金融資本家は、個人事業主に出資させ、法人を設立させ、投資若しくは融資又は双方を受けさせ、資産、負債を膨らませてた産業資本を取得し、譲渡してきた。

中小産業資本家は、金融資本家と資本関係が形成され、担保名目で、公開株式や保険商品を買わされたり、設備投資を行って、事業を拡大し、内部留保、現金留保をさせられる。中小法人の場合、その資本家であっても経営者、役員は、金融資本家から見れば、労働者であって、その報酬は金融資本家に規定され、規定された報酬減額分を使用人しかしていない労働者に転嫁し、役員自身は高い報酬を取り続ける者もいる一方、低い役員報酬を受け容れている者もいる。

架空資本購入を土台とする配当は、労働者に購入代価を転嫁し搾取した不労所得であるが、設備投資は生産の土台であり、労働力がした労働を疎外し、資本に転化しさせ、資本増殖を行いうる。後述の判決は、設備投資を本来企業将来の命運に係るものとするが、役員も労働を現実にしてそれを疎外されてきたというのであれば、設備投資をしたことも、現実に労働をし、労働の実体があり、生活の土台となる給与であるから、疎外された労働に生産関係から価値属性を付与してそれを物象化して退職金算定過程に組み込まれることとなる。

裁判例には、設備購入に出資してきたことを考慮して、売上金額、所得金額、積立金額が低くとも、それが退職金減額の原因とはならないとして、過去5事業年度における平均売上金額、所得金額及び積立金増加額の近似する3法人から退職金額を計算し直し、適正価額の属性を与えて行ったことにつき、比較すべき類似法人の退職金額でないとしたものがある(東京地判昭和46年6月29日)。