[事実関係]

 税務署長は、原告法人の確定申告において、所得税額算定上控除した訴外T商店に対する252万円の支払賃料の内、44万円につき経済合理性のない高額の賃料として、損金計上を否認して、その損金計上を否認した部分を寄附金と認定して更正処分を行った。

 裁判所は、

「法人税法第37条第5項は、寄附金の額は、寄付金、きょ出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が金銭その他資産の贈与又は無償の供与をした場合における当該金銭の額によるものとし、同項かっこ内の広告宣伝及び見本品の費用その他これに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除くと定めている。

ところで、寄付金の中には、法人の事業に関連を有し、その収益を生み出すのに必要な費用といえるものと、そうではなくて単なる利益処分の性質を有するにすぎないものがあるところ、当該法人が現実に支出した寄付金のうち、どれだけが費用の性質を持ち、どれだけが利益処分の性質を持つかを客観的に判定することは困難であることから、同法37条第2項は、行政的便宜及び公平の見地から統一的な損金算入限度額を設け、寄付金の内、右損金算入限度内の金額は費用としての損金算入を認め、それを超える部分の金額は損金に算入しないものと定めている。

従って、資産の無償譲渡に当たることが肯定されれば、それが除外費用に該当しない限り、仮にそれが事業と関連を有し法人の収益を生み出すために必要な費用といえる場合であっても、寄付金性を失うことはないというべきである。また、無償の譲渡である以上、公平の観点からして、正常賃料と支払賃料との差額が著しいか否かを問わず、その寄付金性を肯定すべきものと解するのが相当である。これを本件についてみると、正常賃料の額は前段認定のとおりであり、支払賃料のうち右正常賃料を超えるもの部分は無償による資産の譲渡であるものというべく、かつこれが除外費用に該当しないことは明らかであるから、右超過部分は賃料の名義をもっていた寄付金であると認めるのが相当であり、これと同趣旨の見解の下になされた更正処分は違法ではない」とする(山形地判昭和54年3月28日)。

[解説]

 建物は価値属性を備えていない。建物は所有しているだけで現金留保を産むのではない。使用している建物の賃借料の無償部分から収益が実現し、実現した留保現金から現金を贈与しているのではない。

そのように事実確定したとすると、賃貸人にとって、賃借人の有償使用の部分からも現金留保が実現し、経済実体に乖離する。建物を生産手段として貸出して労働を疎外して、資本関係、生産関係、経済関係、それらを土台にした労働力再生産、投融資先再生産義務を土台に契約が成立し、賃借人は契約上の家賃を支払わざるを得ない。賃借人は、国際金融資本との資本関係、生産関係から課税側が高額賃料と規定した賃料を資本関係上、経済関係上、生産関係上支払う義務があり、それを弁済したのである。偶々生起した例外現象ではない。

現金に価値属性は備わっていない。支出に性質すなわち属性は備わっていない。経済実体から規定された賃料に正常という属性は備わっていない。経済理論に合致しているか否かが賃料を規定するのではない。客観という観念が規定するものでもない。近隣土地の売買実例、再調達原価、実体のない価値属性である期待利回りを用いて原告の賃料を算定し、正常の価値属性を付与している。

賃貸人は、原告を含む関係五法人の発行済株式の2分の1を有していた。収益を生み出すのに必要か否かではなく、労働を疎外して現金留保を産み出すかが費用を規定する。支払った賃料が資本関係のみを土台にし、経済実体がなければ、配当ということになるであろう。

行政的便宜から寄付金としてその損金算入限度額を設けたというが、行政的便宜とは行政は無産であるから公務員の労働を疎外して公務員の人件費に投資しないということである。経済実体の全体化をせず、事実確定のコストをかけないということである。つまりは、金融資本家の資本関係、現金留保義務を土台としているのである。