[事実関係]
職員を社会福祉法人に派遣して業務を行わせていた法人が、社会福祉法人から得た収入を出向に基づく給与負担金であるとして消費税申告を行ったところ、原処分庁が課税資産の譲渡等の対価に該当するとして更正処分を行われたことについて、国税不服審判所は、社会福祉法人と請求人の従業員との間に雇用契約はないとして処分を維持した事例がある(平成21年5月22日裁決)。
[解説]
業務委託は、派遣元資本家と労働者の間に法律上の雇用関係があるが、派遣先資本家においては、派遣元労働者との間に法律上雇用関係は存在せず、派遣元労働者を指揮監督する権限を有しない。
派遣は、派遣元労働者と派遣元会社の資本家との間には雇用関係が存在するが、派遣先資本家においては、派遣元労働者との間に雇用関係はないが、派遣元労働者を法律上指揮監督する権限は有する。
出向は、出向元資本家、出向先資本家双方と出向元労働者は法律上雇用関係を有する。現実には、業務委託という名目で、派遣元労働者は、派遣先資本家との間又は派遣先の業務委託先資本家との間に生産関係、経済上の雇用関係が存在することがある。
派遣元資本家が、自らが所有する労働者との間に雇用契約を結び、派遣会社資本家に派遣してそこでも雇用契約を結ばせ、派遣会社資本家が更に、派遣元労働者を別の職場の資本家に派遣する二重派遣も存在する。
派遣元資本家、派遣先資本家は共に、その者の自由意思に関係なく、労働者と契約を結んで、経済関係上、生産関係上、資本関係上の労働者からの搾取利得を法律上の利益とするプロセスに鑑みれば、契約が締結されていなければ、法律上の雇用関係があったとは言えないことになる。
契約の有無だけでなく、現実に労働者と派遣先資本家との生産関係、経済関係、生産用具の貸出しという資本関係があったか否かの事実関係が法律の大前提となるが、裁決は、請求人から労働者支給された給与の存在、請求人が労働者の社会保険を負担していること、請求人が社会福祉法人から収受した金銭を土台とした所得の存在から、請求人が収受した金銭は給与負担金ではないとしたのである。