[事実関係]

 製造業を営む同族法人が、売掛債権の回収ができなくなったとして損金の額に算入した貸倒損失について、原処分庁は、当該売掛債権の全額回収ができないことが明らかになったのは当該事業年度前の事業年度であるから、当該事業年度の損金の額に算入できないとして更正処分を行った。

 審判所は、

「法人税法22条3項3号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものを規定し、また、同条4項は、同条3項3号に掲げる金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものと規定している。

また、法人の有する金銭債権について貸倒れが発生した場合には、その貸倒れによる損失はその法人の損金の額に算入されることとなるが、これは、その貸倒れによって金銭債権の資産価値が消滅すること、つまりは貸倒れによる金銭債権の滅失損を意味する。

法人が所有する金銭債権が貸倒れとなったか否かは、第一次的には、その金銭債権全体が滅失したか否かによって判定され、その債権が滅失している場合には、法人がこれを貸倒れとして損金経理をしているか否かにかかわらず、税務上はその債権が滅失した時点において損金の額に算入することとなる。

法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続はなく、裁判所が破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、当然、破産法人に分配可能な財産はばいのであり、当該決定等により法人が破産法人に対して有する金銭債権もその全額が滅失したとするのが相当であると解され、この時点が破産債権者にとっての貸倒れの時点と考えられる。

破産の手続の終結前であっても破産管財人から配当金額が零円であることの証明がある場合や、その証明が受けられない場合であっても債務者の資産の処分が終了し、今後の回収が見込まれないまま破産終結までに相当な期間がかるときは、破産終結前であっても配当がないことが明らかな場合は、法人税基本通達9-6-2を適用し、貸倒損失として損金経理を行い、損金の額に算入することも認められる。

納税者は、債務者に係る破産手続に関して、破産法の破産債権の届出の規定に基づき、本件売掛債権を破産債権届出書に記載し地方裁判所に届出をし、また、破産法の最後配当の規定に基づき平成11年2月16日に最後配当を受領している。

そして、破産法の破産管財人の任務終了の場合の報告義務等の規定する本件破産事件の債権者集会が地方裁判所において開催され、破産法の破産手続終結の決定に基づき、本件破産事件が平成11年6月○日に終結したとして同年○月○日付の官報に公告されており、これら手続はすべて破産法に基づき適法に行われている。

法人の破産手続においては、自然人の破産手続とは異なり、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続はないが、裁判所が破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することにより、法人が破産法人に対して有する金銭債権も滅失することとなる。

したがって、債務者の破産手続終結の決定がされた時点において貸倒損失が発生したとするのが相当である。納税者は、債務者が破産申立てを行った当時は納税者の経営状態から本件売掛債権の回収を放棄することはできず、最後配当を受領した以後も本件売掛債権の回収を図ろうとし、平成18年9月に至って、債務者の代表取締役であったGが所在不明で本件売掛債権の回収は困難であると判断し、平成18年9月15日に取締役会を開催し、本件売掛債権は全額回収不能であると認識したことから、同日をもって本件売掛債権の全額が回収できないことが明らかになったと認めるのが相当である旨主張する。

しかしながら、債権者集会が開催され法人の破産手続が終結した日(平成11年6月○日)以後、何らGに対して法的な弁済義務を負っていたとは認められず、また、本件売掛債権は、当該破産手続終結の決定があった日には滅失したと認められるから、仮に納税者が本件破産事件の終結以後も債権者の破産について疑念を持ち、G個人から同債権を回収しようとする意思が存在していたとしても、個人保証等により法的にG個人が弁済義務を負わない以上、当該売掛債権は、債務者が消滅した時点で滅失するのであるから、この点に関する納税者の主張には理由がない」とした(平成20年6月26日裁決)。

[解説]

 経済上、債権が滅失したことは、法律上の決定によって社会に認めさせることに成功する。疑念や債権回収ができないことが明らかか否かは実体のない観念である。今後の回復が見込まれるか否かも実体のない観念である。

事実確定の土台とはならない。法人税法上の法人でなくとも、経済実体であって、経済上義務が課されている。返済するいないに意思はないから返済は責任ではなく義務である。経済実体は権利を備え持っておらず、意思を持っていない。現金留保によって権利を取得する。

資本関係、生産関係から、債権者、管財人に労働をせざるを得なくさせており、任務ではない。債務者たる経済実体の資本家は、金融資本への返済に関する支払を余儀なくされ、金融資本に担保を法律上も所有され、それ以外の債権を有する経済実体への配当がないことが確定した段階で、債権者たる経済実体が貸倒損失を計上することが、国際金融資本と行政機関の生産関係上、規定されている。

現金商品と交換できなかった損失は現実には労働力商品に転嫁される。現金の投融資が受けられる関係にあるかによって現金が回収できるか否かが異なる。

国際金融資本との資本関係から課された現金留保義務、回収義務から、債権回収をやめるか否かの意思を紙幣発行権を有しない法人の資本家は有せず、回収を継続するしないを規定することができない。

回収の努力は問題とされない。債権者たる経済実体は、債務者たる経済実体が資産を生産手段にして労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁し、現金商品と交換できる限りは、国際金融資本との資本関係から、回収せざるを得ない。

国際位金融資本は紙幣発行権を有するから、債務者たる経済実体が経済上、経済を土台とする法律上滅失しても現金不足になることはないから、債務者たる経済実体の現金留保に関係なく投融資を行いリターンを得る。

国際金融資本は、生産手段を滅失し現金商品が1円もなくなった経済実体は、労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁することができず、国際金融資本はリターンを得ることができず、生産手段、現金を滅失した経済実体は紙幣発行権を取得することができないから、買収させて存続させることはしない。