[事実関係]
原告法人は、その系列法人である株式会社U、及びU産業株式会社に原告法人の川内工場においてプレストレストコンクリート矢板(PC矢板)等を売却している。
税務署長は、その売上の一部について翌期の売上に繰延処理をしたものがあるとして、これを当期の売上計上漏れと認定した上、かかる売上計上漏れを含めたUへの当期のPC矢板の売上中に製造原価以下の金額で販売されたものがあるとして、法人税法132条1項を適用して、その売上金額と税務署長の認定した売上額との差額をも当期の売上計上漏れと認定し、更に原告からUに対する右差額と同額の寄附金計上漏れを認定して更正処分を行った。
裁判所は、
「法人税法132条1項がその行為計算にかかわらず、計算することができる旨規定しているのは、非同族会社においては会社と社員、あるいは社員相互の利害対立を通じて、当該法人の所得、法人税の負担をことさら減少させるような行為がなされにくいのに対し、同族会社においては、その経営権が一部の社員に独占されているため、いわゆる隠れた利益処分等の合理的理由を欠き、当該法人の所得、法人税の負担を減少させる行為がなされやすく、これを放置するにおいては、租税負担の公平の原則に反することになるからであり、同族会社のかかる行為のうち不当に法人税の負担を減少させるものについて右の規定のとおり規定したものである。
したがって、同族会社のなした製品の低価額による譲渡が右法条の適用を受けるには、その販売価額が非同族会社の通常の取引における、同一種類、品質、型の製品の販売価額に比して異常に低いものであること、及びそのような低価額による製品の販売について合理的理由(販売時期、販売地域、数量、会社の営業方針、取引先との関係等)がないことが要件ないことが要件であると考えられる。
そして、非同族会社の通常の取引における製品の販売価額は、同一種類、品質、型のものであっても、そこには高低自ずと巾があるものと思慮せられるから、異常価格とは、いわゆる時価を下回るだけでなく、非同族会社の通常の取引において考えうる最低の販売価額(当該製品の製造原価、あるいは非同族会社の取引における実際の最低価額のいずれか低い方)をも下回る意味に解するのが相当である。
同族会社の異常低価額による製品の販売について、税務署長は、右法条により異常低価額による製品の売買を否認して、最低販売価額による製品の売買を認定することができるのである。
そして税務署長は、同族会社の製品販売価額が最低販売価額を下回っていることを主張、立証しなければならず、またそれでよく、右事実が証明されれば、これを争う側において、当該製品の異常価額が合理的理由のあることを主張立証しなければならないとするのが相当である。
以上の事実を基礎に原告の当期の課税所得を計算すると、本件処分の内、課税所得を超える基礎として計算される税額を超える限度において取消を求める原告の請求は理由があるのでこれを認容」するとした(鹿児島地判昭和50年12月26日)。
控訴審は、
「以上の事情を総合すれば、本件PC矢板の販売価額は、通常の56ないし57%であって、しかも製造原価をも下廻る異常な低価であることは前叙のとおりである。してみれば他に特段の事情の認められない本件においては、右異常低価販売は経済的取引としてはまことに不合理、不自然なものであるというの外ない」とした(福岡高裁宮崎支部判昭和55年9月29日)。</p>
[解説]
使用人間に生産関係があって、使用人間の生産関係に基づいて経営権を取得するのではない。資本関係に基づいて経営権を取得する。資本家と資本家の同族関係者の資本関係、生産関係に基づいて、資本が同族関係者に移転し、同族関係者が資本関係に基づいて経営権を取得する。
資産に価値属性は備わっていない。資産は所有しているだけでは現金留保を産まない。低廉譲渡の無償部分から収益が実現するのではない。
産業法人の資本家が疎外した労働の分を証券取引所、中央銀行を所有する民間銀行を所有する国際金融資本家が資本関係、現金回収義務に基づいて、労働を疎外し、固定資本、架空資本、生産した資産に転嫁した価額に加算した金額が、現金商品との交換の土台となる債権金額であって、国際金融資本家によって規定された債権金額の弁済を現金で受けたのである。
商品と現金商品の交換は、経済関係、資本関係によって行うことを余儀なくされ、意思に基づいて行うわれるのではない。契約は意思に基づいて行われるのではなく、資本関係、経済関係に基づいて行われる。
国際金融資本家によって規定された債権金額と商品と現金商品の交換契約における商品を譲渡した側の債権金額との差額は資本関係のみを土台としていれば配当ということになる。
仕入代金の支払は、労働力商品への現金支給、支給現金の価値属性付与の前に支払われ、支給された現金で労働力商品、投融資先の再生産を余儀なくされるから、労働の疎外による現金留保を既に稼得しているから、関係法人間の取引であっても、資本関係はあるが、関係法人は各々別の経済実体である。
資本関係から法人の資本家の意思に関係なく登記して法律上実体あるものとして社会に認めさせることに成功させざるを得ない。
原告法人の売上金額が増加すると同時にUの仕入金額の増額となるから、それを計算すると、原告とUの合計所得はかえって減少し、法人税の負担は減少するとの主張は成立しえないということになる。
商品とされた物に品質なる属性は備わっていない。異常、通常は実体のない属性付与である。
裁判所は理論に合致しているか、自然不自然という宗教学に合致しているか否かによって事実確定をし、経済実体の全体化をしていない。価格は資本関係、経済関係、生産関係すなわち労働の疎外によって実現する。
法人の資本家に意思はないから、営業方針によって現金留保が規定されるのではない。価格に高低巾は自然に発生したのではなく。資本の投下、資本関係により課せられた現金留保義務、労働の疎外によって実現するのである。販売時期は属性であるから、時が価格を規定するのではなく、価格を規定するのは現金投下、労働疎外という経済過程である。品質、営業方針、販売時期は実体がなく、法を包摂することの土台にすることは、経済実体に乖離する。類型化は事実確定、問題提起の全体化を放棄することである。</p>