[事実関係]

 内国法人たる原告Xは、木材販売業を営む同族法人であり、南洋財を取引することとなっていたlことから、大蔵大臣から軽課税国に指定された香港にA社を設立し、A社の発行済株式の全てを所有していた。

Xは、A社が租税特別措置法66条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当するところ、A社が同条3項に規定する要件を充足し、同条1項の適用を受けないものとして昭和54年度から昭和56年度の各事業年度の確定申告を行った。

税務署長は、A社が適用除外要件の一つである管理支配基準を充足していないとして、A社の各事業年度に係る課税対象留保金額をXの各事業年度の所得の計算上、益金の額に算入する更正処分等を行った。

Xは、A社の株主総会、取締役会がXの本店所在地で行われていること、A社の取締役中四名中三名がXの取締役を兼務していること、A社の常勤取締役が1名であることは子会社の常態であることから管理支配基準を充たしていると主張した。

Xは、また、A社が同社の香港事務所(常勤の現地駐在取締役1名、現地採用従業員二名)において、電信の授受、貿易関連契約書の作成、シッパーとの代金の授受決済(スイッチ取引)及びシッパーへの金融サービス等を行っていたから、所在地基準も充たしていると主張した。

 裁判所は、

「タックスヘイブン課税の適用除外規定は、特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その所在地国で事業活動を行うことにつき十分な経済的合理性がある場合にまでタックスヘイブン課税規定を適用することは、我が国企業の正常な海外投資活動を阻害する結果を招くことになるので避けるべきであるとの趣旨で設けられたものと解されるから、右の管理支配基準は、右のような場合に当たるかどうかを事業の管理運営の面から判断する基準をいうものと考えられる。

したがって、右の基準を充足しているか否かは、当該外国子会社等の重要な意思決定機関である株主総会及び取締役会の開催、役員の職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が本店所在地で行われているかどうか、業務遂行上の重要事項を当該子会社等が自らの意思で決定しているかどうかなどの諸事情を総合的に考慮し、当該外国子会社等がその本店所在地国において親会社から独立した企業としての実体を備えて活動しているかどうかによって判断すべきものと解される。

措置法66条の6第3項の規定の文言からすれば、少なくとも管理支配基準を充足しているか否かの判断に関する限りでは、A社の業務が卸売業とサービス業のいずれに該当するかということは、直接的にはさほど決定的な意味を持たないものというべきである。

本店所在地国で事業活動を行うことに十分な経済的合理性が認められる場合であっても、およそ、管理支配基準が充たされていない限り、なおタックスヘイブン課税規定が適用されることになっているのである。

このような規定の仕方からすれば、同項にいう管理支配基準は、当該特定外国子会社等の業務の種別とは一応無関係に、その子会社等が独立企業としての実体を備えて、その本店所在地国において、自らの決定、判断に基づいてその事業の管理、支配及び運営を行っているものと考えるのが相当である。

したがって、本件においてA社がこの管理支配基準を充足していたか否かも、A社が親会社たるXの管理支配を離れ実質的に独立した法人としての立場で本店所在地国たる香港においてその事業活動を行っていたと見られるか否かをその事業活動の実態に即して直截に判断すれば足りるものと考えられる。

事実関係からすれば、A社は、その本店所在地国たる香港において独立した法人としての立場でその事業を自ら管理、支配及び運営をしていたとは到底言えず、むしろ親会社たる原告が本店所在地国たる我が国においてその管理支配を行っていたといわなければならない」とした。

(東京地判平成2年9月19日)

[解説]

 法は資本関係によって所有される経済実体の現実の経済関係を疎外して規定され、司法は法の趣旨と交渉するが、各経済実体の現実の経済関係、経済過程を全体化してそれに基づいて法の解釈、包摂を行う義務がある。

法人の資本は、国際金融資本との資本関係から、資本から投下された現金を源泉に、現金、架空資本を貸与して、貸与先の労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁するか、又は、生産手段を購入して所有法人の労働を疎外することにより、疎外された労働を資本に転嫁することにより、現金留保を蓄積する。

法人及び法人の資本の留保現金は、民間銀行の所有を通じて中央銀行所有することにより紙幣発行権、準備金制度を所有することができるという実体関係の存在から、既に民間銀行の架空資本を所有する国際金融資本との資本関係から、租税名目で回収される。

租税の支払いは税引前所得から既に支払われた利子配当の支払いと共に労働者に転嫁される。よって、国際金融資本、産業資本、法人、使用人を含む全ての法人、経済実体は意思を持たず、それゆえに人による人の支配の有無の問題は成立し得ない。

上記の現金留保の過程が存在することにより経済実体が存在するということである。原告XとAは、資本関係はあるが、いずれも、国際金融資本との資本関係から、法律行為を媒介にして、実体あるものとして社会に認めさせることに成功することを余儀なくされた別個の法人である。Aの留保した課税前の所得がXに配当の土台として取得、所有されたものと事実確定がされたと見ることができる。