神戸地裁平成4年11月25日判決

事実関係

原告が法人税の確定申告を行ったところ、税務署長は法人が福利厚生費に計上した飲食代がいずれも、一 部の従業員を対象として、慰労のために社外の居酒屋、中華料理店等に支払った酒 食の提供費用であることを含め、交際費等に該当する金額が108万4631円あるとして更正処分を行った。

原告は、被告のした更正処分中の交際費不算入額を増加した部分には旅行費用等として損金に算入されるべきものが含まれており、その限度で被告の更正処分は違法であること、上記酒食の提供を交際費等としたことは違法であることを主張して、その一部の取消しを求めた。

判示

「冗費濫費のおそれがあるのは、法人が取引先等のために支出した場合だけでなく、法人がその役員や従業員のために支出した場合も同様であり、また、租税特別措置法61条の4第3項は、交際費等の範囲から専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用その他政令で定める費用を除いており、従業員に対するこれらの支出が本来的には交際費等に当たるべきものであることを前提としていると解することができるから、同項の「得意先、仕入先その他事業に関係のある者」とは、得意先、仕入先だけでなく、当該費用を支出した法人の役員及び従業員も含まれると解するのが相当である。

福利厚生費は、当該企業に所属する従業員の当動力の確保とその向上を図るために支出されるものである。

しかし、このような趣旨のものであっても、それが特定の者に対してだけ支出されたり、従業員各人によってその支出の内容が異なり、仮にある従業員に対する支出が社会通念上、福利厚生費として多額なものである場合には、右超過部分は、実質的には従業員に対する給与となるものである。この点において、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会」等の費用は、通常、従業員全員が、各人労働の質、量、能率等にかかわらず、企業に所属していれば誰でも同様の給付を受けることができるという原則で運営されるものであるから、その額がそれらの行事に通常要する費用を超えない限り、冗費濫費の抑制という法の趣旨に反しないことができるから、損金に算入することを認めないという特別の扱いをする必要がなく、旅行費用等を交際費等の範囲から除外したものと解することができる。

本件支出した飲食費は、従業員の慰安のために支出した費用であるから、租税特別措置法61条の4第3項が交際費等から除外している旅費費用に当たらない限り、交際費等に当たるということができる。この旅行費用等とは、法人が従業員の労働力の確保とその向上を図るために支出するもので法人がそれを支出するのが相当であるというだけでなく、従業員全員が参加の対象として予定されたものであることを要すると解するのが相当であるところ、本件支出した飲食費はこれに該当せず、交際費等に該当する」とした(神戸地判平成4年11月25日)。

一部の従業員に提供した飲食物の代金は、交際費等に該当するのか

法人の構成員が支出した金銭が、交際費等に該当するのか、それとも、その他費用に該当するのかについては、いかにして確定しなければならないだろうか。

学説・裁判例は、①支出の相手方が事業関係者か、②支出の目的、③法人がした使用人にした行為が、接待、供応、贈答等に該当するかによって、交際費等に該当するか否かを判定するとする(東京高判平成15年9月9日)。

支出の相手方については、現実に労働をしていない資本が含まれていれば、使用人分をも含めた全額が、フィクションした資本関係を源泉にした、金融資本による利潤の処分ということになるであろう。

ここで挙げた判決文にいう「おそれ」は実体がない観念であるから事実確定の土台とはならない。

支出した金銭に通常という属性は備わっていない。

支出の目的、行事の目的は実体のない観念であるから、事実確定の土台とはならない。

交際費という属性は備わっていない。労働には、質という属性は備わっていない。

支出については、支出の基礎をなった経済関係、外注の労働者を使用して飲食物を提供したことにより、利潤を産み出したか否かというプロセスから、評価しなければならない。

法人の資本が現金商品と交換して飲食店から購入した食事を生産手段にして貸与し、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁して、現金留保の蓄積が確定する。当該飲食が、労働力を再生産させるという生産関係上の義務であれば、それに要した費用は福利厚生費となる。

金融資本によって貸付けをフィクションされた法人の労働者の代表が、残業した社員に、労働力の再生産という生産関係上の義務から、飲食店の社員に作らせた飲食物を提供したのが、全社員でなかったとしても、社員は、全て自由意思はないから、福利厚生費と言えなくもない。

紙幣発行権取得に関する実体関係の存在を土台とする国際金融資本の現金留保、回収義務、当該法人の資本の、金融資本との間にフィクションされた資本関係から課せられた利潤を提供する義務から、産業法人の資本は、現金留保して利子配当を支払わざるを得なくされ、投融資が、経済上行い得ず、既存の資本関係、紙幣発行権取得過程についての実体関係から投融資をすることが法律上も制限されている。国際金融資本によってフィクションされた資本関係を源泉にして、労働者への貸付けがフィクションされている。

飲食店に支出した現金が多い程、現金が留保されず、金融資本が受取る利子配当は減少するから、利子配当の減少分を、交際費を損金不算入にして租税名目で、国際金融資本は回収するのである。

そのような経済関係から、飲食店に支出して一部の従業員にのみ飲食物を提供したことが、交際費等に該当するとされたと見ることができる。