[事実関係]

 税務署長は、法人が福利厚生費に計上した海外旅行の費用を従業員賞与、役員分は役員賞与に該当するとして損金算入を否定した。

 裁判所は、

「証拠(乙1)によれば、平成11年7月にB研究所が会員企業355社にアンケートをしたところ、

海外社員旅行をしたことのある企業は32.0%であり、実施頻度は5年に1回が30.4%、毎年が26.1%、隔年が23.9%であったこと、

1人当たりの旅行費用は、平均で112,421円(うち会社負担分の平均額は60,089円)であり、

費用の分布は、「5万円以上10万円未満」、「10万円超15万円未満」がそれぞれ31.6%で、「15%以上」も26.4%あること、

海外旅行における会社負担額は、それが10万円を超える企業もあるが、それらの企業の殆どは海外社員旅行の実施頻度が2年ないし5年に一度であり、これらの企業において、別に行われる国内社員旅行を含めても、従業員1人につき1年当たり10万円を超える社員旅行を行っている企業は見当たらないこと、

なお毎年海外旅行を実施している企業においては、会社負担額が1人当たり10万円を超えるものはないこと、

以上の調査結果が得られたことが認められる。

このような海外社員旅行の実情と対比して検討してみると、原告においては、毎年海外旅行が実施され、しかも、従業員1人当たりの会社負担額が、平成8年度においては204,919円(最低173,265円~最高391,665円)、平成9年度においては199,501円(最低154,099円~最高315,499円)、平成10年度においては165,066円(最低136,184円~最高439,944円というものであり、

また、前記のとおり、本件各旅行においては、従業員等は原告の費用負担で催されるオプショナルツアーに各自の希望に従って、自由に参加、不参加を決めており、これらの事情に照らせば、本件各旅行は、企業において社会通念上一般的に行われていると認められる範囲内の福利厚生行事とは認め難いものといわなけらばならない」とした(岐阜地判平成14年4月11日)。

[解説]

 統計を事実確定の土台とすることは現象面から事実確定を行っていて事実確定の全体化を行っていない。事実確定は実体のない観念である社会通念から規定されるのではない。

法人の資本家は、旅行に現金を投下して、それを生産手段にして貸与し、労働を疎外して、疎外した労働を資本に転嫁して現金留保を確定させる。

旅行が生産関係上の義務とされ、全員参加が義務づけられている場合、会社名義で支払った旅費の支払は労働力商品に転嫁されている。

希望は実体のない観念である。生産手段を有しない労働力商品に生活を土台とした現金留保義務から法人の資本家が投下した現金を使用することや、自由意思はない。

既存の紙幣発行権取得過程の実体関係から、国際金融資本は、所有法人の資本家の旅行への現金の投下が大きい程、利子配当の受取額は減少するから、租税名目により利子配当の減少分を徴収するのである。役員は法人資本家との間に生産関係が存する。資本関係に基づいて法人に留保した現金を使用したのであるから配当である。