「法人の有する金銭債権について、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。(注)保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象とすることはできないことに留意しなければならない。」(法基通9-6-2)。
通達レベルでは、損金経理が要件であり、申告調整は認められていないかのようにみえる。しかし、「当該債権の回収ができない事業年度中に貸倒れとして損金経理をしておかなければ、その後になって、当該債権についてこれを貸倒損失であるとする主張がし得なくなると解すべき実定法上の根拠はない」(東京地判平成元年7月24日)という裁判例が存在する。
国税通則法23条により、課税側は、質問検査等で知りえた加算項目減算項目については調査官をして職権で更正しなければならないから、納税者は、損金経理を失念したとしても、事実上の貸倒れの経済関係にあることを主張することができるのである。