[事実関係]

亡きBが主宰していた無限連鎖講の事業体が昭和47年から法人でない社団で代表者の定めがあるC研究所になったとして、C研究所名義でされた法人税、法人県民税、法人事業税及び法人市民税の申告について、税務署長は、入会金収入ないしBからの財産の提供等について、それぞれ増額更正をした。

Bの相続財産の破産管財人であるXらが、C研究所は、法人でない社団としての実体を欠き本件各更正は無効であると主張し、税務署長に、これに基づき納付された各金員の還付及び還付加算金の支払を求めた。

裁判所は、

「人的結合体がその各構成員とは別の独立した社会的存在としていわゆる人格のない社団に当たるということができるためには、それが団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、その構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体として主要な点が確定していることを要する。

そしてこのような人的結合体が、社会関係において、全一体として現われ、その構成員たる個人が重要性を失っている点において、同じく人的団体である民法上の組合との間に一線が隠されているのであるが、他方、同じく複数の人を含む組織体でありながら、その組織体がこれら複数の人からなる人的結合体であるかどうか、すなわち各個人が等しく組織体の構成要素としてその運営に主体的に参画できるものかどうかが、多数の従業員等を組織的に使用する個人企業と区別されるべき要点となる。

したがって、すなわち、人格のない社団が人を構成員とする人的結合体である以上、まずもってその構成員の存在と範囲が確定し得るものでなけらばならず、その意思の総和が団体の存立の基礎となるのであるから、その総和としての団体意思が特定の個人の意思によって左右されない構造となっていることが不可欠の要件となるのである。

(1)その根本規範である定款の存在とその効力、

(2)その構成員の要件とその在り様、

(3)構成員の意思の総和である団体意思を形成するものとしての会員総会の意思形成の仕組みとその実態、

(4)業務執行ないしその機関の実態、

(5)財産の帰属の帰属の在り方等を検討し、

C研究所が人格のない社団に当たるかどうか、すなわち社団性の当否について。人格のない社団が成立するかどうかは当該人格もない社団が社会的実体を有するものとして実在するかどうかにより決せられるべきものであり、当該人格のない社団の設立目的のいかんに左右されるものではない。

そして、人格のない社団として実在するに至った後は、当該人格のない社団は活動を開始し、必然的に多数の法律関係を形成し、殊に対外的関係においては、当該人格のない社団の財産の引き当てとして法律関係を形成する第三者が生じてくるから、当該人格のない社団の真の設立目的が不法なものであるという一事から直ちに当該人格のない社団の設立行為の効力が否定されると、法律関係の安定を著しく害する結果となり、このことは、法人格を認められた社団、すなわち、法人においてさえ、法人が公益を害すべき行為をし、また、設立が不法の目的をもってなされたときなど、他の方法により監督の目的を達することが不可能である場合には、公益法人であっては、主務官庁が取り消すこととされ、営利法人にあっては裁判所が法務大臣、株主等の請求により会社解散命令を発することとされるが(商法58条1項1号)、当該法人は解散して清算手続に移行するにとどまるのであって、それ以前に行った法律行為の効力が否定されるものではないことに照らしても明らかと言わなければならない」とし、

「定款上構成員の範囲について疑義があるほか、会員であっても団体意思の形成に参画し得ない者も多数存在し、会員総会、理事会の議決も、会長Bが決めたことを追認するだけの形式だけのもの」であるとし、

社団としては実在せず、会長Bの個人事業の別称とみるほかないとした(福岡高判平成11年4月27日)。

最高裁は、

「C研究所の定款の成立過程及び備付け状況に照らし、定款の効力に疑義があることは明らかであるとは言えず、定款の規定の文言のみをもって会員の要件が不明確であると速断することはできない上、Bが終身理事長及び会長である旨の定款の定めがあったが、これを変更することは定款上可能であったし、また、会員総会、支部大会及び理事会が一件してその機能を果たしていなかったと断定することもできない。

そうすると、外形的に着目する限りにおいては、C研究所は、意思決定機関としての会員総会、業務執行機関ないし代表機関としての理事会ないし会長が置かれるなど団体としての組織を備え、会員総会の決議が支部において選出された会員代表の多数決によって、行われるなど多数決の原則が行われ、定款の規定上は構成員である会員の変更に関わらず団体として存続するとされ、代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているようにみえるというべきである。

したがって、課税庁においてC研究所が法人でない社団の要件を具備すると認定したことには、それなりの合理的な理由が認められるのであって、仮にその認定に誤りがあるとしても、誤認であることが本件各更正の成立当初から外形上、客観的に明白であるということはできない」とした(最判平成16年7月13日)。

[解説]

社団を構成している各経済実体は、意思を持たないから人的結合体ではない。民法上の組合、企業も構成する各経済実体に意思はなく、人的結合体ではない。各経済実体の生活の土台となる現金留保義務に左右されない。

社団は、意思の総和ではない。各経済実体の集まりには社団性という属性は予め備わっていない。社団を構成する経済実体の現金投下の総和が存立の基礎である。

公序良俗に反するか否かではなく、現実の現金留保過程、すなわち、現金の投下、生産手段の貸与、労働の疎外、疎外した労働の資本への転嫁という過程があるか否かによって、実体あるものと社会に認めさせたかどうかが規定され、課税するかしないかが規定される。

高裁は定款の効力を言うが、定款の規定の存在から自然に経済実体が実現するのではない。生産手段の貸与、労働の疎外、疎外した労働の資本への転嫁の過程が土台となる。財産は主人を持たない。

設立目的は実体のない観念であるから、設立目的から、社団が実体があるものと社会に認めさせることに成功したとすることはできない。

第三者から受けた投融資関係により、原告の財産が現実には当該第三者の所有となることがある。

最高裁のいう会議には機能という属性は備わっていない。裁判所は会議の外形から社会上の実体があるか否かを規定している。現実の会議が経済実体に基づいて事実確定、問題提起の全体化をしていたかが社会上の実体の有無を規定する要件の一つとなる。