平成27年10月26日地方裁判所判決

事実関係

被告会社の代表者は、平成26年12月5日に株主総会を開催し、創業者である被相続人(原告株主の父)に支給することとした退職慰労金2,500万円をその相続人であるA(原告株主の兄弟)及び創業者の妻に1,250万円ずつ支給する旨の決議を行った。

本件決議に当たり、原告株主(41.4%出資)は、これに反対したが、退職慰労金の受贈者であるA(24.6%出資)及び創業者の妻(34%出資)が賛成したことにより、本件決議は成立した。

原告株主は、被告会社に、特別利害関係人(死亡退職慰労金の受贈者)である原告株主の兄弟が議決権を行使したことにより、不当に高額ば退職慰労金を支給する旨の総会決議が成立したと主張して、会社法831条1項3号に基づき、株主総会決議の取消の訴訟を提起した。

原告株主は、訴訟の中で、本件決議によると、被告会社の流動資産(約6,000万円)の内、42%が失われるとし、被告会社の財務状況に多大な影響を与えるとし、退職慰労金の額は、過大であって、本件決議は著しく不当であると主張した。

裁判所は、被告会社は、退職慰労金の支給額を税理士に相談し、法人税法上、相当であると認められる金額の範囲を7,540万円ないし1億260万6,526円(類似法人1年当たりの退職給与×勤続年数)と算定したと認定した。

また、裁判所は、被告会社は、退職慰労金の支給の原資について、被告会社の代表取締役である創業者の妻に対して社債を発行し、同額の払込みを受けていたと認定した。

裁判所は、死亡退職金は、功績倍率方式によって算定した金額の3分の1にすぎない支給額であり、財務状況に関しても、配偶者に社債を発行し、資金源を確保していることから、退職慰労金の金額は過大なものであるとは言えないとした。

解説

会社の資本の部の資本は、金融資本によって労働者にフィクションされた投融資を運ぶ役割をしている。実体関係上、法人に金融をしている資本は、現実の労働の全てについて、現金商品を支給し評価する義務がある。

労働が疎外された部分は、既に労働は提供しているわけであるから、実体関係上、法人に金融をしている資本は、経済関係上、退職の段階で利息を付けて支払わなければならない。

死亡した被相続人の労働の対価が、相続人の労働の評価とは別個のものから、法人資本が訴訟を提起したということである。

原告株主の労働の評価も、また、創業者の労働の対価も別物である。

第831条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から3箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第346条第1項(第479条第4項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。

三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。