債務者に対し債権放棄を書面で明らかにする場合、内容証明郵便による通知によらなければならないか。債権の放棄は、債権者からの一方的な行為とされ(民法519条)、書面にするまでは、債権債務の消滅があったか否かが相手方並びに第三者に対抗しえず、債権者の自由意思によって書面にするしないを決定できるものではない。この場合の書面とは、必ずしも公証力のあるものに限られず、内容証明郵便でなくてはならないということではない。
債権及びその回収不能の発生時期、支払期日、債権放棄の金額、債権放棄の日付等は勿論、債権回収できるか否かの問題提起をして、回収の手段を講じて、相手方との経済的関係、相手方の経済的関係(仕入先、売上先等との関係等)、人的物的担保等をはじめとする知りうる全ての事実関係を考慮して、債権を放棄するに至った根拠を示しておく必要がある。債務超過であることが相当期間継続していることが認められない内に、債権放棄を取引関係との力関係により行ってしまうと、支払対価を絞る大企業の内部留保の蓄積に加担することになるからである。一方、大企業から対価が絞られて売上代金、納税資金が確保できずに、大企業が負担すべき税負担を強いられているような事実関係において、いかなる損金算入をも認めないというのも、経済関係上問題である。