役員、使用人に貸与している社宅家賃の毎月の徴収額は、税務執行上、他から借り上げている場合には、法人が賃貸人に対して支払った金額の1/2と所得税基本通達の現物給与の頁に記載されている計算式によって算定した金額の大きい方の金額を計上するとされる。

所得税基本通達によった場合、毎年、固定資産税納税通知書到達の翌月から到達した納税通知書をもとに計算しなおした金額に改定して計上することとなる。よって、何年も徴収額が改定されていないのであれば、直近の納税通知書により計算しなおした金額との乖離がみられ、即課税に結びつくかはともかく、経済的利益の供与と「評価」されかねない。

したがって、実務上は、所得税基本通達によって計上している法人は少ない。一方、大企業等の中には、豪華社宅に住みながら、社宅家賃の徴収額が、法人負担額の1/2と所得税基本通達によった場合のいずれよりもはるかに低い金額しか徴収、計上されていないことが問題とされていないことは非常に問題である。

更に、共益費についても各々の使用実績等に基づいて徴収していなかったり、役員だけ徴収していなかったり、使用実績等に比し、徴収率が低かったりすると税務調査等で問題とされうる。なお、単身赴任等、法人における生産関係上法人によって指定された住所に住まされている役員、使用人等につき、法人が社宅家賃を負担している場合には、当該役員使用人から社宅家賃を徴収しなくとも差し支えないとされている。

常勤でない使用人が一時的に現場近くに居住し、当該家賃を法人が負担した場合にも、生産関係によりそこに済まされているわけであるから、その者から社宅家賃を徴収しなくても差し支えない。社宅家賃を徴収することは資本、生産手段を持たない労働者に債務を負担させることであり、生産関係上行うことができず、給与の全額支払いを定めた労働基準法に反する。地代家賃として損金として認められる。また、社宅のある部分を事業の用に供している場合には、前期所得税基本通達により計算した金額の70%でよいこととされている。 最後に、他から借り上げている役員使用人の社宅家賃を関連会社間で負担し合う場合には、その負担割合につき、負担し合うことの経済的物的関係からの必要があることにつき、契約書等において明らかにしておく必要があるであろう。