日本の法人税制に、国外に親会社、子会社等を置く、いわゆる多国籍企業が、例えば、国外の親会社、子会社等に時価よりも無償並びに低い対価で資産の譲渡等を行い(継続取引であるか単発取引かは問わない。

他に低利貸付け等役務提供の対価も対象となる)、又は、国外の親会社、子会社から、時価より高い対価で資産等を買い入れた場合に、親会社ー子会社等といった支配関係(依存関係)を持たない、別個独立した法人同士が取引した場合には、いくらで取引がなされうるかという点から、親子会社間等で行った取引価格を修正する「移転価格税制」というものがある。

上記のようなケースでは、内国法人の所得が国外に移転する場合であるが、移転価格税制の趣旨目的すなわち実体のない観念たる方便の一つに、各管轄権間、すなわち、国際金融資本に投融資がされている国家間の所得の配分、さらに言えば人民の国債の負担による税収の配分を行うことが挙げられる。

移転価格税制による課税を行った段階では、納税者にとっては、一時的に二重課税が生じうるとされる。二重課税の調整に当たっては、当事者である国家の税務当局が「相互協議」を行なって、二重課税の是正を目的とした調整を行なうとされる。

国際金融資本に支給の一部又は全部に貸付けをフィクションされている各プチブルに国債の負担が現実に二重に課されていると言えるであろうか。

紙切れが利潤を産み出すのか

国土が利潤を産み出すのだろうか。

何れも、違う。

労働力の貸し出しのフィクションを世界各地にあるどのプチブル労働者が国際金融資本から受けるかである。

国際金融資本に貸し付けをしている労働力に借金をフィクションして労働を疎外して国債すなわち国際金融資本の借金の返済負担義務をフィクションしてどの民間企業のプチブルに貸し付けをフィクションするかである。

税収の配分というからには、労働力を購入させられている代理人の集まりである国家間における労働者への貸付のフィクションの源泉である税収の取り合いという事態が生じさせる。

国際金融資本によって、先進国同士の取り合いがフィクションされたものもあれば、先進国と発展途上国の間の取り合いがフィクションされたものもある。移転価格税制による税収の再配分によって、一方の実体のない観念を実体化させたところの先進国の使用による、もう一方の先進国の労働者に対する搾取、先進国の使用による発展途上国の労働者の搾取といった問題が起こりうる。

これによって税収を確保した国家が、あるシンクタンク等一部の特定の利益集団に融資する国際金融資本が牛耳っているような国家であれば、外交問題等において「ダブルスタンダード」を形成し、他国に内政干渉し始めるようなことも起こりうるし、税収を確保したその国内の各プチブル労働者においても、税収が福祉等に充てられず、軍事産業のプチブルに充てられたことがフィクションされ、労働力に貸し付けがフィクションされれば、労働の疎外、人民の経済的格差の是正につながらない。

また、仮に、先進国のプチブル同士であれば、不利益的な取扱いを受けている先進国のプチブル、先進国発展途上国のプチブル間では、発展途上国のプチブルに税収の評価が多くになるように配分が行なわれたとしても、そのことによって、新たに配分を受けた国家が、形式上の体制が資本主義であろうと社会主義であろうと、共産主義であろうと、一部特定の利益集団すなわち国際金融資本が牛耳るような国家であれば、戦争産業の労働者に貸し付けがフィクションされ、労働が疎外され、税収は、人民に行き渡らない。

本当の意味で、格差が是正され、全ての人間が豊かになれるかは、移転価格税制によって、税収を割り当てられた各国家の「民主化の習熟度」にかかっているといえるであろうか。いや、違う。

相互価格協議に付与された法的性質如何に係らず、根拠規定の有無にかかわらず、納税者からの求めがなくとも、協議の結果に至る理由を納税者に明らかにすることによって、適正を付与することを担保する必要がある。

相互価格協議を行なう際に専門的知識を有する者に諮るにしても、専門的知識を有する者が、国際金融資本の代理人である御用学者やブルジョア経済学者であっては意味がない。

移転価格の問題に限らず、専門的知識を有する者に対するテストと、その者を審査選抜する者に対するテストがないのである。現実には、国際金融資本によって代理人が選抜されているのである。相互協議の対象として、租税行政の大量性や事案の重要性と称し、国際金融資本が融資する大企業の資本ばかりを取り上げるようなことがあってはならない。移転価格税制の執行の問題は、古くて新しい問題である。