労働者は、企業を存続させて、労働の対価の支給を待たされ、国際金融資本に前貸しした金が返ってきたのに、貸付を受けたことにされて労働力の再生産をし続ける義務はありません。
資産の評価益は、資産を所有することで産み出されたものではありません。利潤は労働によって産み出されたものです。
債務免除益の債務は、帳簿上は、代表者の借入金であっても、経済上は、現場で働く労働者の労働の対価が未払いとされたことにより産み出されたものです。
資本に債務免除を認めたら労働者は永久に労働の対価は返ってきません。
国際金融資本は、法律上、無制限に紙幣をフィクションすることができますから、金が返ってこなくても存続し続けられます。
債務免除益や資産の評価益を、債務者である国際金融資本が自作自演した国債の負担に充当されたら、現実に国債の返済を負担させられている、経済上の債権者である労働者は生活が難しくなります。
債務超過により、事業をやめる手段は、破産廃止、清算結了、特別清算といったものがあります。
債務超過であっても、個人借入金等を免除してもらえれば債務超過でなくなる ということが中小同族会社ではあります。この場合は特別清算はせずに済みます。
このような状況では、どの段階で債務免除を受けることにより労働者は課税を免れることができるでしょうか。 解散前でしょうか、それとも解散後でしょうか?
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期限切れ欠損金の損金算入
債務超過にある会社が清算する場合に残余財産がないと見込まれるときは、いわゆる期限切れ欠損金の損金算入が認められことになり、多額の債務免除益が計上されていても 債務免除益から期限切れ欠損金を控除することで所得金額を減額することができます。
解散の段階では、配当する残余債務があるかないかは、見込みであり、実体のない観念にすぎません。
残余財産がないという経済上の事実関係の確定は清算中の年度(の終了の段階)で行いますので、解散年度で多額の債務免除を受けると「期限切れ欠損金の損金算入」の適用を受けることができず、課税所得が生じることがあります。
清算中の法人で残余財産がないと立証できる場合には、青色欠損金額等の控除後の所得の金額を限度として、いわゆる「期限切れ欠損金」の損金算入が認められています。
これにより、得したのは誰でしょうか。
労働者ではありません。
労働者は経済上払わなくてもよい金を払わずに済んだだけです。
しかし、未払いの労働の対価は債務免除を呑んでしまったことで返ってきません。
実際に得したのは、金銭貸借と国債の債務者である国際金融資本です。
法令上の期限切れ欠損金
欠損金については、法人税法で「損金の額が益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう」と定義されています。
そして、益金及び損金の額については、法人税法で「別段の定めがあるものを除き、公正な会計基準にしたがって計算されるもの」と定められています。
青色欠損金の繰越期限は、Maxで10年です。
期限切れ欠損金は、青色欠損金の内、控除期限を経過した欠損金から成るものと解されます。
執行上の期限切れ欠損金
通達で下記のように規定した後に法律によってデフォルメされています。
通達において、期限切れ欠損金は、①「期首現在利益積立金の合計額として記載されるべき金額で、当該金額が負である場合の当該金額」- ②「青色欠損金等の額のうち損金の額に算入される金額」と規定しています。いわゆる、①は法人税の申告書別表5(1)「31」①欄の金額、②は法人税申告書別表7(1)「2の計」欄の金額とされています。
この通達の規定では、期限切れ欠損金には、社外流出・損金不算入である「交際費」や「寄附金」をも含んでいます。
損金に、別段の定めにより社外流出・損金不算入となる「交際費」や「寄附金」を含め、課税を免れさせ、納税者は労働力を再生産させられてしまいます。
期限切れ欠損金の損金算入制度は、債務超過後にどのような法律上の手続きに進むのかによって異なってきます。
債務超過の処分に関する法的手段と期限切れ欠損金
会社更生等の場合
期限切れ欠損金の損金算入は、債務免除益、私財提供益、資産の純評価益のみに適用とされ、青色欠損金等に優先して適用されます。
民事再生等の場合
民事再生等の場合においても、上記(1)と同様な取扱いですが、資産の評価損益の益金・損金算入の規定の適用を受けない場合には、まず青色欠損金等が優先して適用することになっています。
期限切れ欠損金も含めた欠損金の損金算入より、債務免除益等に対する課税を生じさせずに、企業を再生させ、労働力の再生産をさせられます。
法第59条第2項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実をいい、同項第1号に規定する政令で定める債権は、それぞれ当該各号に定める債権をいいます。(法令117)
一 再生手続開始の決定があつたこと
民事再生法第84条(再生債権となる請求権) に規定する再生債権(同法に規定する共益債権及び同法第122条第1項(一般優先債権)に規定する一般優先債権で、その再生手続開始前の原因に基づいて生じたものを含みます。)
二 内国法人について特別清算開始の命令があつたこと
