[事実関係]

 原告は、採石及び土木工事を主体とする建設業を営む法人である。原告は、国定公園特別区域内の採石地において砂利の採取を行っていたが、その土地の所有者との間で、採石後の跡地には植林するか、植林できるような状態にする旨を約束していた。

又、採石法及び自然公園法の規定により知事の許可を受けて、定められた土石採取の許可条件に従った工事をする義務を負っていた。許可条件には、緑地化修景、安定勾配整形等があった。原告は、負担する採石の跡地の盛土、植林等の費用を、損金の額に算入して法人税確定申告を行ったが、税務署長は、更正処分を行った。

 裁判所は、

「原価とは、会計上、製造活動、販売活動、物品の保管・管理などの経営の諸活動に関連して発生する経済的価値の消費であり、財貨又は用役の提供の提供のために製造・販売などの経済目的に関連して消費される経済価値であり、正常な状態のもとで消費される経済的価値である、ということができる。

原価計算基準も、『原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、は握された財貨または用役の消費を、貨幣価値的に表したものである』としている。

ところで、自然環境回復費が、このような会計学上の原価の本質を内在していることは、自然環境費そのものの性格からいえる。

土地造成業者が一団の造成完了部分から分譲する場合に、宅地購入者との契約上敷設すべき道路、公園その他の附帯施設の工事が未了であるにもかかわらず、右費用を原価として損金算入されていることが認められるが(通達2-2-2はこれを前提としたものである、右の場合と自然環境回復費の場合とでは、本来性格において異ならない。

つまり、両者とも、社会経済上支出が法的に義務付けられているのであるから、税法上は、原価として損金に算入することを認める必要が生じたのである。

通達2-2-4は、昭和55年5月25日、通達の第2章(収益並びに費用及び損失の計算)第2節(費用及び損失に関する通則)第1款(売上原価等)の中に新設され、砂利等の採取の進行に応じて一定の算式(砂利等の採取量と比例させている)により埋戻し費用を適正に見積り、これを採取した砂利等の取得価額に算入することを認める、としている。したがって、その配列の位置や文言等からみて、砂利採取地に係る埋戻し費用が原価であることを承認しているものと言わなければならない。その理由を敷衍すると次のとおりである。

法22条3項は、所得金額の計算上損金の額に算入すべき金額として、別段の定めがあるものを除き、同項各号に掲げる額と定めているところ、砂利採取地に係る埋戻し費用の損金算入については、別段の定めがないから、右埋戻し費用の損金算入が認められるためには、法22条3項各号のいずれかの該当する場合でなければならない。

ところが、2号費用は、期間対応費用の費用であって収益と個別的(客体的)には対応しないものをいうし、3号の損失は、収益の獲得過程以外で喪失した経済的価値すなわち収益との対応関係にないものをいうから、右埋戻し費用は、2号費用、3号損失のいずれにも該当せず、結局1号原価に該当するというほかはないのである。

そして、通達2-2-4が売上原価等の款の中に配置され、右埋戻し費用を取得価額に算入することを承認し、しかも見積り額の算定方法は、砂利量の採取量に比例して算出するというように売上と個別に対応させることになっているのであるから、この規定は、右埋戻し費用が1号原価であることを前提としたものとみることができる」とした(大阪地判昭和57年11月17日)。

[解説]

 全ての経済実体は意思を持たない。当該法人の資本家が所有していない土地は、採石後、当該法人が、再び、又は、他の経済実体が、金融資本との資本関係から、生産手段にして貸与して、労働を疎外して、商品製品に転嫁して現金商品と交換し、現金商品に価値属性を付与する。

国際金融資本との資本関係から課せられた現金留保義務から、土地所有する経済実体が埋め戻した土地を生産手段にして貸与して労働疎外するのであれば、疎外した労働を土地に転嫁するのである。現金留保せざるを得ない。

埋戻しを業とする法人は、他の経済実体が所有する土地であれば、生産手段を貸与して労働を疎外し、資本家名義の労働に転嫁する。 原価は、経営目的に関連して消費されるのではない。資本関係、経済関係に基づいて、財貨、溶用役を提供せざるを得ず、消費される。

全ての費用は、会計学上の原価の本質や性格は内在していない。経済実体には正常な状態という属性は備わっていない。

費用は、現実の生産手段の貸与、労働の疎外、疎外された労働の資産への転嫁による現金留保蓄積の過程に基づいて費目を実体化させる。

本件では砂利の採取量ということになり、2号が包摂される。貨幣には価値属性は備わっておらず、国際金融資本の資本関係、資本関係を土台にした実体関係から価値属性を付与することを余儀なくされているのである。