租税負担の軽減は、内部留保の蓄積、配当原資、事業予算捻出、家事関連費捻出、奢侈的費用捻出、工作費等事業関連性のない支出に対する資金繰り等、生産諸関係及び経済的諸関係並びに社会的要請その他により、行なわれる。税負担を軽減するということは、経営者としての自然な感情ではない。競争入札を勝ち抜きたい、銀行から事業資金を借り入れたい場合には、たとえ、赤字であっても、収益を前倒しするなどして、なんとか所得を出し、納税しようとする。そこで、税負担の軽減に係る3つの概念について説明したいと思う。
節税とは、税法の規定が予定しているところに従って税負担減少を図る行為であると説明される。
租税回避とは、税法の規定が予定していない異常な法形式を用いて、課税要件の充足を避け、税負担の減少を図る行為である。合法的な、法形式的には認められた又は法的に禁止されていないタックス・プランニングを用いて、税負担の減少を図る行為である。異常な法形式と税負担の減少に加えて、「結果的に意図した経済目的ないし経済効果を実現しながら」を要件に挙げる者がいるが、目的と手段の関係や実質課税の原則の記事で述べた契約や登記等の法形式を採用することの必要性に鑑みれば、これは持ち出す必要はないであろう。「異常な」の判定も、判例学説社会通念は、勝者が敗者や社会に承認させてきた結果にすぎないから、これらにのみ頼ることは危険である。個別事案毎に検証する作業が重要となる。
脱税は、偽り又は不正によって、税負担を免れる行為であり、法令に違反する行為である。「偽りその他不正の行為」とは、例えば、①納税者が内容虚偽の申告書を提出し、納税義務を過少にすることによって、その不足税額の負担を免れるような行為。②名義の仮装、二重帳簿の作成、架空経費の計上等といった積極的な仮装又は隠蔽行為を行い、売上除外、棚卸除外等の消極的な行為によって、納付すべき税額を免れる行為、又は、これらの手段を利用することにより、税の徴収を著しく困難ならしめる場合、又は期限内の申告をしなかった場合である。偽りその他不正の行為の要件として、逋脱の意図は、租税回避の意図が不要でありのと同様の理由により必要ないであろう。