[事実関係]

 原告法人は、従前所有していた株式について割り当てられる新株割当権を行使して新株を取得すると、私的独占の禁止及び公正取引の確保等に関する法律によって増資会社の株式取得の制限を受けることから、株主名簿上の形式的株主を自社の重役らの名義に書き換え、当該役員に新株引受権を取得させ、また、第三者指名権を行使して当該役員に新株引受権を割り当てた。

これについて、訴外税務署長は、依然として実質的株主であった原告法人が、原告法人から重役らに新株引受けによる経済的利益の無償譲渡があったものと認められるとして原告法人の所得金額の申告について更正処分を行った。原告法人は、更正処分の取消を求めて不服審査を求めたところ、国税局長(被告、被控訴人、上告人)は、原告法人の主張を排斥した。

 裁判所は、

「独占禁止法10条は、一般事業法人が当時なお保有を認められていた他社の株式につき増資のあった場合に、会社自ら増資新株を取得することを許さなかったにもせよ、増資によりその株主一般が受けうべき利益を会社において事実上享受するために採る行為までを無効とする趣旨とは解しがたい。

従って、原告法人は、前叙の行為により重役等個人にそれぞれ増資株式を取得させたうえ、重役等のこれによって取得した利益を同社に回収することを約さしめることもできたはずであり、また重役その他第三者に対し相当の対価を徴して、その者のために前叙のことをすることもできたわけであるから、原告法人がこのような方法をしないで、前叙の行為をしたことは、増資会社の所有に基づき原告法人が享受する経済的利益を無償で重役等に授与したことを意味し、この点に関する前叙原判示は正当と言わなければならない。

ところで、原告法人の前叙の行為の実体を右のように解するならば、その移転の対象となった経済的利益は、いわば同社所有の増資会社株式について生じる新株プレミアムから構成されるものとみられ、その利益の移転は、同社所有の増資会社株式の値上がり部分(同社の取得した第三者指名権も同視して妨げない)の価値の社外流出を意味するものということができる。

そこで、これら株式の値上がりが原告法人の右株式の取得価額(記帳価額)を上回るものがあるならば、その部分は同社の未計上の資産であり、前叙の行為による移転する経済的利益の全部又は一部は、かかる未計上の資産の社外流出は、その流出の限度において隠れていた資産価値を表現することであるから、右社外流出にあたって、これに適正な価額を付して同社の資産に計上し、流出すべき資産価値の存在とその価額とを確定することは、同社の資産の増減を明確に把握するため当然必要な措置であり、このような隠れていた資産価値の計上は、当該事業年度において資産を増加し、その増加資産額に相当する益金を顕現するものといわなければならない。

そしてこのことは、社外流出の資産に対し代金の受入れその他資産の増加すべき反対給付を伴うと否とにかかわらない。

してみると、本件において原告法人が前叙の行為によってその重役等に移転した利益に同社の未計上の資産価値が認められるかぎり、当該事業年度においてそれに相当する益金の発生を肯定せざるをえないのであって、他面その重役等に対する利益供与による原告法人の資産の減少が事業上の損金とはしがたいものとすれば、右益金の発生が総益金増加の原因となることはいうまでもない」とする(最判昭和41年6月24日)。

 差戻控訴審は、

「原告法人は独禁法旧10条により新株の取得はできないが、さりとてその利益を放棄するに忍びず、旧株を割当日より前に重役等個人名義となして重役をして新株の割当てを受けしめ、新株引受けの申込み且つ払込みをなさしめ、又は増資会社との予め了解の下に、割当基準日までに名義書換えはしなかったものの、第三者指名権を与えられて重役個人を指名し同人をして引受申込み、払込みをなさしめて、新株を取得せしめる方法により、増資新株引受けについての旧株主の利益(新株プレミアム)を巧みに失うことなくそのままこれを重役個人に移転したものであり、このような方法をとって個人に新株式を取得させることまでも独禁法旧10条が禁じたものとは解することができないから、これは適法な処置であったのであり、しかも本件においては、新株プレミアムの会社より重役個人の移転は利益金処分としての賞与たる性質を有するものであるから、この利益が会社より個人に移転した時点(会社より流出した時点)において、会社に未計上利益が実現したものとして法人税の対象となることは当然である」(大阪高判昭和43年12月16日)。

