決算調整事項は、法人が確定した決算において所定の経理をすればそれを認めるという事項であり、法人が確定した決算をする過程で、その経理をしなかった場合には、法人税法上、所得金額の計算に含めることができません。
金融資本は、無制限に紙幣をフィクションすることができるから、決算書上の利益を出さなくても貸すということを知らない税理士先生は、
消費税を含め未払いの税金、費用を全て計上した後に、これらの費用を損益に加え戻した上で、棚卸などをいじって粉飾した決算書を金融機関の職員を通じて提出するわけです。
特に、ダブルマスターの税理士先生は、法人税法を勉強したことがありませんので、申告調整において減算できない費用があるということを知りませんので、利益が出るまで、あらゆる費用を加え戻していきます。
後日、税務調査があって所得が課税されると、仕入れ、外注費の計上もれなどは、その計上漏れを知らせて所得金額から減算させることができますが、申告調整による減算が認められていない費用は、その計上漏れを知らせて所得から減算させることができません。
尤も、彼等には、仕入れの計上漏れなどについても、それを知らせて課税側に減算させるということに知恵を回すことができませんが。
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損金経理をしなければ損金の額に算入されないもの
法人の構成員の意思は、実体のない観念です。それゆえに、法は、下記のものについて、損金経理を決算仕訳において行いなさいと言っています。
損金経理とは、法人税法第2条(定義)第二十五号において、下記のように規定されています。
損金経理 法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。
法人税法74条1項は、「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。」とあるので、確定申告には、期限後申告も含まれます。
労働力をして、事業年度中の取引を記帳し、決算仕訳をして決算損益の評価を確定していくのですから、確定した決算とは、結果として提出した確定申告書の完成に至るまでの一連の行為をいいます。
法人税法2条36号は、次のとおり、「修正申告書」について規定しています。
「修正申告書 国税通則法第19条第3項(修正申告書)に規定する修正申告書をいう。」
修正申告は、申告所得の金額が変わるのであって、決算そのものは、当初申告の段階で確定しています。
この規定からすると、「確定申告書」は法人が最初に税務署長に提出する申告書のみを指し、「修正申告書」を含まないものと解されます。
租税特別措置法上は、当初申告には、中間申告書も含まれます。
①減価償却費(特別償却を含む。非適格合併等における「みなす損金経理」を除く。)(法人税法31条)
②繰延資産の償却費(法人税法32条)
③特定の事実が生じた場合の資産評価損(法人税法33条2項)
判決文の内、経済上の事実関係の部分については、宗教がかっていますが、
平成23年3月25日裁決は、下記のように述べています。
棚卸資産につき法人税法第33条第2項に規定する評価損の計上が認め
られるのは、災害により著しく損傷したこと、棚卸資産が著しく陳腐化した
こと及びこれらに準ずる特別の事実が生じたことにより、当該資産の価額が
その帳簿価額を下回ることとなった場合において、その法人が当該資産の
評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額した場合であるところ、
本件返品雑誌等については、評価損の計上が認められる状態にあったと
認めるに足る証拠もなく、また、請求人及びD社は、本件返品雑誌等に
ついて、その計上額と請求人の主張する期末時価との差額を損金経理により
帳簿価額を減額した事実が認められない。よって、請求人は本件返品雑誌等
について、その評価損を損金の額に算入することはできない。
請求人が主張するように書店等から返品された雑誌等については、月刊誌等
の定期刊行物で新号の出版により通常の店頭販売がされなくなったものや、
販売されないまま保管され、たなざらしによる破損や変色したものが発生
しても不自然ではないから、本件返品雑誌等についても、法人税法施行令
第68条第1項第1号ロにいう著しい陳腐化や物損等により価値が低下し、
法人税法第33条第2項に規定する評価損の計上が認められる状態のものが
含まれていた可能性があると思料されるところではあるが、請求人及びD社
は、上記ハのとおり、評価損を損金の額に算入する要件の一つである損金経理
による帳簿価額の減額を行っておらず、当該要件を満たさないのであるから、
請求人の主張には理由がない。
