ゴルフ会員権の譲渡の現行税法上の取扱い

ゴルフ会員権は、特定の会社の株主にならなければ、会員となれない会員権とその他の会員権とに区分されますが、これらの会員権を売ったときの所得は、いずれも譲渡所得として給与所得を始め、他の所得と合算して総合課税の対象となります。

この場合の所得金額の計算は、その会員権の所有期間の評価に応じて次のとおりとなります。

(1) 所有期間が5年以内のもの(短期譲渡所得)

譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 )- 50万円 ( 特別控除額(注)) = 課税される金額

(2) 所有期間が5年を超えるもの( 長期譲渡所得 )

{ 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 )- 50万円( 特別控除額(注)) } X 1/2=課税される金額

(注) 譲渡所得の特別控除の額は、その年のゴルフ会員権の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額につき、50万円です。これらの譲渡益の合計額が50万円以下のときはその金額までしか控除できません。

また、(1)と(2)の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合わせて50万円が限度で、(1)の譲渡益から先に控除します。

(1) 平成26年4月1日以後に行ったゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、原則として、給与所得をはじめ、他の所得と損益通算することはできません。

(2) 平成26年3月31日までに行ったゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、給与所得など他の所得と損益通算することができます。
但し、ゴルフ場経営法人が破産した場合など損益通算できない場合があります。

(3) ゴルフ会員権の譲渡が労働力を購入して、継続して評価されない労働をさせて利潤を得ている場合には、実体に応じて事業所得又は雑所得の収入金額となります。

(所法22、33、69、所令178、措法37の10、措令25の8、所基通33-6の2、33-6の3)

ゴルフ会員権の損失は、全く損益通算をすることができないのでしょうか?

まず、下記の規定を見てみましょう。

所得税法33条

3  譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一  資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)

二  資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの

第三十八条  譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

2  譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、前項に規定する資産の取得費は、同項に規定する合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間のうち次の各号に掲げる期間の区分に応じ当該各号に掲げる金額の合計額を控除した金額とする。
一  その資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間 第四十九条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定により当該期間内の日の属する各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額

二  前号に掲げる期間以外の期間 第四十九条第一項の規定に準じて政令で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額

ゴルフ会員権の譲渡損失は、給与所得をはじめ、他の所得とは、損益通算することはできませんが、他のゴルフ会員権の譲渡益と損益通算することができます。

これを”内部通算”といいます。

更生手続きにより預託金が切り捨てられた後の金額で契約内容の変更があっただけで契約が存続する場合と新たな会員権が交付される場合があります。

営業譲渡の場合に、預託金が切り捨てられた後も契約内容の変更があっただけで同一の契約が存続している場合にも、預託金切り捨て後の評価額が新ゴルフ会員権の取得価額とみる考え方も成立します。

課税側は、預託金債権が切り捨てられた場合について下記のように述べさせています。

預託金会員制ゴルフ会員権とは、契約上の地位であり、優先的施設利用権と預託金返還請求権をその内容とする譲渡所得の基因となる資産(事実上の権利)となります。このため、ゴルフ会員権を巡る種々の方策の判定に当たってのメルクマールは、そのゴルフ会員権はゴルフ会員権としての性質を有しているか(維持しているか)、という点を基本として取り扱ってきました。
このことから、自主再建型の再建が行われたゴルフクラブのゴルフ会員権を譲渡した際の譲渡所得の金額の計算において、当該譲渡による収入金額から控除する取得費は、1会社更生法に基づく更生計画による更生手続等により、預託金債権の一部のみを切り捨てられた場合には、切り捨てられた損失の金額は認識せず、取得価額から減額(付け替え)しないものと取り扱い、また、2預託金債権の全額を切り捨てられた場合には、更生手続等により取得した優先的施設利用権のみのゴルフ会員権の時価相当額として取り扱ってきました

