発行権、準備金制度を所有する国際金融資本に関与先法人の資本の現金留保は回収された。

加入した経済実体は、国際金融資本との経済関係に基づいて加入を余儀なくされたのであり、現実には、加入するしないに意思はない。税務行政機関もTKCも国際金融資本の使用人であり、税務行政機関とTKCは、経済関係上敵対関係にはない。

TKCのデータを使用したことが納税者の主張が資本との生産関係に基づく課税側に受け入れられなかったということではないであろう。

 本件における課税側の課税プロセスにおける比準法人抽出について見ると、地域に区分した上でそれを行うが、土地には価値属性が備わっていないから、土地を所有又は占有しているだけでは現金を産まない。

比較法人を管轄地域毎に類型化することは、更正処分を行う過程とはなり得ないであろう。全ての経済実体は、国際金融資本との資本関係により、既存の生産過程が異なるから、全ての事実、事実関係において全く同じ法人は存在しない。

課税側、納税者側各々が得た全資料から、資料を選択し類型化することや細かな差異を捨て去ることは問題提起を切り捨てることである。財務諸表は現象面しか表していない。

財務諸表上の売上金額は、既に労働を疎外済の国際金融資本から投融資を受け、担保名目で資本、生産手段を国際金融資本に現実に所有され処分され、現金を源泉に、現金を貸与し、また、更に生産手段を購入し、それを貸与し、労働を疎外して、疎外した労働を資本に転嫁するという過程がわからない。

課税側が、他の経済実体における全ての事実関係を当該法人の現実の事実関係の全てと突合し、全てにおいて同じではないから、経済実体のない処分であることから、課税上問題があるとされてきたのであって、データの量の差による公正、公平という観念の問題ではない。

課税側が所有する資料は帳簿を否定し事実確定する土台とはなり得ないし、TKCのデータも納税者が過大でないとする退職金の算定方法の土台とはなり得ない。他の経済実体との比較の土台として、当該法人の、既に労働の疎外済の現金の投下、生産手段の購入の有る無し、労働の疎外、疎外された労働の資本への転嫁の過程を全て把握し確定しなければ、現実の労働に基づく給与、退職金の額は確定できない。

現実の労働に基づいて、疎外された労働はいくらかを把握して、帳簿記載事実と突合する作業をせずに、現実の経済過程を疎外して、他の法人のデータの全てにつき、当該法人のデータと突合しているから、国際金融資本の所有関係にのみ基づいていて、紙幣発行権、準備金制度を所有しない経済実体の現実の経済過程から乖離した処分が行われるのである。

法は国際資本の民間金融資本の架空資本の所有を通じた紙幣発行権、準備金制度の所有を規定したことによる実体関係に基づいて創設されるから、法の趣旨と交渉して事実確定を行うと、紙幣発行権、準備金制度を所有しない経済実体の経済過程は疎外され、現実の経済過程から乖離した課税が行われる。

個々の法人の現実の経済過程に鑑みれば、財務数値が類似するとして他の法人、経済実体と比較して過大であるとして過大役員退職金の規定を適用できる範囲には制限があると解される。

現実の労働について、資本は、生産関係上、労働者に債務を課して債務と相殺することはできず、給与を全額支払わなければならない。

税務側が規定した金額を超える部分の金額は寄附金とはなりえない。現金留保は、疎外された労働が蓄積される過程によって産み出されたものである。疎外された労働の内、資本を持たない使用人の労働が再疎外されて、資本を有する使用人に支払われ、支払われた金額に労働の実体がない部分があれば、その金額は利益配当ということになる。

担保の名目で資本の所得税法上の経済実体の資産を現金商品と交換することは、資本の側に労働の実体、生産過程を伴うものではないが、法人の資本の所得税法上の資産は資本を持たない使用人の疎外された労働に基づくものであるとすれば、資本を持たない使用人の退職金の加算の土台となる。資本を有する使用人の現実の労働のトータルに加算される土台は現実に生産関係に基づく労働があった部分のみということになる。