給与を支払う資本家の.側は、内部留保の蓄積という目的論に基づいて行動する。産業資本の他にも金融資本を有している場合もある。一方、労働者の側は、生産手段を所有しておらず、自らの肉体と時間が土台でそれらを売って金銭を稼ぐしか方法がない。資本家は、トータルでいくら儲けているかを数えることは忘れないが、経済関係の詳細については他人任せであるのに対し、労働者は、衣食住の物価、自らの債権債務の全てを把握し、生活に必要な金はいくらかに基づいて行動する。したがって、給与明細を見ていくら天引きされているのか、契約金額との相違はいくらか、残業代は支払われているか全ての項目に注意を払う。搾取が行われれば、その構造を探る。現実の既存の経済関係を熟知する。さもなければ、生活ができない。死ぬしかない。搾取された人間、無一文になった人間は、ブルジョア経済学者など足元にも及ばないほど優れた経済学者であること、これは事実である。人は学歴や階級だけで知識の量は測れないのである。経済競争を制した者が敗者の経済関係の全体化を放棄して法律を媒介に経済上の権利・利益を社会に認めさせるという資本市場経済の暴力的側面から、経済関係を法によって変形させる前に搾取という土台となる既存の経済関係を知っている人民の側からの事実関係の聴き取り、問題提起が必要となる。権利を行使する側のみを集めて公聴会を開いてみても、事実関係とそれを土台とした問題提起の全体化は達成できない。東北電力の公聴会の欠陥はそこにあるのである。