相続や遺贈によって取得した土地のうち、一定要件の下、相続税の課税価格に算入する価格を、居住用の土地については330㎡まで80%減額し、

事業の用(貸付事業を除く)に供していた土地については400㎡まで80%減額し、貸付事業の用に供していた土地については200㎡まで50%減額する制度が、

税法には創設されています。

親の持ち家にタダで住んでいる。小規模宅地の特例は適用できるの?

父親が既に亡くなっていて、母がマンションを丸ごと相続により取得したとします。

1Fは、特殊関係のない他人と、被相続人の同族法人のテナントに賃貸しています。

母と同じ2Fに子供が無償で同居していたとします。

相続の開始の段階で3年を超えて同居していました。

母親が亡くなって相続人となった子供の住んでいた土地については、小規模宅地の特例は適用されるでしょうか。

また、4Fには、相続の段階で3年を超えて子供の子供、母親からみれば孫が無償で居住しています。

3Fには、他人に住宅として貸しています。

宅地の総面積は、400㎡とします。

孫の住んでいるスペースも小規模宅地の特例は、適用されるでしょうか。

タダで住んでいても小規模宅地の特例は適用できる。但し、いくつか要件があります。

上のケースの場合、子供の住んでいるスペースにも、孫の住んでいるスペースも小規模宅地の特例は適用できます。

住む家あるじゃねえかよ、と思われるかもしれませんが、小規模宅地の特例はできます。

親族が住んでいた部屋の床の総面積とその他のスペースの床面積で土地の面積を按分すれば、面積要件もクリアしています。

但し、他にも、いくつか要件があります。

法令は、次のように述べています。

租税特別措置法

第六十九条の四  個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(第三項において「被相続人等」という。)の事業(事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む。同項において同じ。)の用又は居住の用(居住の用に供することができない事由として政令で定める事由により相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかつた場合(政令で定める用途に供されている場合を除く。)における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用を含む。同項第二号において同じ。)に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。同項及び次条第五項において同じ。)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に限る。以下この条において「特例対象宅地等」という。)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの(以下この項及び次項において「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下この項において「小規模宅地等」という。)に限り、相続税法第十一条の二 に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。

一  特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 百分の二十

二  貸付事業用宅地等である小規模宅地等 百分の五十

二  特定居住用宅地等 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(当該宅地等が二以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。)で、当該被相続人の配偶者又は次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族(当該被相続人の配偶者を除く。以下この号において同じ。)が相続又は遺贈により取得したもの(政令で定める部分に限る。)をいう。
イ 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(当該被相続人、当該被相続人の配偶者又は当該親族の居住の用に供されていた部分として政令で定める部分に限る。)に居住していた者であつて、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。

ロ 当該親族(当該被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に限る。)が相続開始前三年以内に相続税法 の施行地内にあるその者又はその者の配偶者の所有する家屋(当該相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがない者(財務省令で定める者を除く。)であり、かつ、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有していること(当該被相続人の配偶者又は相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族で政令で定める者がいない場合に限る。)。

ハ 当該親族が当該被相続人と生計を一にしていた者であつて、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の居住の用に供していること。

租税特別措置法施行令40条の2

4  法第六十九条の四第一項に規定する被相続人等の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうち政令で定めるものは、相続の開始の直前において、当該被相続人等の同項に規定する事業の用又は居住の用(同項に規定する居住の用をいう。以下この条において同じ。)に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。以下この条において同じ。)のうち所得税法第二条第一項第十六号に規定する棚卸資産(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)に該当しない宅地等とし、これらの宅地等のうちに当該被相続人等の法第六十九条の四第一項に規定する事業の用及び居住の用以外の用に供されていた部分があるときは、当該被相続人等の同項に規定する事業の用又は居住の用に供されていた部分(当該居住の用に供されていた部分が被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(建物の区分所有等に関する法律第一条の規定に該当する建物を除く。)に係るものである場合には、当該一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む。)に限るものとする。

かっこ書きの「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物を除く」の部分を読むと小規模宅地の特例は適用できないように見えますが、

その後の「当該一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち、当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む」までを読むと、

上のケースの場合、子供だけでなく、孫の住んでいるスペースにも小規模宅地の特例が受けられることがわかります。

相続前3年以内に”自分の”持ち家に住んでいないこと、

これが最も重要なポイントです。

賃貸物件に住んでいることは要件ではありません。

親の持ち家にタダで住んでいても小規模宅地の特例を適用することができます。

親のマンションに居住している子供や孫が相続前に、それぞれ分譲で取得していて譲渡することができるものは、その部分については、小規模宅地の特例は適用することができません。

親が1棟丸ごと取得、所有し続けて登記されていなければ、小規模宅地の特例が適用できません。

小規模宅地に関する他の規定を併用するか、居住部分だけ小規模宅地の特例を適用して貸付部分には、3割評価減の規定を適用するかは、個々のケースによって異なります。

申請の際は、下記の書類を記載して提出します。

① 第11・11の2表の付表1
② 第11・11の2表の付表2の1
③ 第11・11の2表の付表2の2
④ 第11・11の2表の付表2の3

いずれも国税庁のHPよりダウンロードすることができます。

添付書類

戸籍の附表(住所の移り変わりを示すもの)
相続開始前3年の間に取得相続人が持ち家に住んだことがないことを証明します。

小規模宅地の特例の適用は、当初申告が要件です。

更正の請求はできません。

修正申告はできるわけですから、申告期限間際まで考えても適用ができるかわからない、適否のどちらともとれる場合、微妙な場合には、まずは、小規模宅地の申請の手続きを採ることです。申請を控えてしまって確定申告書提出後に、繁忙でないときに手間暇かけて調べた結果、適用できることがわかったときには、取り返しがつきません。