棚卸資産の評価損の計上に当たって問題となりうるのは、商品等の陳腐化した場合の評価損の計上であろう。ここでいう季節商品とは、春物衣料、冬物衣料といった限定された期間に販売される商品ではなく、流行性の強い(偶然生じるというものではなく、広告モデル等を媒介に、消費者からの要請を変化させることに成功したことにより、既存の商品が消費者に要求されなくさせることに成功したことによる。)、頻繁にモデルチェンジがなされる商品であるとされる。「通常の方法で販売できない」とは、正札半値でしか販売できないことであるとか、原価割れでしか販売できないことであると解されることは、「税法における著しくとは」の記事で述べたところである。
税務調査官は、調査の際、評価損に計上された商品一点一点につき、調査対象最終事業年度の終了後、確定申告書の提出期限位までに、評価損計上後の価額で販売して、収益として実現したか否かを確認するが、必ずしも、収益の実現は、評価損計上の要件とはされていない。販売による収益の実現が要件とされていないとはいえ、経済的関係を離れて、科学的に検証することを放棄して独自の意思により、評価損を計上した場合の評価損は否認されることはいうまでもない。幅広い層、特に若手社会人や学生等、所得が少ないとされる層に対して、試しに販売することを実践したか、又は、少なくとも、そうした問題提起を行って、販売可能か否かを検討したかは重視され、ブルジョア階級にのみ販売することを試みていたばかりに、商品評価損の計上を否認された君島インターナショナルの裁判例もある。また、日米ともに、同族会社が、評価損計上後に関係会社や役員個人に販売して収益を実現したかのように装っても、当該商品の売買の実体、引渡しの事実がなければ、その評価損は否認されている。