[事実関係]

三月決算法人である原告法人は、昭和31年度において訴外N社に手形金債務853万9,119円を負担していたが、税務署長は、原告が昭和31年11月28日N社からかかる債務の免除を受けたものと認定し、同金額に相当する債務免除益存するとして、原告の32年3月事業年度、33年3月事業年度の各課税所得金額を算定し、決定処分を行った。

当事者が交わした契約書には、N社が原告に対し有する債権全額928万9,119円の内金75万円を昭和31年11月28日までに支払されたときは、残額853万9,119円に対する債権を放棄する旨の記載があり、誓約書には、N社に対して負担する債務853万9,119円に対しては、昭和31年11月放棄書にて債権放棄を承諾して下さいましたが、情勢好転し支払能力が出来次第全額支払うことを制約する旨記載されていた。

 裁判所は、

「債権放棄契約の効力の消滅を、将来の不確定な原告の支払能力回復の事実にかからしめるべき旨を約定したもの(解除条件付債権債務契約の締結)ではなくて、原告は、単に徳義上誠意をもって任意に支払をなす債務(債権者の掴取力に服さない自然債務)を負担する旨の制約をしたに過ぎないと解するのが相当である。

そして同年12月28日に原告はN社に右75万円を支払ったから、右停止条件付債権放棄契約は、同日条件の成就によりその効力をも発生したというべきである。思うに自然債務の負担をもって法人税法上の損金の発生ということはできないから、通常の債務が免除された場合、同時に自然債務を負担したから、債務免除益がないといういうことはできない」とした(大阪地判昭和40年7月27日)。

[解説]

 原告法人は仕入先訴外法人に手形債務を負っていた。銀行が出資をして設立した子法人に、訴外法人が有していた債権を譲渡させ、当該債権の回収を行っていた。

銀行は、訴外法人が被合併法人より引き継いだ資産の損失は当該銀行の子法人が補償することにさせた。債権を行っていた法人に銀行は不動産を取得させ、子法人に融資を行った。

銀行が訴外法人に融資を行い、資本関係を土台に子法人を使用し、訴外法人が有していた原告法人をについての債権を担保名義で銀行は取り上げ、原告に合併された法人の所有となっていた不動産を銀行の子法人に取得させた。

訴外法人は、銀行からの債務を返済する都度売掛金を未収入金に振替えるだけで原告法人との債権債務については損益を計上せず、子法人は売掛債権を計上せず、債権回収の都度雑収入を計上していた。

金融資本家は、別の金融機関に原告法人の資産は担保にとられ、原告の現金留保について余剰価値なしという属性を付与して原告法人から担保を取ることはできなかった。

課税側すなわち金融資本家は、子法人が原告法人の道義的誠意を期待してこれを徴したものであって、放棄書が存在するにもかかわらず、残債務853万円の支払を法的に強制するつもりがないという実体のない意思目的を主張し、裁判所も請求のあるなしという意思、家屋の譲渡による代物弁済と75万の支払の方が有利との認識という意思、債権放棄通知書を新たに作成し、欠損金をから切り捨てる、金融機関が属性を付与して規定した時間に基づいた時期を遅らせて課税を免れる意図、債権者が原告の現金留保を持ち出し、原告も資本関係から各債権者が経済関係を知っていたか否かという観念を持ち出すが、銀行の資本家との資本関係、資本関係に基づいた現金留保義務から、銀行の資本家の現金留保義務から、訴外法人、銀行の子法人に原告法人に債務免除を行う行わないを規定する権利は付与されていない。

原告法人には銀行の資本家との資本関係から債務を支払う支払わないの自由意思もなければ、自己が負わされている現金留保義務、経済関係、金融資本家との資本関係から債務を免れることもできない。

現金の投下がなければ経済取引は行うことができず、全ての経済取引において、資本関係、経済関係が存在するから、根拠がないということはありえず、債権債務の支払が任意である自然債務なるものは存在しない。

実体のない、情勢好転し支払能力が出来次第という期待、仮定によって契約の効力が発生するのではない。

訴外法人は、原告と資本関係がないことからみれば、原告への債権を放棄するということは、経済関係上、金融資本家との資本関係を土台とする現金留保義務上、ありえない。

経済関係、資本関係に基づいて契約を通じて権利義務が形成されているのである。契約書も作成され社会に法律上の債権が認めさせられている。

投融資先法人に経済実体、法律実体があるにもかかわらず、資本関係、生産関係、経済関係があるにもかかわらず、金融資本家の資本関係、現金留保義務から、実体を認めさせていない仮定に基づいて、外観という現象や観念によって、金融資本家が所有する銀行側に貸倒計上を認めて金融資本家の現金留保を認めさせることは、資本関係、生産関係、経済関係からみて、できない。

受贈益は、労働を疎外して、労働力商品という価値属性を付与して現金を支出し、現金に価値属性を付与して労働力商品の価値属性を実体あるものと社会に認めさせる前の現金留保から利子配当が支払われ、法人の資本家に還流する。

法人は所得税法上の法人の集まりであるが、法人資本家は、法人税法上の法人と所得税法上の法人に現金を留保し、法律行為をして各々の法人を実体するものと社会に認めさせている。

法人税法上の法人と所得税法上の法人の双方に課税しても二重課税とはならない。金融資本家は、法人税法上の法人の現金留保にも担税力という価値属性を付与して、法人の現金留保を疎外し、課税によって得た現金に価値属性を付与して担税力という価値属性を実体あるものと社会に認めさせている。