役員に対し、全く、貸付金に対し全く利息を課さずに貸付けを行う無償貸付と通常より低い金利で貸付ける低利貸付けとは前者は無償による役務の提供であるが、後者は有償による役務の提供という点で、別個の概念である。したがって、内容が限定かつ確定している場合にのみ許容される「等」と用いて「無償貸付等」と一くくりすることができるものの例には該当しない。

36-49により計算した金額と法人経理の利息の差額は、寄附金とする見解があるが、役員報酬、役員が産業資本家である場合には、金融債権の未収、産業資本家の配当所得であろう。

所得税の取扱いには、当該金銭が他から借入れて貸付けたことが明らかな場合には、その借入金の利率により、その他の場合には、4.0%+公定歩合により「評価する」とある。評価と課税を受ける課税標準は別物であることは、固定資産税に係る地方税法の定めからも明らかである。

よって、前年11月30日の公定歩合+4.0%と法人の経理が採用した利率との差額を直ちに経済的利益の供与と認定して課税することは妥当ではないであろう。この通達で計算した利息と無償貸付の金額又は同通達より低い利率で計算した場合の差額が年5千円以下であるとき、金融資本と税務署長の生産関係によって課税は義務づけられない。

経営者の属性が与えられて商法を媒介に役員登記していても、資本を有せず使用人にすぐないときは、仮払経理がされていても、会社の現金を自由意思で使用することはできず、直ちに精算されることを前提とする立替金であることや、役員からの借入があれば、当該役員は金融資本家で、役員への仮払いは現実には借入返済であるとの見方も成立する。

中小企業の役員は、法人が市中金融機関等より借入れを行う際、連帯保証人となりうるのだが、法人に対しては、保証料の請求を行うわない役員もいる。

一方、ドイツでは、役員貸付金の利率については、市中金融機関からの調達金利等の利率から、法人に対して請求する保証料率を控除した差額を利率とすることを認める行政通達がある。日本では、裁決、裁判例等でこうした保証料率を控除したところの役員貸付利息の利率について認めた事例はないようであるが、一応の参考にはなるものと思われる。役員に支払う保証料については、信用保証協会の保証料の算定基準を参考とした基準である保証する債務額の年1%を上限とするにより算定する金額を上限とすることが相当であるとした判決がある(宮崎地判平成12年11月27日)。