[事実関係]

 原告は、法人税、法人臨時特別税、法人特別税の各申告に当たり租税特別措置法56条の5第1項に基づき、プログラム等準備金の損金算入をして所得金額を計算したところ、税務署長は、上記プログラム等準備金の損金算入を否認して更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。税務署長は、本件規定等の解釈として、システムインテグレーション(SI)の特質や、本件規定の立法趣旨に照らすと、本件規定が適用されるためには、①その適用を受けようとする者が、統合情報処理システムサービス(SIサービス)業を営む青色申告法人であって通商産業大臣の認可を受けたものであること(法人要件)、②要求定義が終了するまでの段階で、開発しようとする情報処理システムの内容が愚弟かされ、そのシステムについて、SIサービスに係る全ての役務を提供する旨と、その対価によって明示されていること(SI要件、一括契約要件、対価要件)、③書面による1年以上の無償補修特約が存在すること(無償補修特約要件)、④当該契約が、エンド・ユーザーとの間で締結されていること(直接契約要件)、⑤エンド・ユーザーが開発しようとしているシステム全体について、SIサービスを提供する旨の合意がなされていること(全体システム要件)が必要であると主張した。

 第1審は、

「税務署長が主張する各要件の内、法人要件、SI要件、無償修理要件は必要であるが、一括契約要件、対価要件、直接契約要件、全体システム要件は不要というべきである。以上の検討結果によれば、税務署長がプログラム等準備金積立ての損金算入を否認したもののうち、D証券システム関係の5,350万円、Mシステム関係の3,150万円、I証券システム関係の2,164万円及びT銀行システム関係の全金額については、損金算入の対象に含められるべきものであったことになる」とした(東京地判平成14年8月27日)。

 控訴審は、「システムインテグレーションの本質は、情報処理システムの構築に当たってシステムの設計、プログラムの作成、試験、運用の準備及び保守の全ての役務を提供し、ユーザーに代わってシステム開発における統合機能を果たすことにあるものと認められる。また、本件規定の文言上も、契約に基づきこれらの役務の全てを提供することが必要とされており、したがって、本件規定の適用を受けるためには、上記の各役務の全てを提供する旨の契約が締結されることが必要であると解される。

原告は、当初の契約とその後締結された個別契約を全体的に見て、上記の役務の全てを提供する旨の合意がされたものと認められれば足りる旨主張する。しかし、システムインテグレーションが上記の役務の全てを提供してシステム業者がシステム開発における統合機能を果たすものであることからすれば、システムインテグレーションに係る契約の締結と認められるためには、当初の契約の段階において上記の各役務を提供するものであることが当該契約から認められることを要するというべきである。原告の主張のように、その後締結された個別契約に合わせて全体的に見れば足りるとすることは、各役務を分けてそれぞれについて個別契約を順次締結した結果、たまたま同一のシステム業者が全てを請け負ったという場合のように、システム開発における統合機能を果たしたものと言えない場合であっても本件規定の適用を認めることになってしまい相当でない。

本件規定が統合情報処理システムサービスを、相手方との間に締結した契約に基づき、一の情報処理システム.につき、その設計、プログラムの作成、試験、運用の準備、保守の全てを行う役務をいうと定めていることからも、本件規定の適用を受けるためには、システム開発に係る全ての役務を提供するものであることが法的拘束力を有する契約に基づいて認められることを要するものと解されるのであって、法的拘束力を有しない合意は含まれないと解すべきである。

本件規定の解釈に当たっては、立法当時の事情や立法者の意図に必ずしも拘束される必要はないが、文言等の解釈に当たってこれらを参考とすることは当然であり、必要なものというべきである。したがって、本件規定の適用が認められるためには、契約の当初において、システム業者と相手方との間で、システムの設計、プログラムの作成、試験、運用の準備及び保守に至るまでの役務を提供するまでの全ての役務を提供することが法的拘束力を有する契約によって取り決められていることを要するものと解されるのである。

したがって、本件各契約はいずれも本件規定の適用対象とは認められず、これに基づくプログラム等準備金の損金算入を否認するなどして行われた本件各更正等の処分は適法であり、その取消を求める原告の請求はいずれも理由がない」とした(東京高判平成15年4月16日)。

[解説]

合意は実体のない観念たる意思の合致である。資本関係から課された現金留保義務により、役務提供するしないに意思はない。役務の譲渡には土台となる資本関係、生産関係、経済関係がある。偶発することはありえない。たまたま同一のシステム業者が全てを請け負ったということは実体がない方便である。SIを生産手段にして労働を疎外して現金留保を産む。SIには属性、機能は備わっておらず、SIが現金留保を産むのではない。労働力商品を売って、労働を疎外され、取引先において生産手段にして労働を疎外して現金留保できる段階まで完成した仕事に転嫁されて現金留保せざるを得ない経済関係、生産関係上の義務があって、役務提供の実体があって、法律上義務付けられていることが法が包摂される土台となる。税務署長、裁判所は、国際金融資本家が規定した、実体のない方便たる意図と交渉して法を解釈、法を包摂している。