税法上においては、至るところに「著しく」の文言が見受けられる。「著しく」とは具体的には何をもって、「著しく」というのか。
法人税法においては、「著しく」の文言は至るところにみられるが、「著しく」の割合を定めたものとしては、「売買目的有価証券」以外の「その他有価証券」の50%が定められている位である。棚卸資産の評価額についての「著しく」についても「通常の方法で販売することができないことが明らか」であると書かれているだけで、具体的な基準は定められていない。
一方、所得税法は、「譲渡所得等の起因となる資産の著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡」(所得税法59条1項2号)と規定し、同法施行令169条は、「著しく低い」とは、「譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額」としている。また、棚卸資産については、「著しく低い価額の対価による譲渡」(所得税法40条1項2号)が一定の金額を総収入金額に算入することとし、その著しいの程度については、棚卸資産の価額のおおむね70%に相当する金額に満たない対価により譲渡する場合のその譲渡をいう(所基通40-2)と取り扱う旨を明らかにしている。
清算や営業譲渡を行うような法人のそれらに伴う棚卸資産の譲渡については専門家に言わせると0か値段がついたとしても二束三文といわれるし、車両を売却するにしても、売却車両に係る業者の査定は、売却時の簿価で査定しているケースが多い。前期棚卸資産の評価損についても、正札半値でなければ売れないこと、原価割れをしている場合を指すなどといわれることがある。なお、評価損の基因となった時価とは、再取得に要したコストを指すのではない。したがって、これらの例を基に実務上は、棚卸資産にしろ固定資産にしろ売却時の簿価で売却したものとして取り扱っているようである。日米においても、一方の税法に規定がない場合には他の税法の例を借用して解決を行っているケースがしばしば見受けられるから、法人が他の法人又は個人に資産を譲渡した場合の著しくの判定に当たり、一応は、所得税法の規定は参考となりうるものと思われる。