所得税の確定申告に先立って、所得税の確定申告をする者に支払をした事業者が行う事務手続きの一つとして法定調書の提出というものがあります。

それでは、法定調書を提出する義務のある者と、提出が義務付けられている書類にはどのようなものがあるでしょうか。

法定調書の提出義務者

法人であってもが個人であっても、給与や報酬を支払っていれば提出しなければなりません(例外あり)

不動産の支払調書は法人のみです。

給与支払事務所等の開設届出書がない場合、報酬の源泉徴収と法定調書合計表は提出不要となります。

記載しなければならない事項がない部分には、該当なし と記載します。

法定調書の全ての上に法定調書合計表を上に乗せ、綴じ込みます。

これらを記載した法定調書合計表の提出期限は1月31日です。所轄の税務署に提出します。

1月31日が土日祝と重なる場合には次の平日となります。

これら法定調書を提出期限までに税務署長に提出しない場合や、偽りの記載をして提出した場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が課せられる場合があります。(所得税法242条5)

しかし、作成した法人よりも支払を受けた側の収入を確認しているので、実際には罰則が執行されていません。

法定調書を提出する範囲

法定調書は、全部で59種類あります。その内、1月31日までに提出しなければならないものは、下記のとおりです。

給与所得の源泉徴収票合計表
退職所得の源泉徴収票合計表
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表
不動産の使用料等の支払調書
不動産等の譲受けの対価の支払調書
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

給与所得

「人員」の欄
年の途中で退職された方も含めて、1年間で給与等の支払いを受けた方の人員を記入します。
大部分の場合には作成した源泉徴収簿の枚数と一致することになります。
丙欄適用の日雇労務者の人員は含みません。

「左のうち源泉徴収税額のない者」の欄
「源泉徴収票」の「源泉徴収税額」欄の税額が0円の方の数を記入します。

「支払金額」「源泉徴収税額」の欄
会社が給与等の支払いをした全ての金額及び源泉徴収税額の総額を記入します。
年の中途で就職した方が、就職前に他の支払者から支払を受けた給与等の金額及び徴収された源泉徴収税額を含めないで記入します。

区分「Aのうち、丙欄適用の日雇労務者の賃金」

上記の内、丙欄の日雇労務者へ支払った賃金の総額および源泉徴収税額を記入します。

区分「B 源泉徴収票を提出するもの」

区分Aの内、源泉徴収票を提出する者の人員、支払金額及び源泉徴収税額を記入します。
源泉徴収票を提出するものは、「年末調整をしたもの」と「年末調整をしなかったもの」によって提出要件が異なります。
下記の条件によって判定します。

源泉徴収票を提出するもの

年末調整をしたもの

法人の役員に対する、1年の給与等の支払額が150万円を超えるもの。
弁護士・司法書士・税理士等について、1年の給与等の支払額が250万円を超えるもの。
所得税法204条1項第2号に規定する者

所得税法204条

二  弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

上記以外の者については、1年の給与等の支払額が500万円を超えるもの。
年末調整をしなかったもの

「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、1年の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかった者の全て。
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、その年中に退職した者や、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた者については、その1年の給与等の支払金額が250万円を超えるもの。
ただし、法人の役員については、50万円を超えるもの。
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった者で、給与所得の源泉徴収税額表の月額表又は日額表の乙欄または丙欄の適用者については、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの。

退職所得の源泉徴収票合計表について

区分「A 退職手当等の総額」

退職所得の源泉徴収票合計表の欄には、退職手当や一時恩給等の支払いを受けた全ての受給者の人員、支払金額及び源泉徴収税額の総額を記入します。

区分B「Aのうち、源泉徴収票を提出するもの」

源泉徴収票を提出するものは、基本的には法人の役員が退職金等を受給した場合ですので、一般従業員の分は提出する必要はありません。
また、死亡退職により退職手当等を支払った場合も、相続税で規定されている支払調書で提出しますので、提出する必要はありません。

報酬

ここには、所得税法第204条1項に規定されているもので1~8号まで区分されている報酬と、同174条10号の報酬が該当します。
その該当する区分の欄にそれぞれ、人員、支払金額及び源泉徴収税額を記入します。

こちらも、支払調書を提出しなければならない規定があり、提出するものは以下の5つです。

支払調書を提出するもの

作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等、弁護士や税理士等に対する報酬について、同一人に対する、1年の支払いの合計額が5万円を超えるもの

診療報酬については、同一人に対する、1年の支払金額の合計額が50万円を超えるもの

プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、同一人に対する1年の支払金額の合計額が5万円を超えるもの

外交員、集金人などの報酬、バー、キャバレーなどのホステス等に支払う報酬、広告宣伝の為の賞金については、同一人に対する1年の支払

金額の合計額が50万円を超えるもの。

馬主に支払う競馬の賞金については、その年中に1回の支払賞金額が75万円を超える支払いを受けた者に係るその年中のすべての支払金額

こちらには、区分A使用料等の総額の欄に、1年で支払いが確定した不動産の使用料等の人員と支払金額の総額を記入します。

不動産の使用料に含まれるもの

土地や建物の賃借料
礼金などの権利金
更新料や承諾料
名義書換え料
船舶、航空機の借受の対価
また、催物などで一時的に会場を賃借したり、広告で塀や壁面のように建物の一部を使用する場合の賃借料についても不動産の使用料等に該当します。
これらの利用料等があれば、記入するのですが、こちらも支払調書を提出する範囲が定められております。

