国税通則法第1条をはじめ、税法には、目的規定、趣旨規定なるものが存在する。しかし、立法の原因となった経済関係上、社会関係上の事実関係が書かれておらず、いきなり目的から記載が始まっている。ドイツをはじめ諸外国の立法が、立法の契機となった事案を引用しながら記述しているのとは大違いである。唯心論に従って取引や行政が行われるのではないから、立法者の目的、意図といった方便は重要ではないのだ。立法の原因となった事実関係の記載がなければ、納税者は、問題提起をして、推論、解釈適用することができないのである。納税者は、百科事典並みに知識を有しているわけではない。仮に知識を有していたとしても、自らが問題提起して推論したことと、立法者が問題提起して推論して立法したプロセスが相違しているか否か、相違していればどこに相違があるのか知ることができないのである。これでは、納税者に、問題提起を行わせず、ただ従わせて、ブルジョア国家の目的を達成という効果のみを期待しているとされても仕方がないであろう。