[事実関係]

 原告法人は、映画投資事業組合に出資し、映画事業組合が取得した映画フィルムの減価償却費及び支払利息の内、出資割合に応じた金額を原告の損金に算入して確定申告を行った。

 裁判所は、

「本件融資契約によれば、映画投資組合は、オランダ銀行から、本件映画の購入資金として71億9,030億円を借入れ、これに年率5.5%で月複利による利息を付して借入日から7年目に当たる返済日までに同銀行に返済すべきものとされている。

一方、本件配給契約及び本件オプション契約によれば、Bは、映画投資組合に対し、保証支払額96億4,107万円を支払うほか、Bがオプションを行使した場合にはフックスト支払額として、映画投資組合が延長オプションを行使した場合には、延長アドバンス額として、少なくとも9億1,660万円を支払うこととされていて、これらの合計額105億5,768万円は、映画投資事業組合がオランダ銀行に返済すべき借入元利合計金に合致することが認められ、しかも、映画投資事業組合とHBU銀行との間における本件保証契約によれば、Bが右の金員の支払をしないときは、同契約に基づきHBU銀行がその支払をすることとされている。

したがって、映画投資事業組合は、不履行の危険を負担することなく、オランダ銀行に対する借入元利金の返済ができるものとされているというべきである。

原告法人が平成元年9月期及び平成2年9月期における各申告所得金額の計算に当たり、映画投資事業組合のオランダ銀行からの借入金のうち、原告の映画投資事業組合に対する出資割合に応じた4億4,939万円を長期借入金として計上し、これから生ずる各期の借入利息27万4,630円、2,534万円を当期の支払利息として損金の額に算入していることは、原告において明らかに争わないところである。

しかして、上記に説示したところによれば、オランダ銀行からの右借入金については、映画投資事業組合は、B又はHBU銀行からその借入元利合計金全額に相当する金員の支払を受けることとされているのであるから、支払利息として損金の額に算入した右借入利息に相当する金額を、受取利息として益金の額に算入すべきものである」とした(大阪地判平成10年12月18日)。

[解説]

 節税効果に対する期待、租税回避目的は実体のない観念であるから、効果の期待や目的による支出は実体がないから損金とはならないのであるが、利息や減価償却が損金か否かの問題提起の土台ともならない。

危険、組合員の利益を得る意思、組合員が、映画投資組合に現金商品と引換えに映画を引渡したCがTSP及びコロンビアから映画を取得したこと、映画を賃借するBが第二次配給契約を締結することを知っていたか否かは実体のない観念であるから、利息の損金となるか否かの問題提起の土台とはならない。

現実の資本関係、経済関係、生産関係に基づいて、映画の配給権、著作権の使用権が確定する。権利の所有、権利を生産手段にして貸与し、労働を疎外させ、権利に転嫁させ、労働力商品に使用料を転嫁させ、現金商品と交換し、現金に価値属性を付与して実体化させている経済実体、投下された現金の源泉、現金を投下して、現金を生産手段にして労働を疎外して、労働力商品に利払いを転嫁させている経済実体の存在から、利払についての権利義務が確定される。映画投資事業組合は、現金留保が不足して利息の支払ができなくなるということはないし、現実には利息を負担しないことができる。

映画投資事業組合には投融資を受けることによる純損失は実現しないのである。危険は方便である。

原告の資本家、TSPの資本家及びコロンビアの資本家のHBUに預託した留保現金、投下現金が源泉で、Bが生産手段を購入、賃借して、投融資を受けざるを得なくされ、労働を疎外することを余儀なくされている。

投資事業組合も原告法人もBも金融資本家も経済実体であり、資本関係から、法律行為を媒介に実体あるものとして社会に認めさせることを余儀なくされ、利息、配当は税引前の現金留保から支出され、利息、配当の支払は労働力商品に転嫁されているから、金融資本家、原告法人、映画事業組合に受取利息を計上させても二重課税、三重課税、重複課税の問題は実現しない。