[事実関係]

 植物油等の卸売業を営む同族法人が行った昭和53年3月期の青色の法人税確定申告書について、税務署長が917万2,586円の売上計上洩れがあるとして更正処分を行った。

 審判所は、

「納税者は、取扱商品の大部分について、次の手続により、いわゆる直送販売の方法で販売していることが認められる。

納税者は、得意先から申込みのあった商品の納期及び価額等の取引に係る諸条件に基づいて仕入先と交渉を行い、得意先及び仕入先双方の合意に達したところで、その商品の売買に関する契約を結び、品名、数量、単価、取引価額、納期、代金決済及び受渡条件を決定する。

販売する商品の納期が近づくと、納税者は、仕入先に対して得意先又は得意先が指定した者に商品を出荷するように指図する。

仕入先は、納税者からの出荷指図に従って納税者の得意先に出荷する。商品が仕入先から得意先に到着した場合には、得意先が受領印を押捺した物品受領書等がその得意先等から仕入先に交付され、仕入先はその物品受領書を受取ると納税者に対し、その商品が得意先等に到着した日又はその翌日に、得意先に対し、売買契約に係る商品が到着したかどうかを確認する。

納税者は、仕入先から納入した商品に係る請求書の交付を受ける(その時期は、通常、商品が得意先等に到着した日からおおむね7日から10日後である)と、得意先等に対し、商品の検査結果等を照会し、商品に瑕疵がないことを確認する。

なお、請求書には、納品書が添付され、その納品書には、商品の納入日が記載されている。納税者は、商品の販売による収益については、仕入先から交付を受けた請求書に基づき、その請求書の日付をもって売上に計上している。

得意先の経理担当者によれば、納税者の仕入先から商品が到着した場合には、品名及び数量を確認する程度で、その商品に瑕疵があった場合には、値引処理を求めるが、瑕疵のある商品はまれである。

納税者は、商品に瑕疵があることが判明した場合には、その判明した時期においてその商品について値引又は取替を行っている。

納税者が上記に記載した方法によって行われている以上、仕入先から交付を受けた請求書に添付されている納品書に記載されている得意先等の商品受領日をもって、納税者の商品販売による収益を計上するのが相当と認められる。

納税者は、仕入先から納品された商品の瑕疵を理由として得意先等から返品又は値引等を要求された場合には、その商品について瑕疵のあることが判明した時点において、その値引又は取替えを行っていることが認められ、また、会計実務の慣行においても営業活動に伴い通常経常的に発生する値引等については、返品、値引等が現実に生じた日の属する事業年度の総売上から控除するのが通例とされているので、商品が納入された時点で、売買契約による取引価額をもって収益に計上しても、何ら不都合を生じるものとは認められない。

以上のことから、本件売上計上もれに係る商品は、昭和53年3月期中に得意先等に到着していることが、納税者が仕入先から交付を受けた請求書に添付されている納品書等によって確認されるので、本件更正処分は適法である」とした(昭和55年6月14日裁決)。

[解説]

 金融資本との資本関係から、金融資本との資本関係から現金留保義務を課せられた売上先との経済関係から、産業法人の資本家は、商品を購入し、生産手段にして、労働を疎外して、商品に転嫁し、現金商品と交換せざるを得ない。

法人の取引においては意思が存在しない。資本関係、経済関係から契約をせざるを得ない。直送のケースでは、当該法人の仕入先が、当該法人の売上先に出荷した段階で、当該法人は、既に労働を疎外して商品に転嫁して、商品と現金商品を交換して現金を得て、現金に価値属性を付与する。検収をしなければ生産手段にして貸与できなければ、売上先において、生産手段にして、労働を疎外して、資本に転嫁して、疎外した労働に価値属性を付与し、現金留保を実体することができる段階で売上が実現する。

請求は、各経済実体の経済過程において、経済関係、実体関係の確定に関わらず、金融資本に課せられた現金留保義務、回収義務に応じて、請求することを余儀なくされる。仕入先が出荷したか否かを知っていたかという実体のない観念に関係なく、国際金融資本の資本関係を土台とした実体関係を土台とした現金留保回収義務から、出荷されて現金留保が実現した段階で売上に計上することを余儀なくされ、生産手段にして貸与できずに返品されたことによる現金商品の返済や生産手段にして貸与はできるが、瑕疵があって値引きが余儀なくされることによる現金商品の支払は後回しにされる。

通例や慣行ではなく、発送された以後の段階で瑕疵が確定するから、瑕疵があった段階において値引、返品が計上される。