その特別清算開始前の原因に基づいて生じた債権
三 内国法人について破産手続開始の決定があつたこと
破産法第2条第5項(定義)に規定する破産債権 (同条第7項に規定する財団債権でその破産手続開始前の原因に基づいて生じたものを含みます。)
四 第24条の2第1項(再生計画認可の決定に準ずる事実等) に規定する事実
当該事実の発生前の原因に基づいて生じた債権
五 前各号に掲げる事実に準ずる事実(更生手続開始の決定があつたことを除きます。)
当該事実の発生前の原因に基づいて生じた債権
再生手続開始の決定に準ずる事実等とは、どのようなケースをいうのでしょうか。
令第117条第5号《再生手続開始の決定に準ずる事実等》に規定する「前各号に掲げる事実に準ずる事実」とは、次に掲げる事実をいいます。(法基通12-3-1)
(1) 同条第1号から第4号までに掲げる事実以外において法律の定める手続による資産の整理があったこと。
(2) 主務官庁の指示に基づき再建整備のための一連の手続を織り込んだ一定の計画を作成し、これに従って行う資産の整理があったこと。
(3) (1)及び(2)以外の資産の整理で、例えば、親子会社間において親会社が子会社に対して有する債権を単に免除するというようなものでなく、債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理があったこと。
経済は、現実には、意思や観念や理論に基づいて行うことはできません。
国際金融資本を利するような契約でないと認めないよということを使用人である官庁の労働者に言わせているのです。
法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に規定する「当該各号に定める金額の合計額」を計算する場合において、同項第3号に定める金額が負(マイナス)であるときは、当該合計額は第1号及び第2号の正(プラス)の金額と第3号の負(マイナス)の金額とを通算した金額となります。(法基通12-3-4)
法第59条第1項第1号又は第2項第1号《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に規定する「当該債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」とは、次に掲げるような場合がこれに該当するとされています。(法基通12-3-6)
(1) 会社更生法又は金融機関等の更生手続等の更生手続きの特例等に関する法律(更生特例法)の規定により、法第59条第1項第1号に規定する債権を有する者が、更生計画の定めに従い、同項に規定する内国法人に対して募集株式若しくは募集新株予約権の払込金額又は出資額若しくは基金の拠出の額の払込みをしたものとみなされた場合
(2) 会社更生法又は更生特例法の規定により、法第59条第1項に規定する内国法人が、更生計画の定めに従い、同項第1号に規定する債権を有する者に対して当該債権の消滅と引換えに、株式若しくは新株予約権の発行又は出資の受入れ若しくは基金の拠出の割当てをした場合
(3) 法第59条第2項に規定する内国法人が、同項第1号に規定する債権を有する者から当該債権の現物出資を受けることにより、当該債権を有する者に対して募集株式又は募集新株予約権を発行した場合
(注)上記(3)の債権の現物出資は、一般にDES(Debt Equity Swap)と言われています。 Debt(債務)とEquity(資本)をSwap(交換)することで、債務の株式化させ、財務の再構築させる場合に生じた、混同(民法520)による債権の消滅にともなう債務消滅益についても期限切れ欠損金の損金算入が認められています。
国際金融資本は、資本関係をフィクションした企業に出資をさせ、自らは、労働者を貸付をフィクションする経済関係を維持します。
この規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこれらの規定により損金の額に算入される金額の計算に関する明細を記載した書類及び更生手続開始の決定があつたこと若しくは再生手続開始の決定があつたこと若しくは政令で定める事実が生じたことを証する書類又は残余財産がないと見込まれることを説明する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用されます。(法令59④ )
清算事業年度の場合
これは、平成22年度の税制が変えられたことにより創設された制度で、清算事業年度の課税方式が通常の所得課税方式に改められたことによるものです。
債務超過会社が清算する場合、債務免除により青色欠損金を超える債務免除益が発生、これに対して期限切れ欠損金の損金算入を認めないとすると債務免除益に対する課税が生じて、経済上清算が行えないという建前によるものです。
損金算入の対象となる期限切れ欠損金は、会社が解散した場合に残余財産がないと見込まれるときであり、青色欠損金等の控除後(かつ最終事業年度の事業税の損金算入前)の所得金額を限度とされています。
清算の場合の期限切れ欠損金の損金算入については、上記会社更生、民事再生のような使途制限が設けられていません。
この制度は、平成22年10月1日以後に解散が行われる場合について適用されます。