上記12の従来の取扱いの一部を以下のとおり変更します。
預託金会員制ゴルフ会員権が会社更生法に基づく更生計画による更生手続等(注)によって、預託金債権の全額を切り捨てられたことにより優先的施設利用権(年会費等納入義務等を含みます。以下同じです。)のみのゴルフ会員権となったときであっても、当該更生手続等により優先的施設利用権が、次に掲げる状況その他の事情を総合勘案し、更生手続等の前後で変更なく存続し同一性を有していると認められる場合には、その後に当該優先的施設利用権のみのゴルフ会員権を譲渡した際の譲渡所得の金額の計算において、当該譲渡による収入金額から控除する取得費については、更生手続等前の預託金会員制ゴルフ会員権を取得したときの優先的施設利用権部分に相当する取得価額とします。

1 当該更生計画等の内容から、優先的施設利用権が会員の選択等にかかわらず、当該更生手続等の前後で変更がなく存続することが明示的に定められていること。

2 当該更生手続等により優先的施設利用権のみのゴルフ会員権となるときに、新たに入会金の支払いがなく、かつ、年会費等納入義務等を約束する新たな入会手続が執られていないこと。
(注) 会社更生法に基づく更生計画による更生手続と同等の法的効果を有する民事再生法に基づく再生計画による再生手続等を含みます。

更生手続きによって、預託金債権が全額切り捨てられて優先的利用権のみが法律上存在するときでも、優先的施設利用権を選択するか否かに関係なく、上で述べられていることを総合してみると、更生手続の前後で優先的施設利用権が変更することなく存続し、同一であると評価されるときは、退会届けの有無、プレー権の有無に関係なく、経済上は、貸倒損失ですが、所得税法上、他のゴルフ会員権譲渡と損益通算することができることとなりました。

例えば、ゴルフ場経営会社について、会社更生法による更生手続が行われ、預託金債権が全額切り捨てられましたが、優先的施設利用権については、更生手続の前後において変更なく存続し同一であると評価された場合に、取得費の金額はどのようになるでしょうか?

更生手続前のゴルフ会員権は、次のとおり新規募集に応じて取得したものとします。

事例1

入会金  560万円
預託金 2,300万円

預託金債権が全額切り捨てられていることから、取得価額から切り捨てられた預託金債権部分を控除して、更生手続により優先的施設利用権のみとなったゴルフ会員権の取得費を算出します。

預託金+入会金-預託金の切捨て金額

23,000,000+560,000-23,00000=560,000・・・取得費

ゴルフ会員権の取得価額は、預託金とプレミア分から構成されます。

ゴルフ会員権(株券、預託金)やゴルフ場の土地は、労働をしませんので利潤を産み出しません。

プレミア分は、預託金や出資金をゴルフ場で働いている使用人に貸したことにして、ゴルフ会員権を引き渡すまで労働をさせて、労働によって産み出した利潤を、労働の評価がなかったものとして産み出します。

時間というのは、継続して労働したプロセスを架空の商品と交換して、架空の商品を評価したものです。

現金商品や他のゴルフ会員権という商品と交換することによって産み出されたものではありません。商品の対価との差額は、利潤の分配です。

自らを含む労働力にゴルフ会員権を貸し出して労働させていなければ、”経済上は”、取得価額は原価になりません。

事例2

更生手続前のゴルフ会員権は、次のとおりゴルフ会員権取引業者から取得したものです。

ゴルフ会員権の購入価額    270万円
購入時に支払った名義書換料 105万円

なお、このゴルフ会員権の新規募集時の入会金及び預託金は、次のとおりとなっています。

入会金   560万円
預託金  2,300万円

事例2のケースでは、まず、取得価額に含まれる優先的施設利用権に相当する部分の価額を会員募集時の預託金と入会金から按分して算出します。

なお、この算出した価額(優先的施設利用権に相当する部分の価額)が入会金の額を超える場合には、ゴルフ会員権の購入価額から預託金の額を控除した額となります。

ゴルフ会員権の購入価額×[入会金/預託金+入会金]=優先的に施設を利用する権利の評価額

2,700,000×5,600,000/23,000,000+5,600,000=528,671円

次に、算出された取得価額に含まれる優先的施設利用権に相当する部分の価額と購入の際に支払った名義書換料から、更生手続により優先的施設利用権のみとなったゴルフ会員権の取得費を算出します。

