[法律上の規定]

 税務署長がその名義で、青色申告承認取消処分を行う場合、その原因となる事実が承認取消の規定の内のいずれに該当するかをその通知書に記載することとされている(所得税法150条2項、法人税法127条2項)。

(法人税法127条)

第121条第1項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡って、その承認を取り消すことができる。

この場合において、その取消があったとは、当該事業年度開始の日以降その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く)は、青色申告以外の申告書とみなす。

一 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていないこと 当該事業年度

ニ その事業年度に係る帳簿書類において前条第2項の規定による税務署の指示に従わなかったこと  当該事業年度

三 その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載又は記録し、その他記載又は記録した書類の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること
当該事業年度

四 第74条第1項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかったこと 
 当該申告に係る事業年度

2. 第121条第1項の承認を受けた内国法人につき、第四条の五第一項(連結納税の承認の取消し)の規定により第四条のニ(連結納税義務者)の承認が取り消された場合には、納税地の所轄税務署長は、その取り消された日の前日(当該前日が連結事業年度終了の日である場合には、その取り消された日)の属する事業年度まで遡って、第121条第1項の承認を取り消すものとする。

「できる」は、現実には税務署長に課せられた義務で、税務署長がそれをしたら国際金融資本は認めるということ。

「その他記載又は記録した書類」と「その他」と「記載」の間には、「の」が入っていないから、「その他の記載又は記録した書類」の場合よりも青色申告承認の取消がされる記載又は記録の範囲が広い。

(所得税150条)

143条(青色申告)の承認を受けた場合につき、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に掲げる年まで遡ってその承認を取り消すことができる。

この場合において、その取消しがあったときは、その居住者の当該年分以後の各年分の所得税につき提出した承認に係る青色申告は、青色申告書以外の申告書とみなす。

一 その年における143条に規定する業務に係る帳簿書類の備付、記録又は保存が148条第1項(青色申告書の帳簿書類)に規定する財務省令に定めるところに従って行われていないこと その年

二 その年における前号に規定する帳簿書類について第148条第2項の規定する税務署長の指示に従わなかったこと

三 その年における第1号に規定する帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載又は記録し、その他その記載又は記録した事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること その年

2. 税務署長は、前項の規定による取消しの処分をする場合には、同項の居住者に対し、書面によりその旨を通知する。この場合において、その書面には、その取消し処分の基因となった事実が同項各号に該当するのかを附記しなければならない。

青色申告承認取消処分につき、このことを義務付けた裁判例が存在する(最判昭和49年4月25日)。

[事実関係]

敷衍すると、

靴材皮革の販売を行う法人の代表者が、昭和32年4月1日~33年3月31日、昭和33年4月1日~34年3月31日の各事業年度の確定申告を行ったところ、税務署長は、青色申告承認取消処分、更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。

青色申告承認取消処分の通知書の書面には、「取消の基因となった事実が法人税法25条8項3号に該当する」旨の記載があった。

34年11月28日に原告が重加算税の賦課決定処分につき、再調査請求をしたところ、棄却され、その通知書には、「両年分の棚卸除外5,226,612円は、棚卸商品の一定数量を除外したものであり、原告申立てのたなざらし評価損とは認められないから、重加算税の対象となり、且つ、青色申告承認取消事由に該当する」と記載されていた。

裁判所は、

「旧法人税法は、その8項において、青色申告提出承認の取消事由を1号ないし5号に限定した上、その9項において、右取消をしたときは、その旨を当該法人に通知し、その通知の書面には、取消の基因となった事実が同条8項各号のいずれに該当するかを附記しなければならないものを定めている。

同法が承認取消の通知書にこのような附記を命じたのは、承認の取消が右の承認を得た法人に認められる納税上の種々の特典(前5事業年度内の欠損金の繰越し、推計課税の禁止、更正理由の附記等)を剥奪する不利益処分であることに鑑み、取消事由の有無について処分庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制すると共に、取消の理由を処分の相手方に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与えるためであり、この点において、青色申告の更正における理由附記の規定(32条)その他一般に法が行政処分につき理由の附記を要求している場合の多くとその趣旨目的を同じくするものと解される。

そうであるとすれば、そこにおいて要求される附記の内容及び程度は、特段の理由のない限り、いかなる事実関係に基づき、いかなる法基を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその記載自体から了知しなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の原因となった具体的事実関係をも当然に知りうるような例外を除いては、法の要求する附記として十分でないと言わなければならない。

この見地に立って旧法人税法25条の規定をみるに、同条8項各号に掲げた承認取消の事由は、青色申告制度の基盤をなす納税者の誠実性ないしその帳簿書類の信頼性が欠けると認められる場合を類型化したものであるが、具体的事案においていかなる事実がこれに該当するのかは必ずしも明らかではなく、

特に同法第3号の取消事由は極めて概括的で具体性に乏しいため、取消通知書に同号に該当する旨を付していただけでは、処分の相手方は、帳簿書類の記載次項の全体についてその真実性が疑わしいとされた理由が、

