[事実関係]

 医家に医薬品の製造販売を行っていた原告法人は、病院の医師等から英文添削の依頼を受け、その添削事務をアメリカに所在する添削業者に外注していた。

原告は、英文添削を依頼した医師等から収受した金額の3倍の金額を添削業者に支払ったが、添削業者に支払った金額と添削を依頼した医師から受け取った金額との差額は、原告が負担し、負担した金額全額を損金算入した。

税務署長は、

①原告が医師等から受領した英文添削料と原告がこれらの添削のために支出した外注費との間に、著しく開差があり、英文添削を依頼した医師等に経済的利益を供与している、

②英文添削の依頼者である医師等は、原告の医薬品の納入先に勤務する者で、医薬品の処方ができる資格を有している者であり、購入する医薬品に影響力を行使しうる立場にある者、または、その者の指導下にある者であること、

③依頼者の医師等は、原告の医薬情報担当者の業務である医薬情報の収集に関する情報を有する者であり、それらの医薬品等の情報を提供しうる者であること、

④原告の英文添削サービスは一般に開示されたものではなく、原告の医薬情報担当者が窓口となり、個々に依頼を受けることから、英文添削の依頼ができる者は、原告の取引先に限られる、ということを更正通知書に記載し更正処分を行った。

 東京地裁は、

「本件英文添削の依頼者が、事業に関係ある者に該当するかどうか否かについては、本件英文添削の対象とされた研究者が所属する医科系大学及び総合大学の医学部については、その附属病院が全て原告の製造、販売に係る医薬品の取引先であり、本件英文添削の対象とされた研究者が所属するその他医療機関も、いずれも原告の製造販売に係る医薬品の取引先であったものである」とし、事業に関係のある者であると判示した。

東京地裁は、本件負担額の支出の目的が接待等を意図するものであるか否かについて、

「原告の医薬品の販売に係る取引関係を円滑にする効果を有するものということができる」とした(東京地判平成14年9月13日)。

 控訴審は、支出の要件については、地裁の判示を維持し、支出の目的について、

「本件英文添削がなされるようになった経緯及び動機は、主として、海外の雑誌に研究論文を発表したい若手研究者らへの研究発表の便宜を図り、その支援をするということにあったと認められる。それに付随したその研究者らあるいはその属する医療機関との取引関係を円滑にするという意図、目的があったとしても、それが主たる動機であったとは認め難い」とし、行為の態様について、「本件英文添削のように、それ自体が直接相手方の歓心を買うような行為ではなく、むしろ、学術研究に対する支援、学術奨励といった性格のもの」であるとし、交際費等に含めることは妥当でないとした(東京高判平成15年9月9日)。

[解説]

 医薬品の開発には金がかかる。生産手段を所有しない使用人たる研究者に研究コストの土台となる現金は支出できない。

医薬品開発法人が労働疎外による現金留保のみでは資金を賄うことができない。医薬品開発法人は国際金融資本家に投融資を受けて医薬品を開発する。国際金融資本家が利子配当を受け取る。

人民は、生産関係を土台に生存、生殖による労働力商品の再生産、延命が義務付けられ、法人への現金投下を源泉に、労働を疎外されるという国際金融資本家の投融資先となる。医薬品法人、医師、研究者は、国際金融資本家の現金留保義務から規定した実体のない方便である優生思想を受け容れざるを得ず、医薬品を研究開発製造する。医師は、医薬品開発法人を通じて国際金融資本家から投融資を受け、医師の側に医薬品の購入権、選択権、指導権はない。

現実にノーベル、アインシュタイン、ナチスドイツ、ロックフェラー財団による出資設立され、武田薬品からの出向された者を中心とする731部隊を前身とするミドリ十字、湯川秀樹を含む東大、阪大、東北大をはじめとする研究者が動員された理化学研究所の原爆開発、東大をはじめ日本の全大学はロックフェラー財団を始めとする国際金融資本からの投融資を受けている。

TPPが開始されると、国際金融資本家が所有する医薬品法人の医薬品を購入せざるを得なくさせられる。

医薬品法人は、国際金融資本との資本関係、資本関係を土台とした国際金融資本家、医薬品法人の現金留保義務を土台に、研究者や医師へ投融資を行わざるを得ない。

医薬品との交換により得た現金留保は医薬品法人にとっては配当であり、国際金融資本家への利子配当の原資となる。

医薬品法人に投融資をする金融資本家にとっては、英文添削費の差額負担は、事業上すなわち現金留保上、現金留保の源泉となる支出ではある。歓心を買うための支出であるといった支出の目的は実体がないから、目的から交際費か否かは規定できない。

東京地裁は、支出の効果の有無という属性付与や期待、意図といった実体のないものから交際費か否かを規定してしまっている。国際金融資本家、英文添削の依頼をした医師との経済関係から見れば、英文添削料の差額負担は交際費ではないであろう。