国税徴収法56条の適用を受ける動産は、民法第86条第2項及び第3項に規定する動産の内、法第70条の船舶又は航空機の差押又は第71条の自動車、建設機械又は小型船舶の差押えの規定を受ける財産及び無記名債権を除いた動産である。無記名債権(無記名公社債等)は、民法上動産と見做されるが、当該条文の適用上は動産ではなく、有価証券であり、取立ての方法による換価ができる。徴税職員が動産又は有価証券を差し押さえた場合には、差押調書を作成し、その謄本を滞納者に交付しなければならない(国税徴収法54条1項)。強制執行においても、債務者の占有中にある動産の差押えは、執行官がその者を占有して行うこととされている(民執123条1項)。徴税職員が占有した後に、その意思に関係なく占有を失っても、差押えの効力は消滅しないとする(明治34年10月9日大判民録7輯9巻46号)。