取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装したことによるのか、それとも、

それ以外の理由によるのか、

また、右の隠蔽又は仮装が帳簿書類のどの部分におけるいかなる取引に関するのか等を

その通知書によって知ることがほとんど不可能であるといわなければならない。

のみならず、承認の取消は、形式上、同項各号に該当する事実があれば必ず行なわれるものではなく、現実に取り消すかどうかは個々の場合の事情に応じ、処分庁が合理的裁量によって決すべきものとされているのであるから、処分の相手方としては、その通知の記載からいかなる態様、程度の事実によって取消がされたのかを知ることができるのでなければ、その処分につき、裁量権行使の適否を争う的確な手がかりが得られないこととなるのである。

以上の点から考えると、同条9項後段の規定は、その文言上だけからは、一見取消が同条8項各号のいずれによるものであるかのみ附記すれば足りるとするもののようにみえないでもないけれども、このような解釈が前記理由附記の趣旨にそうものでないことは明らかであり、他方、そのような不十分な附記で足りるとする特段の合理的理由も認められないのである(取消を行う処分庁としては、既に具体的な取消事由についての調査を経ているはずであるから、これを具体的に処分の相手方に知らせるべきものとしても、さほど困難な事務処理を強いられるものとは考えられない)から、

同条8項3号におけるように、該当号数を示しただけでは取消の基因となった具体的事実を知ることができない場合は、通知書に当該号数を附記するのみでは足りず、右基因となった事実についても、処分の相手方が具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならないものと解するのが相当である。

このように解しても、必ずしも所論のいうように、同条項の文理及び立法過程と相容れないものということはできないし、また、同条項が前記青色申告の更正の理由附記に関する規定とその形式を異にする点も、承認取消処分と更正処分の性質、内容の違いを考慮すれば、いまだ右の解釈を妨げる根拠とするに足りない。

税務調査の過程において帳簿書類の不備等が指摘されたとしても、これにより処分庁が最終的判断としていかなる事実を取消事由として認めたのかを知りうるものではなく、また、承認取消処分が常に理由の附記された更正処分を伴うとも限らないのであるから、取消通知書に事実の附記がなくても、処分の相手方具体的な取消事由を知りうるのが通例であるとは到底認めることができない。

右附記を命じた規定の趣旨が処分の相手方の不服申立てに便宜を与えることだけでなく、処分自体の慎重と公正妥当を担保することからすれば、取消の基因たる事実は、通知書の記載自体において明らかにされていることを要し、相手方の知、不知には関わりがないというべきである。

右附記を命じた規定の趣旨が処分の相手方の不服申立てに便宜を与えることだけでなく、処分自体の慎重と公正妥当を担保することからすれば、取消の基因たる事実は、通知書の記載自体において明らかにされていることを要し、相手方の知、不知には関わりがないというべきである。

旧法人税法25条9項後段の趣旨が前記のとおりであることに鑑みれば、右規定に違反した取消処分の瑕疵は、後日、再調査決定又は審査決定において処分の具体的根拠が示されたとしても、それにより治癒されるものでないと解すべきであり、このことは、最判昭和47年12月5日の趣旨に徴しても明らかである。

本件取消を得ても被上告人の係争事業年度の法人税等が全く影響を受けない関係にあることを確認するに足りる資料はない。」としたのである。

(最判昭和49年4月25日)

[解説]

青色申告は、税務署長を雇用する金融資本家の経済関係、現金留保義務を土台に、取り消すことができ、青色申告取消処分は、納税者に繰越欠損金の損金算入ができないこと、課税をする側が推計課税が行うことができることから、すなわち納税者の現実の経済関係、現金留保を疎外できるから、納税者にとっては不利益処分である。

納税者の誠実性、帳簿の信頼性、真実性は備わっておらず、実体のない観念であり、方便である。疑いも観念である。

恣意抑制が義務であることの理由、根拠は、国際金融資本が、労働を疎外し、資本関係をフィクションし、労働力に国債の負担をさせてきたという経済関係を法律行為により実体化させ、実体のない観念と交渉して方便を付してきたというところにある。

課税する側が恣意を排除しなければならないことは更正処分の場合と同じである。

白色申告の更正処分が義務付けられるまでは、青色申告承認取消処分を更正処分と併せて行い、青色申告者についての更正処分の理由附記の義務を免れていた。

納税者が青色申告が取り消される原因、更正処分を受ける原因を知っていたか否かというのは課税を行う側の主観、観念であり、実体がないものである。

青色申告、白色申告の更正処分だけでなく、青色申告承認取消処分においても、根拠条文だけでなく、取消の土台となった全ての経済上、法律上の事実、事実関係、法の解釈、包摂の過程を青色申告承認取消通知書自体に、納税者が取消原因を知っていたか否かにかかわりなく、納税者が求めなくとも、通知書自体が了知の土台となる記載をしなければならないと解される。

裁判例は、「具体的事実関係を当然に知りうるような」と「当然」「知りうる」という観念と交渉して理由附記の例外があるとしてしまっているのである。