[事実関係]

海運業を行っていた内国法人である原告法人は、パナマ共和国に100%子法人を設立した。

子法人はパナマには事務所を有しておらず、設立関係書類、事業関係書類等全てが原告法人の事務所に保管され、事業の管理、経営も原告法人が行っており、原告は、子法人の設立以来、子法人名義の資産、負債、損益は全て、内国法人たる親法人である原告の所有であるとして法人税、消費税等の確定申告を行っていた。

税務署長は、パナマ法人が租税特別措置法66条の6第1項及び2項に規定する特定外国子会社等に該当することから同条に定めるタックスヘイブン対策税制ないしは外国子会社合算税制が適用され、原告の法人税に関しては同条2項2号の範囲でしか子法人に発生した損失を考慮できないとして更正処分を行った。

裁判所は、

「措置法66条の6第1項の規定は、内国法人が法人の所得等に対する租税の負担がないか又は極端に低い国又は地域に子会社を設立して経済活動を行い、当該子会社に所得を留保することによって、日本における租税の負担を回避しようとする事例が生ずるようになったことから、課税要件を明確化して課税執行面における安全性を確保しつつ、このような事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として、一定の要件を満たす外国会社を特定外国子会社と規定し、これが適用対象留保金額を有する場合に、その内国法人の有する株式等に対応するものとして算出された一定の金額を内国法人の所得の計算上益金の額に算入することとしたものである。

措置法66条の6第2項2号は、上記のように特定外国子会社等の留保所得について内国法人の益金の額に算入すべきものとしたこととの均衡等に配慮して、当該特定外国子会社等に生じた欠損の金額についてその未処分所得の金額の計算上5年間の繰越控除を認めることとしたものと解される。

子法人は、パナマ船籍の船舶を所有し、原告から資金を調達した上で自ら船舶の発注者として造船契約を締結したほか、これらの船舶の傭船に係る収益を上げ、船員を雇用するなどの支出も行うなど、原告とは別法人として独自の活動を行っていたというのである。

そうすると、本件においては原告に損益があると認めるべき事情がないことは明らかであって、本件各事業年度においては、パナマ法人に損益が帰属し、同社に欠損が生じたものというべきであり、原告の所得を算定するに当たり、パナマ法人の欠損の金額を損金の額に算入することはできない。
法人は法律により、損益の帰属すべき主体として設立が認められるものであり、その事業として行われた活動に係る損益は、特殊な事情がない限り、法律上その法人に帰属するものと認めるべきであって、そのことは、ある法人が、経営上は実質的に他の事業部門であるような場合であっても変わるものではないというべきである。」とした(最判平成19年9月28日)。

[解説]

親法人が資本関係のみに基づいて、経済関係、生産関係を土台とせずに、親法人から子法人に現金留保の移転がある。子法人の労働者の労働を疎外したことによる現金留保を親法人に移転し、労働者に利子配当の支払を転嫁することを親法人との資本関係から与儀なくされている。親法人の資本家と子法人の資本家は全て又は一部が同一の実体、同一の法人税法上又は所得税法上の法人、投融資現金の源泉に遡れば、全て又は一部が同一の所得税法上の法人である。当該現金の送金は、資本家への配当ということになる。

全ての法人は、金融資本家との資本関係、資本関係に基づく現金留保義務から、登記、申告、契約といった法律行為により、現金留保に所有される法人として実体ありと社会に認めさせることをせざるを得ない。

個々の法人は実体がある別個の法人である。全ての法人は、利子配当、手数料、使用料を支払うとき、税引前の現金留保から支払われ、労働者にこれら支払を転嫁させるから、二重課税は成立し得ない。現実に認めさせている経済実体に基づけば、親法人の益金、欠損金を子法人に、子法人の益金、欠損金を親法人に合算させることはできないことになる。税負担の軽減という意思、目的は実体がない。

タックスヘイブン対策税制は、現実にオフショアとの取引、オフショアにおける取引は実体がないこと、実体あるものとしていることを金融資本家に事実認定又は確定され、課税という手段を通じて、国際金融資本家に流入させることが土台、原因となっている。

劣後金融資本、産業資本が、子法人の現金留保に、タックスヘイブン対策税制規定を包摂しないことに成功しても、子法人の欠損金が親法人の損益と通算されることが認められても、金融資本家との資本関係から、労働者の労働に資本家の現金留保は分配されない。労働者は、金融資本家、劣後金融資本家、産業資本家から利子配当、原価、経費、値引きを転嫁され、労働を疎外、搾取し続けられる。

低所得者や人民、労働者には分配されない。公平を図ることを目的ということ、期待や意図、目的は実体がない方便である。投融資による資本関係のある法人の架空資本を所有する劣後金融資本家や産業資本家が中央銀行を所有する民間銀行に現金を投融資しうるという既存の経済関係が成立しているからである。