優先的に施設を利用する権利の評価額+名義書換料=取得費

528,671+1,050,000=1,578,671

なお、優先的施設利用権が更生手続の前後で変更なく同一であると認められない場合には、更生手続により取得したゴルフ会員権の取得の段階での市場価額相当額になります。

上の事例2のケースについて、更生手続きにより、営業譲渡先から新たなゴルフ会員権が付与されて、その評価が2万円であるとします。

これとは別のもう一つゴルフ会員権の譲渡があります。

2つのゴルフ会員権の譲渡を内部通算すると、606,171円の損失が出ますが、ゴルフ会員権の譲渡損失は他の所得と損益通算できませんので、jゴルフ会員権の譲渡損失は0として取り扱われます。

所得税確定申告書B第1表の㋙には、0と記載します。

預託金形式のゴルフ会員権は、「優先的にプレーできる権利」と「預託金返還請求権」からなっており、破産廃止によってプレー権がなくなった会員権は、「金銭債権」となります。

金銭債権の譲渡は、雑所得にあたり、ゴルフ会員権の売却による損失ではありませんので、譲渡所得上の損失として損益通算することはできません。

株券が交付されるゴルフ会員権も株券と預託金制が併用されている場合の譲渡損失の内部通算の取扱いは、預託金制のゴルフ会員権の譲渡損失の内部通算と同じです。

租税特別措置法37条の10

2  この条において「株式等」とは、次に掲げるもの(外国法人に係るものを含むものとし、ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に類するものとして政令で定める株式又は出資者の持分を除く。)をいう。
一  株式(株主又は投資主(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項 に規定する投資主をいう。)となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権(同条第十七項 に規定する新投資口予約権を含む。以下この号において同じ。)及び新株予約権の割当てを受ける権利を含む。)

二  特別の法律により設立された法人の出資者の持分、合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、法人税法第二条第七号 に規定する協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分(出資者、社員、組合員又は会員となる権利及び出資の割当てを受ける権利を含むものとし、次号に掲げるものを除く。)

三  協同組織金融機関の優先出資に関する法律 (平成五年法律第四十四号)に規定する優先出資(優先出資者(同法第十三条第一項 の優先出資者をいう。)となる権利及び優先出資の割当てを受ける権利を含む。)及び資産の流動化に関する法律第二条第五項 に規定する優先出資(優先出資社員(同法第二十六条 に規定する優先出資社員をいう。)となる権利及び同法第五条第一項第二号 ニ(2)に規定する引受権を含む。)

四  投資信託の受益権

五  特定受益証券発行信託の受益権

六  社債的受益権

七  公社債(預金保険法 (昭和四十六年法律第三十四号)第二条第二項第五号 に規定する長期信用銀行債等その他政令で定めるものを除く。以下この款において同じ。)

所得税基本通達

33-6の3 措置法令第25条の8第2項《一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》の規定に規定する株式又は出資者の持分を譲渡(営利を目的として継続的に行われるものを除く。)したことによる所得は、譲渡所得に該当する。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8追加、平13課個2-30、課資3-3、課法8-9、平15課個2-23、課資3-7、課法8-11、課審4-37、平17課資3-7、課個2-25、課審6-13、平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13改正)

第二十五条の八  法第三十七条の十第一項 に規定する一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額は、その年中の同項 に規定する一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額の合計額とする。この場合において、これらの金額の計算上生じた損失の金額があるときは、当該損失の金額は、次の各号に掲げる損失の金額の区分に応じ当該各号に定めるところにより控除する。
一  当該一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額の計算上生じた損失の金額 当該損失の金額は、当該一般株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額及び雑所得の金額から控除する。

二  当該一般株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額 当該損失の金額は、当該一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額及び雑所得の金額から控除する。

三  当該一般株式等の譲渡に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額 当該損失の金額は、当該一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額及び譲渡所得の金額から控除する。

2  法第三十七条の十第二項 に規定する政令で定める株式又は出資者の持分は、ゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式又は出資を所有することがそのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を有する者となるための要件とされている場合における当該株式又は出資者の持分とする。

33-6の2 ゴルフクラブ(ゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式又は出資を有することが会員となる資格の要件とされているゴルフクラブを除く。)の会員である個人が、その会員である地位(いわゆる会員権)を譲渡(営利を目的として継続的に行われるものを除く。)したことによる所得は、譲渡所得に該当する。(昭56直資3-2、直所3-3追加、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)