④使用人兼務役員の使用人分賞与(法令72の3)
⑤未払使用人賞与(法令72の3、法基通9-2-43~44)
⑥土地・建物の交換による圧縮記帳(法法50、法令92、法基通10-6-3、10-6-7、10-6-9)
⑦換地処分等の圧縮記帳(租税特別措置法65条1項)
積立金方式について、法は、国庫補助金や保険差益などの圧縮限度額を損金経理(費用として計上)するのではなく、これを決算時において積立金として積み立てるものであり、このような経理処理をした場合であっても税務上は損金に算入することが認められているとしています(法人税法第42条第1項、47条、租税特別措置法65条の七第1項参照)。
課税側も国税庁をして下記のように回答をしています。
照会要旨
1 圧縮積立金を有する土地が換地処分になったため、再び圧縮記帳をする場合、圧縮積立金をそのまま存置して差し支えありませんか。
2 換地処分の圧縮記帳についても、交換の圧縮記帳の場合の法人税基本通達10-6-10((交換により取得した資産の圧縮記帳の経理の特例))の取扱いと同様に、損金経理により取得資産の帳簿価額を減額しない経理が認められますか。
回答要旨
1、2とも照会意見のとおりで差し支えありません。
関係法令通達
租税特別措置法第65条第1項
法人税基本通達10-6-10
平成23年度税制改正において税額控除などにおける当初申告要件が廃止されたものもありますが、全てが廃止されたわけではなく、法人税法42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)、特定資産の買換えの圧縮記帳などには、現在も当初申告が要件とされています。
法人税法42条3項の例を挙げると、次のとおりになります。
「前2項の規定は、確定申告書にこれらの規定に規定する減額し又は経理した金額に相当する金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。」
圧縮記帳の規定により帳簿価額が1円未満となる場合にも、帳簿価額として1円以上の金額を付さなければなりません(令93)。
⑧貸倒引当金、返品調整引当金
⑨特定の場合の貸倒損失
実務レベルでは、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れは、損金経理が要件とされています。
通達レベルでは、事実上の貸倒れは、損金経理が要件であり、申告調整は認められていないかのようにみえるます。しかし、「当該債権の回収ができない事業年度中に貸倒れとして損金経理をしておかなければ、その後になって、当該債権についてこれを貸倒損失であるとする主張がし得なくなると解すべき実定法上の根拠はない」(東京地判平成元年7月24日)という裁判例が存在します。
⑩少額減価償却資産及び少額繰延資産の即時償却
⑪一括償却資産の償却額
申告調整により損金の額に算入することが認められるもの
①国庫補助金等・保険差益等の圧縮特別勘定の損金算入(法人税法43条、法人税法48条)
②法人が措置法第52条の3(準備金方式による特別償却)(個人事業の場合は直接減額する方法でしか対応できません。)
③法律上の貸倒れ
破産廃止決定や再生計画認可決定による切り捨ては「認めてやる」というよりは、強制ですが。
④指定寄附金
現実には、租税すなわち国債の負担と同じだからです。
損金経理要件が法律に規定されていないが、申告調整において減算することができないもの
①使用人賞与
②一般寄附金
確定した決算において経理しないと認められないもの
①長期割賦販売等の延払基準(法人税法63条)
②長期大規模工事以外の工事進行基準(法人税法64条2項)
課税側は、下記の場合、損金として認めてあげないよと確認しています。
2-4-19 法人が、当該事業年度終了の時において見込まれる工事損失の額(その時の現況により見積もられる工事の原価の額が、その請負の対価の額を超える場合における当該超える部分の金額をいう。)のうち当該工事に関して既に計上した損益の額を控除した残額(以下「工事損失引当金相当額」という。)を、当該事業年度に係る工事原価の額として計上している場合であっても、そのことをもって、法第64条第2項《長期大規模工事以外の工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》に定める「工事進行基準の方法により経理したとき」に該当しないとは取り扱わない。
この場合において、当該工事損失引当金相当額は、同項の規定により当該事業年度において損金の額に算入されることとなる工事の請負に係る費用の額には含まれないことに留意する。
連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-4-19)を定めている。