改正国税通則法は、調査において必要があるとき、納税者が提出した物件について留め置きをすることができるとする(国税通則法74の2①柱書)。

課税庁が主語の「できる」ということは税務職員の義務ということである。「必要があるとき」ということであれば、土台となる経済関係が存在し、課税庁において、それに基づいて問題提起がなされてということであって、税務職員において当該事実関係を確認しうるだけの資料を提示して、税務職員が調査の現場で書き取れば済むのであって、当該物件の運搬、領置の過程での紛失をしてという既成事実があるから、書類が領置されている期間、事業が行い得なくなりうることに鑑みれば、この必要という文言の前提となる事実関係は無制限ではないであろう。

事前通知において、調査対象となる帳簿書類その他物件を通知することと制限を設けていることから、領置できる書類その他物件は無制限ではないであろう。納税者の同意を要するとする論者がいるが、納税者と資本家の代理人たる共通事務機関である課税庁の間の一方的な経済関係、それに基づく権力関係に鑑みれば、同意をせざるを得ない関係にあるから、納税者の意思で渡したということになれば、納税者の自己責任であるとの逃げ口上を課税側に与えることとなる。国際金融資本は、労働を疎外して利潤を得ているから、パソコンや帳簿書類を領置されると労働できないと言われれば、国際金融資本の代理人は、引き下がらざるを得ないであろう。