[事実関係]

 浚渫業を営む原告が法人税確定申告をしたところ、税務署長は、原告が支払った傭船料につき、法人税基本通達2-2-14を適用できないとして損金算入を否定して更正処分を行った。

 裁判所は、

「原告は、本件船舶の内、A号は浚渫をするグラブ船、B号及びC号は浚渫した土砂類を運搬する土運船であって、いずれも原告の本業のための傭船であり、原告はこれを利用して収益をあげている。

したがって、本件傭船料は、法人税22条3項第1号の売上原価等に当たるものであって、同項2号の販売費、一般管理費等には該当しない。

本件傭船料は、平成8年6月1日から同9年5月31日までの1年間の傭船に係る料金であるところ、その内、平成8年6月30日を年度末とする平成7事業年度の収益に対応する費用は、平成8年6月1日から同月6月30日までの1か月間の傭船に係る傭船料であることは明らかであり、同年7月1日以降の傭船に係る傭船料は、これに対応しない。

そして、本件傭船料は、本件船舶の利用状況にかかわらず、本件傭船契約期間(1年間)を基礎に定められているから、平成8年6月1日から同月30日までの傭船に係る傭船料も、12か月の月割計算で算定することが相当であり、その金額は、本件傭船料5,000万円の12分の1の416万6,667円であって、これが、平成7事業年度の損金の額に算入すべき金額となる。

本件において、本件傭船料中の前払費用相当分は、4,583万3,333円(5,000万円から前記損金算入分を控除した残額)と多額であるなど、原告の財務内容に占める割合や影響も大であって、前払いした5,000万円全額を平成7事業年度の費用として計上し、同年度の損金に算入することは、重要性の原則で認められる範囲から逸脱するものであり、ゆるされない。

加えて、本件通達(1)の後段は、継続した同様の会計処理を要件としているが、原告は、平成7事業年度以前には、同年度ように傭船料を前払いしてこれを支出の日の属する事業年度の損金の額に算入する会計処理は行っていなかったのであって、右継続性の要件も満たさない。

したがって、本件傭船料に本件通達(1)の後段を適用して全額を損金に算入することは認められない。

同通達は、技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額について、支出の日の属する事業年度の損金の額への算入を認めているが、右通達は、主として人的役務の提供に係る報酬に対する原価の額について定めるものであって、浚渫業はこれにあたらない。

また、右通達も継続した同様の会計処理を要件としているが、前記のとおり、原告はこの要件も満たさない。したがって、本件傭船料に本件通達(2)を適用して全額を損金に算入することは認められない」とした(長崎地判平成12年1月25日)。

[解説]

 船舶は、所有しているだけでは現金留保を産まない。賃借する経済実体に低い使用権を付与して、高い賃借料を徴収する。

船舶を生産手段にして貸与し、賃借している経済実体の労働を疎外し、疎外した労働を船舶に転嫁し、金融資本との資本関係から課せられた現金留保義務に基づき、現金商品と交換する。

国際金融資本の資本関係を土台とした実体関係に基づく現金留保、回収義務に基づく、交換段階での市場価額に基づいて、使用させ、現金商品に価値属性を付与する義務がある。労働を疎外して現金留保を蓄積が確定した段階毎に損金となる。

支出した現金に、労働を疎外して現金留保の蓄積を確定させた段階にないものが含まれていれば、それは損金とはならない。

当該 支出した全額を損金算入すると現実の経済過程に乖離するのである。