改正国税通則法は、「非違が疑われることとなった場合」には、事前通知をすることなく質問検査を行うことができるとする(国税通則法74の9④)。
税務署長が調査の相手方である納税義務者の申告や過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準又は税額等の把握を困難にするおそれその他その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合に事前通知を不要とするとしている(国税通則法74条の10)。
「その他の」ではなく「その他」が頻繁に使用されている条文の構造から、資本家は、課税庁に事前通知なしで質問検査が行えることを認めさせることに成功している。事前通知の必要は、納税者の権利という上層、唯心論ではなく、課税庁の義務の土台にある課税庁すなわち資本家と納税者の経済関係に基づく。
権力の構造は、論理や思考により、強制力という唯心論により、既成の経済関係を作り変えることができるという構造を形成しているということである。事前通知の土台となる問題提起の、問題提起の土台となる経済関係事実の全体化をせずに、経済関係を変えてしまうとすれば、現実の経済関係から離れて課税が行われることとなる。よって、1円でも多く徴税して資本家共通事務取扱委員会にプールしたいという目的によって、事前通知とその基となる経済関係事実の全体化を省略することを無限に認めることはできないということになるであろう。