[解説]

 金融資本家によって込められた、取得した架空資本に込められた価値属性は、現実には実体がないのであるが、実体あるものと社会に認めさせることに成功させられる。

産業法人を所有する資本家は、生産手段を所有せず、金融資本家との資本関係を土台にした現金留保義務から、金融資本家からの投融資を源泉に架空資本を購入して、発行法人に現金を投下して現金を留保せざるを得ない。

金融資本は時間という価値属性を時計という商品と経済過程に付与した。金融資本家との資本関係を土台にした投融資を受けた法人の現金留保義務から、手離さざるを得なかった現金に付与される価値属性は譲渡した時の時価である。

金融資本家に負わされた現金留保義務から、金融資本家から投融資を受けた法人の産業資本家が所有する架空資本が譲渡される時は発行法人の労働を疎外して留保した現金が現金留保義務を超えた時であり、金融資本家が投融資を行い、低い価値属性を付与し、金融資本家の現金を流出することなく、金融資本家の所有する、生産関係のある子法人名義で現実には金融資本家に譲渡されることが契約され、低い価値属性が架空資本に付与する前に譲渡により得た現金留保を金融資本家に所有させ、その中から配当を支払うことを義務付けられる。

架空資本の譲渡は、現実には資本家への配当である。産業資本を取得した資本家により、中央銀行を所有する民間銀行や全資本家の現金の一部から構成される、所有される機関で、金融資本家との生産関係に基づいて、許認可を与える機関に投融資を行うことができるという経済関係が既成であるから、産業法人には現金を留保しておかない。

利子配当の原資たる金融資本家から投融資を受けた債務金額を、法人の名義で所有されている架空資本で代物弁済させられる。引き渡されたことによる損失は、利息や配当や租税と同じく、金融資本家によって、既に労働を疎外されて、労働者に付与された労働力の価値属性から差し引かれ、労働者が得た現金に価値属性が付与されることで、譲渡損差し引き後の労働力の価値属性が実体あるものとされて、労働者に損失が転嫁される。

現実には個々の資本家の現金留保であるが、法律行為により社会に実体あると認めさせた法人にの現金が留保され、法人を所有する資本家は損をしない。当該裁判例、架空資本の引渡しの経済関係過程は、金融資本家による自作自である。重役が利得を得るわけではないから、時価との差額は役員賞与ではなく、配当の原資たる留保現金の土台となる投資である。

現金を投融資することは搾取の源泉であるが、現金の留保は役員をしていない劣後金融資本家が生産手段を貸与して産業をさせられて労働を疎外して得るのであるが、劣後金融資本家を所有する金融資本家は産業をしていないにもかかわらず、利子、配当という名目で労働力、労賃名目で得た現金にに低い価値属性を付与し労賃を搾取し、労働者は二重に搾取されている。

法人税法上の法人は資本家の集まりであっても、法律行為を通じて実体あると社会に認めさせざるを得ず、所得税法上の法人とは別個の実体であり、資本家は所得税法上の法人と法人税法上の法人に現金留保を分散させている。投資、配当、利息は資本関係、資本家の現金留保に基づき支払わざるを得ないものであり、産業の土台となる費用ではないとみれば、税引前の現金留保から支払われるとはいえ、資本家は損をしていないから、損金ではないことになる。

法人税が課される前に配当を収受しているから、配当に法人課税又は所得税が課されても二重課税とはならないから、損金不算入が受取配当金の益金不算入、所得税額控除、配当税額控除の原因とはなりえない。無償譲渡によって収益が実現し、そこから寄附金を支出したとみることは、収受した現金に価値属性が付与され、引き渡した架空資本の価値属性が現実には実体がなくても実体あるものと社会に認めさせられ、収益が実現されるのであるが、無償譲渡部分からも収益が発生しているとすることは現実の経済関係から乖離する。