敷金や保証金等、返還されるものはこの額に含みませんが、
返還されない部分があるときは、その額も含むこととなります。

共有持分の不動産で持分がわからない場合は、
支払った総額を記載した共有者連名の支払調書を共有者の数だけ作成し、提出してください。

申告書には、地代家賃のほか更新料などすべての金額を合計して、支払金額を記入してください。

支払調書を提出するもの

提出範囲は、不動産の使用料等を支払った法人と不動産業者である個人の方で、
「同一人に対するその1年の支払金額の合計が15万円を超えるもの」となっております。

ただし、不動産業者である個人のうち、主として建物の賃貸借の代理や仲介という事業を営んでいる方は提出義務はありません。

※個人ではなく法人に対して家賃や賃借料のみを払っている場合は、15万円を超えていても支払調書を提出する必要がございません。権利金、更新料、名義書換え料の総額が15万円を超えていれば支払先が法人でも支払調書を提出します。

不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表について

区分Aの「譲受けの対価の総額」の欄には、その年中に支払った譲り受けた不動産、船舶、航空機の対価、そして資産の移転に伴なって生じた各種の損失の補償金の合計額を記入します。

不動産等の譲受けには、売買の他、交換や競売、収用、現物出資等による取得も含まれます。

また、資産の移転に伴って生じる補償金には以下の種類があります。

建物等移転費用補償金

動産移転費用補償金

立木移転費用補償金

仮住居費用補償金

土地建物等使用補償金

収益補償金

経費補償金

残地等工事費補償金

その他の補償金

支払調書を提出するもの

提出範囲は、不動産等の譲受けの対価を支払った法人と不動産業者である個人の方で、同一人に対する1年の支払金額の合計が100万円を超えるものです。

ただし、不動産業者である個人のうち、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は提出義務はありません。

その年中に支払の確定した不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の合計額を記入して下さい。

支払調書を提出するもの

こちらも支払調書を提出する範囲が定められておりまして、提出範囲は、同一人に対する1年の支払金額の合計が15万円を超えるものです。

 

(注)法定調書一覧

1 給与所得の源泉徴収票
2 退職所得の源泉徴収票
3 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
4 不動産の使用料等の支払調書
5 不動産の譲受けの対価の支払調書
6 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
7 利子等の支払調書
8 国外公社債等の利子等の支払調書
9 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書
10 国外投資信託等又は国外株式の配当等の支払調書
11 投資信託又は特定受益証券発行信託収益の分配の支払調書
12 オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書
13 配当等とみなす金額に関する支払調書
14 定期積金の給付補てん金等の支払調書
15 匿名組合契約等の利益の分配の支払調書
16 生命保険契約等の一時金の支払調書
17 生命保険契約等の年金の支払調書
18 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書
19 損害保険契約等の年金の支払調書
20 保険等代理報酬の支払調書
21 非居住者等に支払われる組合契約に基づく利益の支払調書
22 非居住者等に支払われる人的役務提供事業の対価の支払調書
23 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書
24 非居住者等に支払われる借入金の利子の支払調書
25 非居住者等に支払われる工業所有権の使用料等の支払調書
26 非居住者等に支払われる機械等の使用料の支払調書
27 非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書
28 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書
29 株式等の譲渡の対価等の支払調書
30 交付金銭等の支払調書
31 信託受益権の譲渡の対価の支払調書
32 公的年金等の源泉徴収票
33 信託の計算書
34 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書
35 名義人受領の利子所得の調書
36 名義人受領の配当所得の調書
37 名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書
38 譲渡性預金の譲渡等に関する調書
39 新株予約権の行使に関する調書
40 株式無償割当てに関する調書
41 先物取引に関する支払調書
42 金地金等の譲渡の対価の支払調書
43 外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書
44 生命保険金・共済金受取人別支払調書
45 損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書
46 退職手当金等受給者別支払調書
47 信託に関する受益者別(委託者別)調書
48 上場証券投資信託等の償還金等の支払調書
49 特定新株予約権等の付与に関する調書
50 特定株式等の異動状況に関する調書
51 特定口座年間取引報告書
52 非課税口座年間取引報告書
53 未成年者口座年間取引報告書
54 教育資金管理契約の終了に関する調書
55 結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書
56 国外送金等調書
57 国外財産調書
58 国外証券移管等調書
59 財産債務調書
(注) 国外送金等調書法とは、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」のことをいいます。

(所法225~228の3の2、相法59、措法9の4の2、29の2、37の11の3、70の2の2、70の2の3、国外送金等調書法4、4の3、5、6の2、所規別表第5(1)~(15)、(17)~(32)、第6(1)~(3)、第7(1)(2)、第8(1)~(4)、第9(1)~(3)、相規第5号~8号書式、措規別表第4、第6(1)(2)、第7(1)(3)、第11(6)、第12(6)、国外送金等調書法規別表第2、第4)