給与所得者の源泉徴収制度は、戦費を効率的に調達しようとする目的をフィクションして付与して、昭和15年4月1日より導入された。
つまり、とりやすいところから搾り取ってやろうというわけである。
ご存知のとおり、源泉所得税は、毎月の給与総額より天引きされ、翌月10日までに納付することとなっている(納税義務の発生)。
したがって、法人税調査と同時に源泉所得税の調査が行なわれたときは、法人税が既に申告済みの直近事業年度末日までしか調査できないと解されるのとは別に、調査のあった日の直近の10日が納期限となっている給与所得に係る源泉所得税についてまで調査できることとなる。
給与所得者の年税額は、通常、その年の12月31日に確定するため、年間に支払うべき所得税を毎月前払いしていることになる。
労働者にとっては、給与が支給されるときには既に源泉所得税が差し引かれているので、労働者に税金を負担させられているという意識を持たせないという意味で、徴収する側にとっては、都合のよい制度である。
しかし、実際には、給与は、役務提供の対価という点からみれば、労働が一旦停止する毎に時間を付して、日割りで確定するもので、給与所得者は、給与支給日まで給与の支給が待たされた上に、税金も予め徴収されているのである。
給与所得者には、給与所得控除額といって、給与所得の金額に応じて、一定金額を給与所得から控除できる仕組みとなっているが、給与所得者の勤務する法人等の業種などは考慮されていない(後述の特定支出控除は考慮している。)。
また、法人等使用者(雇い主のこと)が源泉徴収義務者として、源泉所得税を給与の額から天引きするわけであるが、給与所得者は、税務署等を相手に訴訟を提起することはできないと解されているので、雇い主を相手に訴訟を起こすこととなる。
それか手間隙かけて還付申告(還付申告できる期間は、その年の翌年の1月1日から5年間)をするかである。給与所得者は、事業所得者に比べ、自らの意思で、必要経費の計上をはじめ、税額を確定するということが困難となっている。
そこで、まず、自分自身が所得税法上の給与所得者に該当するか否かを考えてみることである。たとえ、勤務先から交付される源泉徴収票のタイトルが「給与所得の源泉徴収票」となっていても、業務上必要とされる交通費、道具等を雇い主が負担しているのか、報酬を受け取る者が負担するのか、毎月定時に定まった場所で雇い主の指揮監督に従って業務を行なうのか否か(一定の成果物をあげるのか、報告義務等)などによって事業所得者か給与所得者が分けられるのである(全く一致しているかどうかはともかく、「資本論」に書いてあることを思い出していただければわかると思う)。
そして、事業所得者に該当しないのであれば、通勤費、転勤に伴う転居関連費、研修費、資格取得費、単身赴任者の旅費等の支出うち一定のものがあれば、これら特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えるときは、確定申告により、その超える金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができるとする特定支出控除の制度がある。
上記に該当する支出がある場合には、それらを証明する書類が必要となるので、捨てずに保存しておくとよいでしょう。
税理士団体等も給与所得者の要望をなかなか国際金融資本の代理人に働きかけてくれない。だからといって、給与所得者も、税について関心を持たずにいるといつまでも取られっぱなしになるのである。