[事実関係]
洋品販売業を業とする法人が、その所有建物を代表者に低廉譲渡し、代表者が建物の譲渡を受けると直ちにこれを取り壊し、同地上に建物を新築して、新築した建物を当該法人に賃貸し、敷金も受け取った。
代表者は、地主との間に土地賃貸借更正証書を作成したが、地主には権利金等を支払わず、法人に借地権譲り受けの対価を支払わなかった。
税務署長は、本件建物の敷地に対する借地権の価額が建物の時価であるから、代表者に対する本件建物の譲渡は低廉譲渡に当たるとし、時価と譲渡価額との差額は寄附金に当たるとした。判決は、当時の法人税法9場項にいう寄附金とは、法人が相手方に対し、直接法人の事業と関係なく、かつ、対価の収受なく無償で贈与した金銭その外の財産的給付をいい、法人がその所有する財産を著しく低い価額で譲渡した場合で、かつ、時価との差額を相手方に贈与するためにこれを行ったものと認められる場合、その差額を本条にいう寄附金ということは本条を不当に拡大解釈したものとは言えないとした(神戸地判昭和38年1月16日、大阪高判昭和43年6月27日、最判昭和49年4月18日)。
[解説]
法人の債権債務金額は、建物の時価であって、建物を譲渡することにより債務の弁済があったことになる。
一旦無償で譲渡して、収益を発生させ、そこから金銭の贈与を行ったのではない。無償譲渡することによって、対価を受けないにもかかわらず、収益が発生並びに実現するのであれば、有償譲渡の場合、譲渡により、譲渡先法人を所有する資本家が使用する労働力商品の労働を疎外し搾取してそれを物象化すなわち実体あるものとしているのであって、対価の取得は収益の発生並びに実現と考えざるを得ず、有償譲渡の場合には時価相当額に対価相当額を加算した収益の額が発生するということになってしまい、現実の経済関係とは乖離したものとなる。
時価と譲渡価額の差額について、第一審は、相手方が法人の役員である場合には、事情によっては役員賞与で利益処分と解し、損金算入を認めないのが相当であるとするが、現実には一使用人たる役員が法人資本家が投融資した法人の金を自由意思で低廉譲渡を受けて現金留保できないし、自らの経済関係に基づいて低廉譲渡を受けて現金留保を得ることとができないから、役員が資本家でもある場合には、法人の資本家であるが故に、自らの経済関係によって、低廉譲渡による現金留保をしたのであるから、利益配当になると思われる。
現実に譲渡による配当原資を得た資本家の現金留保が取り壊しの過程の土台となったか否か、新築し賃借させ現金留保を得ざるを得なかったことの土台となったかにより借地権の譲渡が伴ったとなるのであって、高裁判決は、建物譲渡が取り壊しの目的でなされる等特段の事情があるときは借地権の譲渡を伴わないと考え、譲受人が取り壊し後に建物を新築をすることを容認し、譲渡人において賃借する意図があったことから特別の事情ありということはできないと、新築の容認、賃借する意図、取り壊し目的といった人の意思により、借地権譲渡があったか否かが確定するわけではない。
全ての物は価値属性は備わっていないから、適正時価なるものは存在せず、法人は資本家の経済関係を疎外して、法人の経済関係により経済関係を確定できないから、課税の公平云々の問題、贈与意思、租税回避意図なる問題も成立しえない。
物象化させて社会に認めさせた評価額を疎外して、そこに贈与意思、租税回避の意図を込めることはできない。
資本関係を土台に、法人に低廉譲渡を行わざるを得なくさせ、資本家が現金留保を蓄積し、代表者に代表者が使用する、資本家と生産関係にある労働力商品と取引先の労働力商品の労働を疎外して搾取し、現金留保させ、それを資本家が所有し、法人を使用して現実に税負担額を免れている経済関係を土台に、金融資本家が生産関係に基づいて課税を行わせているのである。

