[事実関係]

宅地建築取引を業とする法人は、物産法人との間で、昭和48年2月20日に、土地14万8,765坪について全部で代金2億3,058万5,750円の売買契約を締結した。

しかし、原告法人が手付金及び中間金として受領した金額は1億2,700万円であった。当該売買契約には、物産法人が昭和48年4月30日までに残代金を支払い、原告はこれと引換えに所有権移転登記手続をなす、所有権の移転時期は、代金完済のときとするという特約が存在した。

原告法人は、残代金1億358万5,570円の受領と引換えに所有権の移転登記をなすべく、司法書士に登記手続の準備を依頼していたところ、司法書士は、残代金未受領の内に、前記土地について所有権移転登記がなされた。

原告法人は、当該登記は前記の特約に違反した登記であって、棚卸資産の引渡しが完了していないとして売上に計上しなかった。

税務署長は、販売による収益の額は、当該引渡しがあった日又は法人が引渡しまでの日で特に定めた日の属する事業年度の益金に算入すべきであるとした上で、引渡しの完了があったと認定して更正処分を行った。

 第1審は、

「法人税基本通達2-1-1では、引渡時をもって収益の帰属時期としている。右引渡しとは、現実の占有の移転のみならず、実質的にその資産に対する支配関係の変動があった場合をも含むと解するのが当事者間の利害に合致すると考えられ、登記関係書類の交付、代金の支払い、所有権移転登記の完了等をもってその指標とするのが妥当である。これを本件についてみれば、物産法人は昭和48年5月31日までに1億3,700万円、その後同年7月10日頃までに2,000万円を既に支払っている上、物産法人名義の所有権移転登記もなされていることをも考慮すると、右各土地については、それぞれ48年5月期、49年5月期において引渡しがなされてものと解することができ、この理は、可分であれば一個の契約の一部であっても同様である。」とする(長崎地判昭和58年2月18日)。

 第二審は、「収益の帰属時期認定の基準に関して法人税法第22条4項は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきことを要求しているところ、企業会計原則第2の3のBは、売上高は、実現主義の原則に従い、商品の販売又は役務の給付によって実現したものに限ると規定し、右改正後の企業会計原則第2の3のBも同旨である。

これに照らすと、前記の法人税基本通達2-1-1の引渡基準は、商品の販売の実現の時を基準にすることを具体的に表現したものであって、法人税法第22条4項に適合する妥当なものとして肯認することができる。

そこで商品につき売買契約が締結された場合、どのような事実があれば右の引渡しが肯定されるかを考えると、その売買契約に代金債権担保目的による所有権留保特約があったとしても、必ずしも、その契約上の所有権の移転にこだわることなく、当該売買契約に基づいて目的物の現実の支配が移転した場合は引渡しがあったと認めるのが相当で、不動産の場合、売主から買主に登記関係書類が交付されたか否か、代金の一部が支払われたか、売主の合意によって所有権移転登記を経由したか否か等を指標として合理的に判断すべきものと解される。

しかして前述の如く本件契約は、夫々所有権留保の特約が付されているが、これは前記各契約内容に照らして売買代金担保目的であったと認められ、この認定を左右するに足る証拠はない」とする(福岡高判昭和60年4月24日)。

[解説]

 現実の経済関係を土台としない限り、通達は解釈指針とはなり得ない。現金留保の土台となる所有は、人による人、物の支配ではなく、経済関係上の所有、経済関係上の所有を土台とした法律上の所有である。

登記は意思、意思の合致たる同意の基づいて行われるのではない。法律上の所有と経済上の所有が異なるということはあり得ない。金融資本家との資本関係から課された現金留保義務から登記をせざるを得ないのである。

代金未受領の登記は、錯誤ではなく、経済過程における当該代金未受領段階では、経済関係、それを土台とした実体関係と異なる登記で、現金留保が完了して経済上、既にした登記を通じて法律上実体あるものと社会に認めさせるのである。

土地を引き渡すこと、現金商品を引き渡すことは現実の実体ある義務であって、目的物ではない。

効果は実体のないもの、実体に基づいていると認めさせていない現象であり、登記が有効か否かの問題ではない。

危険負担の移転の危険は、実体がないから、実体ある損害を土台とした損害賠償義務である。不動産を所有するのは、金融資本である。

判決は、所有権留保は、売買代金担保の目的というが、全ての目的は実体がない。債務者は、担保は資本関係、債務を土台に提供せざるを得ないのである。

国際金融資本は、現金留保の受贈、既に中央銀行を所有する民間銀行を所有していることに基づく現金留保義務、資本家再生産義務から担保をとらざるを得ない。

債権者も資本関係を土台とした現金留保義務から担保をとらざるを得ず、目的という意思から担保をとるのではない。

国際金融資本は、債務者は中央銀行を所有する民間銀行を所有せず、債務者の現金留保から返済できない現金を貸し付けるから、現実には、貸付の段階で担保名目資産は国際金融資本家の所有となる。資本家は、現金の投下を源泉に、土地を購入し、資本関係から、生産手段して貸与せざるを得ず、労働を疎外し、現金を留保するから、現金を土地に投下して、土地の売主が受領した現金に価値属性が付与され、土地と現金商品の価値属性を実体あるものと認めさせる。

金融資本家は資本関係に基づく現金留保義務から、経済関係、現金留保の確定を土台とした法律関係の確定ではなく、経済過程で現金留保があった段階で現金留保を土台に課税をしている。

土地には可分であるという属性は備わっていないから、現実の土地の投下、生産手段の貸与、労働の疎外という経済関係から複数の段階に分けたか否かが規定される。引渡しがあったか否かは、理論や観念に基づくとすることは経済実体に基づかない国際金融資本家の資本関係に基づくということであり、理論に合致して規定されるのではなく、観念によって規定されるのではなく、現実の経済から規定される。